蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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ごめんなさい、これ書いたら魔法科の方書きます

そして今までで一番長くなることを謝罪します


第六話

 宴会の次の日、冒険者登録をするためにギルドにリヴェリアと来た。俺一人でも問題は無いと思ったのだが、俺一人だと確実に騒ぎになるという『ロキ・ファミリア』の首脳陣談。ギルドの受付に知り合いががいるからという理由でリヴェリアがついてきた。

 ギルドに到着し周りを見回す。まだ朝ということもあって人は疎らだ。

 

「すまない、冒険者になりたいのだが。受け付けはここか?」

 

「はい、只今参りますので少々お待ちください」

 

 少し待っていると受付の奥から耳の尖ったエルフの女性が出て来た。

 

「冒険者登録ですね、でしたらここに名前と所属ファミリアを書いてください」

 

 幸い俺の元いた世界と字は同じらしい。俺は古代語は全く分からなかったが、流石に普通の言葉が分からないほど馬鹿ではない。

 名前と所属ファミリアを書き込み受付嬢に渡す。

 

「名前は……アイクさん?『蒼炎の勇者』と同じ名前なんですね。所属ファミリアは、『ロキ・ファミリア』ですか?何か証明できるものってありますか?」

 

「いや、同じ名前も何も……うぐっ!」

 

 話している途中でリヴェリアが横から口を押さえて来た。エルフって認めた相手じゃないと肌の触れ合いをしない種族なんじゃなかったのか?

 

「彼は『ロキ・ファミリア』だ。私が証言しよう」

 

「リ、リヴェリア様!?はい!分かりました!ではこの後ダンジョンに潜るに当たっての簡単な講習をするのですが……」

 

「それは私が責任を持って教え込もう」

 

「は、はあ……それでは武器と防具の貸し出しは」

 

「必要ない……ラグッ!」

 

「余計なことを言うな……」

 

 なんかさっきから喋らせてもらえん。何なんだ一体。

 

「分かりました。それでは冒険者として登録しておくのでダンジョンに潜れるのは明日からということでお願いします」

 

「エイナ、少し話したいことがある。個室を借りることはできるか。盗聴なんかができない完全防音の部屋が好ましい」

 

「はあ……あの、リヴェリア様。失礼ですが先ほどからどうして彼の口を押さえているのですか?」

 

「それも後で話す。出来るだけ早く案内してくれ」

 

「……分かりました。こちらへどうぞ」

 

 エイナと呼ばれた受付嬢に着いて行く。俺たちは個室に通されリヴェリアと隣り合って座り、対面にエイナが座る。

 

「まずは、これを見てくれ」

 

 リヴェリアはエイナに一枚の紙を渡す。アビリティを消した俺のステータスだ。

 

「……レ、レベル8----!!!!!???」

 

「彼はアイク、『ロキ・ファミリア』、ひいてはオラリオに止まらず世界に唯一のレベル8だ。そして『蒼炎の勇者』本人でもある」

 

「……少々お待ちを……いきなりのこと過ぎて頭が追いつきません……」

 

「好きなだけ時間を使うといい」

 

「もしかして、ベル君を助けた冒険者って……青い髪に黄金の両手剣、筋骨隆々の大男」

 

「あいつは俺のことを何だと思っているんだ……」

 

「アイク様、あなたは何故ダンジョンでベル君を助けたのですか?冒険者登録をしているということは、昨日はまだ冒険者じゃなかったということですよね?なぜあなたはダンジョンに?」

 

「知らん。青い光に包まれたと思ったら、この世界にいたんだ。なぜ俺がこの世界に来たかなんて俺が聞きたいくらいだ。ベルを助けたのは、ミノタウロスを逃がした俺の責任だ、俺が倒すのは当然だろ。もう一匹は、誰かが倒してくれたようだが」

 

「エイナ、頼みがある。彼の存在を公にしないでほしい」

 

「ええ、分かってます。彼の存在を公にしたら、世界中が混乱する所じゃありませんから。全てのファミリアが手を組んで『ロキ・ファミリア』に戦争遊戯を仕掛けて潰される可能性だってありますから」

 

「潰される?何故だ?」

 

「お前は自分が向こうで何をしてたのか忘れたのか?」

 

「忘れているわけがない。俺が殺してきたやつを忘れるわけにはいかないだろ」

 

「その殺してきた中に『神』がいたことも忘れてはいないようだな」

 

「ああ、それがどうかしたか?」

 

「アイク様、あなたはお伽噺の中で『女神アスタルテ』を倒して世界を救った勇者です。しかし神々は、『女神アスタルテを倒した敵』と思っています。確かにあなたが『女神アスタルテ』を倒さなければ世界中の人が石となって世界は滅んでしまいましたが、神々としては倒したという結果が恐れるべきものなのです。下界の子供が、神々を倒す手段を持っているということは神々にとっては脅威なのです」

 

「始めてロキに会ったとき、酷く怯えていただろ?あれは自分の命の危機だと思ったからだと思え。自分の命を脅かす存在が近くにいて、尚且つそれに対抗する手段が無いならば怯えない道理はあるまい」

 

 そこまで説明されてやっと理解した。つまり俺という存在を知っている神は少ないほうがいい、できれば誰にも知られないほうがいいということか。

 

「分かった。それならば俺はあまり外で活動しないほうがいいだろう。ダンジョンにも最低限潜るに止めておいたほうがいいのか?」

 

「そこまで遠慮する必要はない。ただ神々に会っても馬鹿正直に自分の正体を明かさなければ、基本的に何をしても構わない」

 

「ああ」

 

「では帰る前に少し寄る所がある。用が済んだらダンジョンの知識を叩きこんでもらうぞ」

 

「はあ……アイズとの手合わせが終わったらな」

 

「は?アイズと訓練するのか?」

 

「今日の朝申し込まれた」

 

「分かった……その後で良い。エイナ、礼を言う」

 

「いえ、こちらこそありがとうございました」

 

* * * * * * * * * *

 

「アイク、お前の武器はそれだけなのか?」

 

「基本的には、この剣は壊れないからな」

 

「ならば整備などはどうしている?」

 

「特別なことはしていない。剣に着いた返り血を拭く程度だ」

 

「念のため、もう一つ武器を用意しといたほうがいい。それに、お前が大事そうに持っているもう一本の剣、刃こぼれが酷い。武器として機能していないだろう」

 

「これか?これはお守りみたいなものだ。親父が俺に買ってくれた、初めての新品の剣なんだ」

 

「そうか……ならばもう一度綺麗なものにしておきたくはないか?」

 

「それはできるのならばそうしたいが、出来るのか?」

 

「今向かっているのは『ヘファイストス・ファミリア』。鍛冶が専門のファミリアだ。ロキが少し挨拶をしてこいと言っていた。主神には合わないほうがいいだろうが、あそこの団長にその剣を預けて整備してもらうと良い」

 

 ダンジョンの上に立っている塔、『バベル』。その中に『ヘファイストス・ファミリア』があるらしく、そこに向かっている最中だ。

 

「着いたぞ、この階だ」

 

 何やら上昇する不思議な箱、―エレベーターというらしい―から出るとすぐに武器がたくさん飾られるショーケースが目に入る。

 リヴェリアに着いて行きとある一室の部屋をノックする。しかし中から反応が無い。それはいつも通りなのだろうか、躊躇いなくドアを開ける。

 

「椿、いるか?」

 

「ん?おお、リヴェリアか?手前に何か用か?」

 

「ああ、こいつが新しくファミリアに入団したんだ。それでこいつの武器を整備してほしい」

 

「ん?新人か?名は?」

 

「アイクだ」

 

「ほうほう、彼の勇者と同じ名前か。それに背負ってる剣、なかなかの業物だ。見せて貰っても?」

 

「ああ、構わないが」

 

 背負っているラグネルを抜き、椿と呼ばれた女性に手渡す。しかし椿は手には取ったが、俺が手を放すとラグネルを落としてしまう。

 

「レベル5の力で持ちきれんほど重い剣か……?アイクよ、レベルはいくつだ」

 

「すまない、少し事情があって言うわけにはいかない」

 

「リヴェリア……訳有りということか。ならば聞かん。それで、見てもらいたい武器とは?」

 

「これだ」

 

 ラグネルを拾い、リガルソードを手渡す。身構えていたようだがリガルソードは普通の剣だ。

 

「大分使い込んだな。使い込んだというよりは経年劣化というべきなのだろうが……直したとしても、昔のような切れ味は保証できないが」

 

「構わない。俺にはこいつ一本があれば十分だ」

 

 ラグネル抜いてその場で軽く振る。

 

「なかなか面白いな、ひょっとして本物の勇者なのかもしれんな……なんて、そんなことあるわけないか。失敬」

 

 的を得ていたのだが、黙っておいたほうがいい。

 

「椿、失礼するわよ。あら、リヴェリアじゃない、それとそっちは……見ない顔……!?あなた、その剣!」

 

「おお、主神様。彼はアイク。リヴェリアの紹介で手前が一つ武器を見ることになったのだ」

 

「神……ヘファイストス」

 

 眼帯をした赤髪の女性。彼女が神ヘファイストス。彼女は俺が手に持っているラグネルに視線が釘付けとなっている。

 

「この剣がどうかしたか?」

 

 軽く掲げてみるが、その反応にヘファイストスは後ずさる。

 

「なんで、その剣、神の加護が付いているの……?それも二つも。あなたは一体、何者!?」

 

「二つ?ああ、アスタルテとユンヌの加護か?もともとアスタルテの加護が付いていた剣だ、その後ユンヌの加護が付け足されたのか」

 

「アスタルテ?ユンヌ?加護?アイク、といったかしら……?もしかして『暁の女神』のアイク?」

 

「何を言っておるのだ主神様、そんなわけが――」

 

「違う。と言いたいところだが、神に嘘は付けんのだろう?『女神アスタルテ』は少し前に俺が倒した。この世界では『蒼炎の勇者』と名乗ったほうが分かりやすいのだろう?」

 

 リヴェリアが後ろで頭を抱えており、椿はポカンとした表情でこちらを見ている。先ほど他の神にばれるなと言った矢先これだ。幸先が悪すぎる。

 ヘファイストスは手直にあった剣を手に取り、切っ先をこちらに向ける。腰が完全に引けているが、敵意のこもった視線はそのままだ。

 

「すぐにここから出て行くか、私に倒されるか、好きな方を選びなさい!」

 

「そんな腰が引けたままで言われてもな……」

 

 ラグネルを鞘に戻し、両手をあげたままヘファイストスに近づいていく。

 

「近寄らないで!」

 

「俺に敵意は無い。いいからその剣を仕舞え」

 

 一歩近づいていくごとにじりじりと後退していくヘファイストス。やがて壁まで後退してしまい逃げ場が無くなる。

 破れかぶれに剣を振ってくる。左腕に着けた籠手で受け止め、刀身を右の手で掴み剣を取り上げる。その剣を後ろにいたリヴェリアに渡す。

 

「ヘファイストス、もう一度言う。俺に敵意は無い。だからその敵意のこもった視線を向けるのをやめてくれないか?」

 

「……嘘は……着いていないようね」

 

「ああ、ちなみに俺は超少食だ」

 

「……ふふ、どうしてそこで嘘を付くのかしら。ええ、分かったわ。まだ少し怖いけれど、あなたを信用しましょう」

 

「……あんなに取り乱している主神様、初めて見た」

 

「ロキもあんな感じだったぞ」

 

「ヘファイストス、どうしてこの剣に女神の加護がついてると分かったんだ?」

 

「私は鍛冶の神よ?武器に着いては誰よりも造詣が深いと思ってるわ。それに、その武器がどういう武器かどうかも分かるつもりよ」

 

「神ヘファイストス。アイクの存在は公にしないでほしい。他の神にも伝えないでほしい」

 

「分かっているわ、リヴェリア。『ロキ・ファミリア』を敵に回したくはないもの」

 

「すまない、助かる。アイクと全ファミリアの全面戦争になったときの事なんか、考えたくもない……」

 

「俺を天災みたいにいうのやめてくれないか……」

 

「では椿、頼んだぞ。神ヘファイストス、では」

 

「ええ、さようなら。リヴェリア、アイク」

 

 リヴェリアとバベルを後にする。エレベーターとやらは慣れないな。

 バベルから出ると、どこからか視線を感じた。気のせいだと思いたいが、そうはいかないと俺の勘が告げている。




なんか三人称視点の語り部に慣れると一人称視点が書き辛くてしょうがない

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