数の力で押しつぶす   作:Edain

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8時に投稿したかった…


第三話 VS【ウルフェン】

□【司令官】ハインツ

 

「くそっ…こいつら、きりがねぇ」

 

 最初にゴブリンの集団と遭遇してから、既に30分以上経過していた。

 味方がやられたり召喚時間が切れたりするたびに再召喚していたが、敵は途切れるどころか徐々にその同時に襲いかかってくる数が増していた。

 

「どうなってやがる…ゴブリンとティールウルフが連携を取って襲いかかってくるなんて聞いたことが無いぞ…」

 

 ゴブリンとティールウルフは、、同じ地域で見かけることはあっても同時に襲いかかってくることはなかった。むしろ、争いあう姿が確認される程度には仲が悪い。

 しかし、こいつらは同時に襲いかかってくるどころか連携まで取っている。

 それに、ティールウルフはこのあたりではあまり見かけなかったのに、ゴブリンの集団と遭遇してからはどんどん襲い掛かってきている。何か原因があるのは明らかだった。

 

「ティールウルフだけだったらウルフェンがいるのかもしれないが…ゴブリンと連携してくるのは説明ができない。それに、聞いた話によるとウルフェンは仲間に指示を出すだけでなく自身も襲い掛かってくるらしい。もしウルフェンがいるのだとしたら襲いかかってきているはずだ」

 

 一体何が原因なのか考えながら、襲い掛かってくる【ゴブリン】と【ティールウルフ】を倒していると、突然敵が出てこなくなった。

 

「なんだ…?」

 

 ついにすべての敵を倒したのかと思っていると、周りから再び【ゴブリン】と【ティールウルフ】が現れた。しかし―――

 

「囲まれてるじゃねぇか…」

 

 敵に取り囲まれていた。360度見渡す限り敵だらけ。さらに、先ほどまでと同様に【ゴブリンウォーリアー】が前に出て【ゴブリンアーチャー】を守るように構える。そして【ティールウルフ】は周囲を走り回り、隙を見せた瞬間に襲いかかろうとしている。

 これを突破するのは骨が折れそうだ、と考えていると、

 

「おいおい…冗談じゃねぇぞ、こいつらだけでも厳しいってのに…」

 

 それは現れた。

 他のモンスターとは格が違うことが一目でわかった。

 それは狼の姿をしていた。色は【ティールウルフ】と同じ灰色だが、体躯が通常の【ティールウルフ】の数倍はあった。体は毛並みに覆われ、顔には幾つか傷がついていた。

 そして、頭上には、【軍狼 ウルフェン】の文字。

 

「【軍狼 ウルフェン】だと…【群狼 ウルフェン】じゃねぇのか…?」

 

 ハインツには知りえない事だが、【群狼 ウルフェン】は<マスター>を返り討ちにし続けた結果、力を付け、そして逸話級から伝説級へと成長し、【軍狼 ウルフェン】へとその名を変えていた。

 

「まぁいい…まずはこの状況をどう乗り切るかだ…」

 

 周囲を完全に取り囲まれ、さらに〈UBM〉という強力な敵も存在する。絶体絶命という言葉がふさわしい局面だ。

 

「今まで出てこなかったボスが出てきたってことは、出てこなきゃ不味くなったってことだ…今まで出てこなかったのは、こっちが疲弊するの待ってたってことか。なら、いつまで経っても数が減らないのに痺れを切らしたか?なら、最大戦力で一気に決めに来るだろうし、周りにいるやつらで最後って感じか」

 

 これ以上出てこないのなら話が早い。

 

「雑魚どもを蹴散らしてからボスを囲んで叩く。いくぞお前ら、まずはゴブリンとティールウルフを狙え!」

『VOWWWWW』

 

 俺が味方に指示を出すのと、【ウルフェン】が配下に指示を出すのは、同時だった。

 

 

 そこからは敵味方入り混じった乱戦だった。

 男が【ゴブリンウォーリアー】を倒し、その男を【ゴブリンアーチャー】が撃つ。その【ゴブリンアーチャー】を別の男が射殺せば【ティールウルフ】が襲いかかる。

 味方がやられれば即座に再召喚するこちらに対し、敵は徐々に数を減らしていった。問題の【ウルフェン】は50人がかりで抑え、その間にさらに敵を減らした。

 このままいけば勝てると思ったその時、【ウルフェン】が行動を起こした。

 

『WOWWWWW』

 

【ウルフェン】が遠吠えをした瞬間、敵の動きが速くなり、攻撃が重くなり、こちらの攻撃が通りにくくなった。

 

「なんだ…急に強くなりやがった…スキルを使いやがったな。だったらこっちも《グレイトコマンド》!!」

 

 スキルの効果で強化された敵に対抗するため、こちらも【司令官】の奥義を使用する。《グレイトコマンド》は、5分間パーティーメンバーのステータスを1.5倍にするスキルで、かなり強力なスキルだ。

 

「今のうちに雑魚をすべて蹴散らせ!!」

 

 そう指示を出しながら、自身も敵を倒すために走り出す。自分で敵を倒すのは得意ではないが、最もステータスが高い上にスキルによるバフも乗っているのだから味方だけに任せるのは効率的ではない。

 

 1分ほどして、【ウルフェン】以外の敵をすべて倒し終わった。

 

「このまま奴を倒すぞ!」

 

 味方をすべて失った敵に対し、やられてもすぐに再召喚できるこちら。時間が経てば有利なのはこちらに思えるが、実はそうではない。

 再召喚するたびにMPを消費するため、MPが底をつけばこちらが一気に不利になるのだ。さらに、先ほど使用した《グレイトコマンド》によるバフも、新たに召喚された味方には付与されないため、時間が経てば有利になるどころか、時間をかければかけるほどこちらが不利になるのだ。

 だから、この勢いのまま出来るだけ早くこいつを倒してしまいたかったのだが…

 

『GRUAAAAA!!』

 

 そう簡単にはいかなかった。

 【ウルフェン】が再び吠える、今度は【ウルフェン】が強化された。

 

「くっ、流石にそううまくは行かないか、MPも少なくなってきた…ここが正念場だ!!【弓手】は距離をとって撃て!!狙いは顔だ!!【騎士】は囲んで抑えろ!!絶対に自由にさせるなよ!!走り回られたら負けだと思え!!」

 

 これまで一心不乱に攻撃を仕掛けていた味方が指示通りに動き始めるのを見て、自身も動き始める。狙うは顔、最もダメージの通りやすい部分だ。

 

 それからは、ひたすらに攻撃し、味方がやられた分だけ再召喚するの繰り返しだった。

 【ウルフェン】が前足を振り下ろし、【騎士】が一人やられる。やられたのを確認した瞬間、《召喚:騎士》を使用し数を減らされないようにする。

 しかし、これまでの戦闘でも《召喚》を使用しており、当然MPは殆ど消費しているわけで…

 

「《召喚:騎士》!《召喚:騎士》!!…くそっ、MPが切れやがったか!!」

 

 MPが底をつくのに、1分もかからなかった。

 

「【弓手】は目を狙え!!やられる前にやるぞ!!【騎士】は等間隔で囲め!!間が空いてもいい、とにかく包囲を崩すな!!」

 

 再び指示を出し、自身も【ウルフェン】の目を狙う。そして…

 

「これで、終いだぁぁ!!」

 

 俺の突き出した剣が、【ウルフェン】の目に突き刺さった。

 

 【<UBM>【軍狼 ウルフェン】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【ハインツ】がMVPに選出されました】

 【【ハインツ】にMVP特典【軍狼帽 ウルフェン】を贈与します】

 

 ◇◇◇

 

 

□■???

 

【軍狼 ウルフェン】

 最終到達レベル:31

 討伐MVP:【司令官(コマンダー)】ハインツ Lv85(合計レベル:185)

 <エンブリオ>:【召喚魔本 レメゲトン】

 MVP特典:伝説級【軍狼帽 ウルフェン】

 

「おや…」

 

 闇の中に、情報ウィンドウが怪しく浮かび上がる。

 その内容に目を通し、それ―――管理AI4号 ジャバウォックが声を発する。

 

「ハインツ…彼はたしか、私の担当した一人目のマスターだったな」

 

 それは、ログを確認しながら続ける。

 

「ふむ…彼の戦い方は他の<マスター>達とはかなり違うようだ。まるでチェシャのような戦い方だな。是非とも<超級>に至って欲しいところだ」

 

「最近は徐々に<UBM>が討伐される回数も増えてきた。この調子で順調にいって欲しいところだな」

 

 そう言って、ジャバウォックは自分の仕事に戻っていった。




【ウルフェン】の詳細はまた次回。
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