□王都アルテア南門前 ハインツ
「ふぅ…ひどい目にあった」
人生初のスカイダイビングを終えた俺の口から出た言葉は、その一言だった。
いくらゲームの中だとはいえ、さすがにあれは死を覚悟した。いや、あのままだったら確実に死んでいただろう。実際は不自然なほど無事に着地できたわけだが。
「それにしても…ゲームだとは思えないな。現実と変わらないんじゃないか?」
目の前に広がる光景に、思わずそう呟く。
広がる草原、澄み渡る青空、燦々と輝く太陽、そして背後にそびえる巨大な門。
目に入る全てが現実としか思えないクオリティだった。
そして、風邪の吹き抜けていく感触、生い茂る草の臭い、足の裏に感じる地面を踏みしめる感触から、五感の完璧な再現言葉が嘘や誇張では無いことが理解できる。
だが―――と考えながら、メニュー画面を開く。これはあくまでもゲームなのだ。どんなに現実のようでも、ゲームはゲーム。現実とゲームの区別はしっかりとつけなければならない。
そう考えてから、まずは何をすべきか考える。このまま草原に見えるモンスターらしきものを狩りに行ってもいいが、やはりまず最初にすべきは情報収集だろうと考え、背後にそびえる門に巨大な門の向かって歩き出した。
◇
あれから、門の近くにいた衛兵らしき人と会話をしたり、街の中に入って街の人と会話をしたりした結果、様々な情報を手に入った。そのなかでも重要なものをあげると、
<Infinite Dendrogram>において、プレイヤーは<マスター>、NPCは<ティアン>と呼ばれているということ。
ジョブに就かないとレベルをあげることができないということ。
ジョブに就くにはジョブクリスタルと言うものを使わなければいけないということ。
ジョブには下級職、上級職、
下級職はレベル50、上級職はレベル100が上限だが超級職には上限が無いということ。
超級職は一つのジョブに同時に一人しかつくことができなく、転職するための条件もかなり厳しいということ。
下級職は6つ、上級職は2つまで同時に就くことができ、合計レベル500が一般的にカンストとされているということ。
超級職は就くことができる数に限りはないが1つに就くことも厳しいため基本的に2つ以上の超級職にはつけないとされているということ。
ジョブに就くとそのジョブのギルドでしか受けられないクエストが受けられるようになるということ。
冒険者ギルドというお約束の建物があり、そこではジョブに関係なくクエストを受けられるということ。
くらいだろうか。他にも情報屋の情報などもあったが、それは今はそこまで必要ではないと判断した。
十分な情報を集められたと判断した俺は、情報収集を切り上げ、ジョブに就くためにジョブクリスタルに向かった。
ジョブクリスタルに触れると、現在就くことのできるジョブの一覧が表示された。<Infinite Dendrogram>を始めたばかりだというのにかなりの量があるそれの中から、アルター王国を始めの国に選んだ理由でもある【騎士】を見つけ出し、それに転職した。
ステータス画面を開き、転職できていることを確認すると、俺は初めに降り立った草原へと駆け出した。
◇
その後俺は、しばらくの間モンスターを狩り続けレベルを上げた。
初めは自分の体を動かしモンスターと戦うというのが新鮮で楽しかったのだが、何体も買って(狩る)いくとだんだんと作業に近くなっていき、しばらくすると「数が足りない」と思うようになってきた。
<Infinite Dendrogram>というVRMMOをやってはいるが、俺が一番好きなのはRTSだ。軍隊を指揮して大規模戦闘を行うというゲームが好きな俺にとって、<Infinite Dendrogram>の戦闘は、新鮮さがあるうちは楽しいが、作業になってくると規模が小さくつまらないものだった。
その後もしばらく戦闘を続けていき、何十体目かのモンスターを倒したところで、それは起こった。
「ん?何だこれは…何処から出てきたんだ?」
突然俺の手の中に一冊のノートパソコンくらいのサイズの大きな分厚い本が現れたのだ。
不思議に思いじっと眺めていると、いきなり目の前にウィンドウが表示された。
召喚魔本 レメゲトン
TYPE:アームズ
到達形態:Ⅰ
装備攻撃力:0
装備防御力:0
ステータス補正
HP補正:G
MP補正:C
SP補正:G
STR補正:F
END補正:F
DEX補正:F
AGI補正:G
LUC補正:G
「うぉっ…びっくりした。つまりこれは俺のエンブリオって事か?」
攻撃力と防御力がどちらも0なことを不思議に思いながらも読み進めていくと、『保有スキル』と言う項目を見つけた。
確認してみると、そこには
『保有スキル』
《召喚》:
MPを5消費し人間範疇生物を1人召喚する。
《召喚:○○》と唱えることで自身のついたことのある、または自身のつくことができる下級職の人間範疇生物を召喚可能。
1人につきパーティー枠を1消費し、パーティー枠が埋まっている場合は召喚することができない。
30分間召喚でき、召喚時のレベルは基本的には1だが、召喚者と同じジョブの人間範疇生物を召喚した場合、召喚者と同じレベルになる。
アクティブスキル
と表示されていた。
「ふむ…まさに求めていたものじゃないか」
プレイヤーに応じて進化するというのは本当だったようだ。
「では早速…《召喚:騎士》」
そう唱えると、手元にあった本がひとりでに開き、開いたページの片方に魔方陣が浮かび上がった。
それと同時に、1メートルほど前方の地面にも同じ魔方陣が浮かび上がり、一瞬発行したかと思うと魔方陣は消え、代わりに一人の男が立っていた。
「プレイヤー…ではないな、NPCでもなさそうだし、ならこれが召喚された人間範疇生物か」
どうやら召喚される人間範疇生物と言うのはその名の通り人間と同じ姿形をしているようだ。
召喚された男は、初期装備を選ぶときにあった金属鎧と、俺も選んだ摸擬剣を装備していた。
「とりあえず戦わせてみるか…ちょうどいいところにいるし、あれでいいか。よし、いけ」
そう命令すると、男は俺の指差したモンスターに向かって行き、戦闘を始めた。
「指示には従うようだな…どうやら戦闘能力はそこまで高くないようだ。今のうちにパーティーメンバーがいっぱいになるまで召喚しておこう《召喚:騎士》《召喚:騎士》《召喚:騎士》《召喚:騎士》」
4人召喚したところで、パーティーメンバーが上限に達したという通知が来る。
「ふむ…パーティーは6人が限界か。どうにかしてパーティー枠を増やしたいが…あとで情報屋に行ってみるか」
そこまで考えたところで、最初の男がモンスターを倒し、こちらに帰ってきた。
「さて…それじゃあ、とりあえず召喚が切れるまで狩るか。よし、行くぞお前たち」
◇
その後、召喚が切れるまでモンスターを狩り続けた俺は、情報屋に行きパーティー枠を増やす方法が無いかと聞いたところ、《部隊指揮》と言うスキルの情報を手に入れることができたので、すぐにそのスキルを取得しに行き、その日はログアウトした。