蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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怒涛の連投

流石に疲れたので日付跨ぐ直前まで休みます


第三話

 

 アイクは一番近くにいたミノタウロスに向かって切りかかる。しかしその攻撃は余裕を持って躱されるがそれは想定内。寧ろこんな直線的な攻撃にまんまと当たる様ならば、期待外れだ。

 別のミノタウロスが持っていた棍棒を無造作に振ってくる。それを躱さずにあえて剣で受け自らは後ろに飛ぶ。バク中の要領で着地をし何回か剣を振る。

 

(こんなものか……冒険者とやらが苦戦するからどれくらいのものかと思えば……)

 

 そう思いながら剣を構えずにミノタウロスの元へとゆっくりと歩みを進める。二体のミノタウロスが同時に襲い掛かってくるが、身を翻す最小限の動きだけでそれを躱し、すれ違いざまに剣を振る。それだけでミノタウロスは灰へと姿を変えた。

 

(残り五体……)

 

「おいおい……」

 

「冗談……だろ?」

 

「あれで『神の恩恵』を受けていないのよね……?」

 

 あっさりと仲間のミノタウロスが倒されたことに動揺したのか、こちらに向かってくる気配が全くない。興ざめとばかりにアイクは剣を真上に回転させながら投げる。

 その剣は一体のミノタウロスの上に飛んでいき、アイクはその剣を空中で掴みそのまま落ちてくる勢いを利用してミノタウロスを切る。魔石ごと切られたミノタウロスは絶命する。

 結果を確認せずにバク転をしながら手近にいたミノタウロスを切り上げる。今までよりもあっさりと剣が通りミノタウロスは絶命をする。

 

(残り三体……)

 

 しかしここでイレギュラーが発生する。アイクに勝てないと判断したのか、ミノタウロスは身を翻し上層に上る階段へと走っていった。アイクはラグネルを地面を切るように叩きつけ衝撃波を発生させ一体のミノタウロスを撃破する。

 しかし二体のミノタウロスは仕留め切れずに上層へと逃げてしまう。

 ここで仕留めなくても上の冒険者が仕留めてくれると判断したアイクは身を翻しフィンの元へと向かう。

 

「すまん、二体仕留めそこなった」

 

 今までアイクの戦闘を呆然と眺めていた『ロキ・ファミリア』の面々だが、アイクの一言に急に現実へと意識を帰還させる。

 

「皆、上層にはレベルの低い冒険者がたくさんいる!急いで仕留めろ!」

 

 前列の方にいた第一級冒険者たちはその言葉にその場を駆けだす。

 

「何をそんなに焦る必要がある?あの程度なら誰でも倒せるだろ?」

 

「君の世界の常識とこちらの世界の常識は違うのさ。君はまだ恩恵を受けてないからわからないだろうけど、この世界ではLv.差は基本的に覆せない。いくつもの戦争を生き抜いてきた君からしたら弱いのかもしれないが、普通の冒険者からしたら十分に彼らは脅威なんだよ」

 

「つまり俺が仕留めそこなった牛のせいで死人が出るかもしれないということか?」

 

「そう言うことだ」

 

 いうが早いがアイクもその場を駆けだし上層の階段を昇っていく。ダンジョンの構造は全く分からないが、そんなことを気にしている場合ではない。

 ミノタウロスの足音、もしくは冒険者の悲鳴を聞き分けることに全神経を集中させる。

 

「うわああああぁーーーーー!!!」

 

 すると遠くから悲鳴が聞こえて来た。悲鳴が聞こえて来た方へ走るが壁がアイクの進行を阻害する。ラグネルを抜き壁を破壊しながら進んでいく。

 すると一人の白髪の少年がミノタウロスに襲われていた。さらに後ろは行き止まりで逃げ場がない状況。

 ミノタウロスが少年を仕留めようと武器を振り上げる。急いで剣を抜きながら疾走しミノタウロスを切る。返り血で少年は真っ赤に染まってしまうが致し方ないと割り切る。

 

「すまん、こちらの不手際だ。大丈夫か?」

 

 アイクは少年にそう声をかけるが返り血で真っ赤に染まっているのに分かるほど顔を真っ青にして悲鳴をあげながらその場を去ってしまった。

 呆然と少年が走っていった方向を見ているアイク。遠巻きに金髪の少女がアイクを見ていることに気が付かないまま。

 

「アイズ、ミノタウロスは?」

 

 狼人の青年が金髪の少女、アイズに声をかける。アイズはアイクの方を指さし

 

「彼が倒した」

 

* * * * * * * * * *

 

~アイクside~

 

「馬鹿者!最後の最後に油断して!」

 

「すまない。油断していたわけではないがこれは完全に俺の落ち度だ」

 

 俺は現在リヴェリアに説教されている。ミノタウロスに一人で突っ込んだことについてなのだが、俺はあいつらをそこまで強いとは思っていない。うちの傭兵団であいつを倒せないのは神官だったキルロイ位のものだろう。

 

「確かにお前は規格外に強い、それは認めるがダンジョンはそう言った独断専行は命取りになる。覚えておけ」

 

 説教されている中俺は少し頬が緩みそうになる。意識して引き締めようとしたがどうやら隠しれなかったらしい。

 

「何がおかしい」

 

「いや、すまない。誰かに説教されるということが少し新鮮でな。俺を説教してきたのはミストとティアマト位のものだったからな。お前に説教されてるとティアマトに説教されていたことを思い出す」

 

 少し懐かしい気分になりつい口が回ってしまう。そのことに毒気を抜かれたのか、呆れたような表情を浮かべるリヴェリア。副団長というところがティアマトと同じポジションということも影響しているのだろうか。

 

「さあ着いたよ、ここが僕たちのホーム。黄昏の館だ」

 

 その大きさに驚きを隠せない。これは俺たちが正の使徒と戦ったタナス公の屋敷程度の大きさはあるのではないだろうか?

 

「みんな、おっかえりぃ~~~!!」

 

 屋敷から女性の声が聞こえると同時、こちらに突っ込んでくる。敵意は無いようだが……

 褐色の肌の少女たちがそれを躱し、金髪の女性がそれを躱す。最後尾にいた茶髪の少女は躱しきれずに胸を揉みしだかれるなどなすがままとなっている。

 

「ぐふふふふ~、少しおっぱい大きくなった?」

 

「な、なってません!」

 

 絶叫しながらも振り解けないでいる。その赤髪の女性にリヴェリアの杖が襲い掛かる。

 

「そのくらいにしておけ、ロキ」

 

「くううぅ~っ!何するんやママ!」

 

「誰がママだ」

 

 リヴェリアからもう一発杖による制裁を食らい頭を押さえ悶絶する。

 

「ロキ、少しいいかい?」

 

「ん?なんやフィン?なんかあったんか?」

 

「まあね、ダンジョンで凄い人と出会ったよ」

 

 フィンはこちらを向き手招きをしている。こちらに来いと言うことだろう。

 

「ん?誰やこの兄ちゃん?うちのファミリアにこんなごついゴリラみたいなやつおらんで?」

 

「ゴリラみたいで悪かったな……で、お前は誰なんだ?」

 

「人の名前を聞くときはまず自分からっちゅーやろ?」

 

「ああ、すまん。俺はアイク。この世界では『蒼炎の勇者』っていうのが一番分かりやすいのか?」

 

 俺自身そんな二つ名は聞いたことないので若干疑問形になるのは仕方がない事だ。

 そんな俺の様子をまじまじと見つめやがて顔を青くしていく。

 

「う、嘘はついて無いようやな……つまり……本物?」

 

「?本物も何もないだろ。俺は俺だ」

 

「ぎゃーーー!!うちを殺すんか!?アスタルテと同じように殺すんか!?」

 

「あのなぁ……俺はそう簡単に人は殺さん。必要に駆られたときだけだ」

 

「人は殺さんっちゅうことは神は殺すんやろ!?」

 

「は?神?誰が?」

 

「うちが神や!神ロキっちゅうんはうちの事や!助けてママ!」

 

 かなり怯えられているがどういうことだろうか?というかこいつが神?こんなおっさんみたいな言動するのが神なのか?と思ったが、ユンヌもかなり子供っぽかったな。最初に知らないで邪神と言って嫌われたな。

 

「神も人も殺さん。というか、なんであんたが俺がアスタルテを倒したことを知ってるんだ?」

 

「はぁ!?白々しい!お伽噺の最後はお前がアスタルテを殺してハッピーエンドみたいになってるけどなあ、神々はあのエンドに納得いっとらんねん!同族が殺されてハッピーエンドとかふざけるなや!」

 

「それは俺の所為じゃないだろ……それに俺がアスタルテを倒さなかったらほとんどの人類が石のままだったぞ」

 

「……ほんまにうちを殺さへんねんな?」

 

「神など信仰してはいないが、神に誓おう」

 

 その場の騒ぎは一応の収束を見せた。なんかどっと疲れたな……




キルロイでdisってるわけじゃないですよ?確かにキルロイはグレイル傭兵団どころか全ユニット中でかなり弱い部類に入りますが

なお俺の一番好きなキャラはワユです。ワユは俺の嫁なんで手を出したやつはぶち殺しますwwww

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