車椅子の少女と番剣 作:太陽が嫌い
目を開けると、知ってる天井だった。メヌエットが、車椅子ではなくベットに寄り掛かる形で寝ていた。その上から毛布がかかっている。ここは、ベイカー街の221番地の我が家だな。てっきり病院にいるはずだと思っていたが・・・・・・起き上がろうとしたら、激痛が走る・・・それから、左腕がうまく動かなかった。ぐおおおおおっと悶えているとアリアが入ってきた。
「起きたのね、ルツ」
「おはようアリア、今は、何時だ?」
「もう、五時ね。あれから、1日たってるわ」
「メヌエットは、何でここで寝てるの?」
「あんたのことを、夜通し看病してたの。慣れてないくせにね。おかげで、今は、眠ってるけどね」
そうか、慣れてないくせに看病してくれていたのか・・・・・・。
「メヌエットったら部屋で寝なさいって言ってもここで寝るって聞かなかったのよ。久々に顔を出して思ったけど、ルツあんたメヌエットのこと甘やかしすぎてるんじゃない」
「・・・そんなことないぞ」
この位普通だ・・・異論は聞かない
「・・・ジャックは?」
「露骨に、話題をそらしたわね・・・まあいいわ・・・あんたが、倒れてからしばらくして同じく倒れて今は尋問を受けているんじゃないかしら」
どうやら、ジャックも限界だったらしい。まさに最後の一撃だったわけだな。そして、アリアは俺の左腕に気づいてないみたいだ。
「俺が、病院にいないのは、重症者じゃないからか」
「ええ、ジャックの霧で起こった騒ぎでかなり重軽傷者が出て病院はパンクしてるわ」
「やっぱりか・・・」
「・・・まあ、いいわ。私は、武偵高に報告書出してくるから、あんたは寝てなさいよ。絶対安静なんだから」
報告書をやっておいてくれているらしい。流石は、アリア。絶対に本人には言わないけど気が利くな。
「ああわかってるよ・・・今日は、ここに泊まるの?」
「そのつもりよ、何で?」
「いや、メヌエットが喜びそうだなって」
「そうね、あんたも目を覚ましたし今日は賑やかそうね」
結構嬉しそうだった。
「おはよう、メヌ」
「目を覚ましたのですね、ルツ」
バッっと体を起こしまくし立ててくる。
「痛いところはありませんか?気分は?記憶とか無事ですか?」
メヌエットの肩をつかんで、落ち着けるように抱き寄せる。
「大丈夫だから。俺が、大丈夫なのはお得意の推理でわかるだろう」
「私の推理は、完璧に未来が予知できるわけではありませんわ。私はあなたが、やられたと聞いて私は気が気ではなかったのですよ。このまま、ルツが死んでしまうのではないかと。」
どんどん、メヌエットの顔が暗くなっていっているのを見て胸が痛い。
「メヌ・・・俺は君を置いて行ったりしないよ、絶対に・・・約束しただろ」
「・・・」
返事が返ってこなく、不思議に思っていると、メヌエットは緊張しながら
「しょ、証拠が、証拠がほしいですわ」
顔を真っ赤にしながら上ずった声を上げる。少し驚いてしまって、硬直した。至近距離にいるのが悪いのか、いつもよりもてんぱってしまった。そして、頭の中でぐるぐると思考が巡っている。どどどど、どう返せばいいんだ。証拠って何?キスでもすればいいのか?確かに、メヌには好意を持っているけど手を出すなんてできない・・・メヌに泣かれでもしたら死にたくなるぞ・・・でも、ここで何にもしないなんて英国紳士としては終わりなきがする・・・覚悟を決めろルツ・アークライト、いまだ、今なんだ。
「目を閉じて・・・」
「ッッッ、ん」
驚いているようだが、後には引けないご様子・・・
覚悟を決めて・・・メヌエットにキスをした。
・・・・・・・・・・・・・ただ、唇ではない。額にだが・・・
「ふぇ・・・」
メヌエットは、驚きすぎて聞いたこともないような声を出している。目を丸くしているメヌエットに再度目を合わせた・・・。自分が、メヌエットに好意を持っていることは理解している。メヌエットからの好意はうれしいが、こんな形で、精神的に不安定な形で好意を受け取りたくなかった。俺は、メヌエットの笑顔が見たい。だから、後悔するかもしれない選択をしてほしくないし、自分も今は受け入れられない。
「今は、ここに。それに・・・淑女が判断を急ぐ必要はないよ。数年後、今より成長してメヌに釣り合う男になるから。それまでは、これで我慢してもらいたいな」
「良いでしょう、苦しい言い訳ですが、納得しました。英国紳士であるならば、私のものであるならば、約束は果たしなさい」
「もちろんだよ、メヌ」
・・・・・・・・二人して、恥ずかしくなって目が合わせられない。
「いったん、空気を吸ってきます」
メヌエットが、車いすで部屋を出て行った。出ていく直前、ヘタレ・・・と聞こえたのは空耳ということにしておいた。