蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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オッタルとの戦闘シーン?申し訳ないんですがカットで

アニメしか見てないんでオッタルが何できるかさっぱり分からんのですよ……


第九話

 

 路地裏でのアイク対オッタルの戦いはアイクの勝利で幕を閉じる。町のとある一角は二人の戦闘によって崩壊していた。それだけ彼らの戦闘が激しかったことを物語っている。

 オッタルは仰向けに倒れ胸を激しく上下させ少しでも酸素を取り込もうとしている。身体のいたるところに切られた傷があり、出血も激しい。

 一方のアイクは目立った外傷もない。うっすらと汗をかいているが、それだけだ。

 

「待……て……!」

 

「どうした、まだやるのか?」

 

「何故、俺を、殺さない……?」

 

「俺にはお前を殺す理由は無い。無駄な殺生を控えるのは当たり前だろ」

 

「また、挑んでも、いいか……?」

 

「ふっ、いつでも――誰だ?」

 

 アイクは話していたオッタルから視線を外し、気配を感じていた方向に視線を向ける。崩壊した瓦礫の物陰からは出てきたのは貧相なローブを纏った女性だろうか?

 

「あら、オッタル。負けてしまったの?」

 

「申し訳ありません……フレイヤ様……」

 

「フレイヤ?それがお前の正体か?」

 

「あら?だったらどうするの?ここで私を殺すのかしら?」

 

「モンスターが解き放たれたタイミングで俺を足止めしてきたっていうことは、モンスターを解き放ったのはお前か?」

 

「ええ、そうよ。モンスターを解き放ったのは私。で、どうするの?」

 

「どうもしない。ここでお前を殺したところですでに起こってしまった結果は変えられん。それよりも、なぜこのようなことをした?」

 

「とある子が欲しいのよ。でも今のままでは足りないわ。だから、これはあの子への試練。強くなったところで貰い受けるとしましょうか。ねえ、あなたも私のものにならない?」

 

 アイクの元へと歩み寄りながらローブのフードを外す。フレイヤの輝かしい美貌が露わになる。これだけで下界の子たちは魅了されてしまう。

 

「断る。誰のものというわけではないが、今の俺の雇い主は『ロキ・ファミリア』だ」

 

 雇い主というのは嘘である。アイクがお伽噺で傭兵をやってたことを逆手に取った嘘なのだが。

 

「嘘ね。あなた、嘘を付いたわね」

 

「……ああ、雇い主というのは嘘だ。単に拾ってもらった恩がある。その恩を仇で返すわけにはいかんだろう」

 

「うふふふ、ますますあなたが欲しくなってきたわ。その魂の大きさは下界の子たちの中でも一線を画する。私の力をすべてあなたに授けたとしてもきっとあなたは平然としているのでしょうね?」

 

「さあな。もしかしたら暴走して、お前を殺してしまうかもしれん」

 

 その一言に、倒れていたオッタルが急に起き上がりフレイヤを庇う様に大剣を構えたまま立つ。

 そのオッタルを手で制してフレイヤはアイクとの会話を続ける。

 

「今のあなたでは私は殺せないでしょうね。あなたがアスタルテを殺せたのは、『負の女神』ユンヌの力を借りてのものでしょう?今の生身のあなたでは、私に傷を与えることはできても、殺すことは叶わないわ」

 

 これは嘘だ。天界の神々は下界に降りてきた時点で肉体の強度は『神の恩恵』を受けていない下界の子供たちと同じ。武神などは身体能力や培ってきた技術で下界の子供よりも強いものはいるが、フレイヤは武神でもない。肉体強度は下界の子供たちと何ら変わらない。

 このことを知らないアイクはそれを鵜呑みにする。

 

「話は終わりか?」

 

「ええ、また会いましょう?ああ、一つお願いがあるのだけれど、ダイダロス通りにいるモンスターは倒さないで頂戴。あれはあの子に対する試練なのだから」

 

「はあ……分かった。そのかわり一つ聞いていいか?」

 

「何かしら?」

 

「植物型のモンスターを解き放ったのはお前か?」

 

「植物型のモンスター?いいえ、そんなモンスター知らないわ」

 

「そうか」

 

 一言だけ返事をしアイクはその場を走り去っていく。フレイヤとオッタルのみが取り残される。

 

「帰ったら治療しなくてはいけないわね」

 

「申し訳ありません……」

 

「ねぇオッタル。彼、私に魅了されなかったわね」

 

「はい」

 

「何でかしら?やっぱり魂の大きさがそれだけ大きいと、私の力も通じないということかしら?それとも神の力を無効化する力でも備わっている?……まあいいわ、帰りましょう」

 

「はっ」

 

* * * * * * * * * *

 

 花型のモンスターとティオネ、ティオナ、レフィーヤ、途中から殆どのモンスターを粗方討伐し終えたアイズが戦っている。

 ティオネとティオナは現在武器を持っていない。そのため素手でモンスターと対峙している。

 モンスターの蔦をティオナが素手で殴りつける。しかし蔦の方はびくともせず、殴りつけたティオナの方がダメージを受けていた。

 

「痛ったーい!なにこれ固すぎだよ!」

 

「打撃じゃ埒が明かないわね。レフィーヤ!魔法の準備!私たちは足止めよ!」

 

「「「了解(です)!」」」

 

 アイズが風を纏った剣で蔦を切る。しかし切ったところからすぐに蔦が再生してしまう。

 ティオナとティオネは少しでも自分たちに気を逸らすため素手で蔦を殴り続ける。

 

「【解き放つ一条の光、正木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

 三人が戦っている間にレフィーヤは魔法の詠唱に入る。速度重視の短文詠唱、通常よりも威力は落ちてしまうが速攻で決めたいときは仕方がない。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】」

 

 詠唱が続き魔力を集中させる。しかしモンスターのヘイトがレフィーヤへと向いてしまう。

 攻撃してきている三人を振り切り、触手を地面から伸ばしレフィーヤの腹を貫通する。

 魔法の詠唱に集中していたレフィーヤは回避できない。倒れたレフィーヤを捕食するためか、花弁が開き、無数の牙が生え揃っている。口腔の奥には黄土色に輝く魔石が見えた。

 

「レフィーヤ!」

 

「こんの!」

 

 ティオナとティオネは自分たちに気を逸らすために、アイズはレフィーヤを貫いた触手を切るために風を身体に纏う。

 アイズが触手を切り魔石を破壊するために剣に風を纏い攻撃する。しかしアイズの風と激しい剣戟に耐え切れなかった剣は花弁を攻撃した時点で砕け散ってしまう。

 アイズはモンスターの触手で吹き飛ばされてしまう。モンスターはレフィーヤからアイズに標的を変更したようで、アイズの方へ触手を伸ばしていく。

 

「アイズ!」

 

 触手がアイズに触れようとしたところでその触手とアイズの間に割って入った人影があった。蒼い髪にマント、黄金の両手剣でアイズを捉えようとした触手をすべて断ち切った。

 アイズを肩に担ぎモンスターから距離を取る。

 

「アイク!」

 

「もう、遅っいー!」

 

「すまん、オッタルと戦っていてその後フレイヤに捕まっていた」

 

「オッタル!?『猛者』でレベル7の?それにフレイヤって……」

 

「その話は後だ。ティオネ、こいつで最後か?」

 

「ええ、でも打撃は効きづらいし、蔦は切っても切っても生え変わってくるし」

 

「頼みの綱はレフィーヤなんだけど、レフィーヤもやられちゃって」

 

 倒れているレフィーヤの側へと移動し、息があるかの確認をする。微かにだが、まだ意識も保っているようだ。

 

「……アイク……さん……?」

 

「ああ、無事ではなさそうだな。俺が時間を稼ごう。アイズ、レフィーヤにポーションを飲ませてやってくれ。ティオネとティオナは俺と一緒にあいつを食い止める。レフィーヤは動けるようになったら魔法を頼む」

 

「でもあいつ、魔法を使おうとしたらレフィーヤが狙われたんだよ?」

 

「俺が全力で守ろう。それでも不安か?」

 

「いいえ、これほどに頼もしい俺が守る宣言は初めて聞いたわ」

 

「ふっ、そうか。では行くぞ!」

 

 アイズとティオネ、ティオナはモンスターの元へ走り出す。モンスターはアイクたちに蔦を鞭のように振るい攻撃をしてくる。アイクはその蔦をラグネルで切り捨てる。

 ティオネとティオナはモンスターの周りを走り回りモンスターの意識をアイクに向けさせ過ぎないようにする。

 アイクはラグネルを叩きつけ衝撃波の斬撃で花弁を狙う。本能的に危険と察知したのか、蔦をすべて防御に回し斬撃はギリギリ魔石に間では到達しなかった。

 

「【ウィーシェの名の元に願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ。繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。走れ、妖精の輪。どうかーーー力を貸し与えてほしい】」

 

 アイズに肩を借りて立ち上がるレフィーヤは魔法の詠唱をしている。

 

「【エルフ・リング】!」

 

 『エルフ・リング』レフィーヤのみが使える魔法。エルフの魔法に限って、詠唱とその効果を完全に把握していれば使用できるという前代未聞のレア魔法だ。

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏の前に風を巻け】」

 

 ティオネとティオナを狙って突き出された蔦を空中で身を翻して回避する。

 

「【閉ざされる光。凍てつく大地】」

 

 アイクに向かって振るわれる複数の触手をすべて切り捨てる。

 

「【吹雪け、三度の厳冬―――我が名はアールヴ】」

 

 魔力を集中させたレフィーヤに向かって地面から突き放たれた蔦を、アイクが全てきり払う。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 その魔法は妖精の王、リヴェリアが使う魔法。オラリオ最強の魔導士が使う絶対零度の凍結魔法。

 その魔法により凍らされたモンスターは完全に動きを止める。口腔の奥にあった黄土色の魔石をアイクが破壊しモンスターは灰へと姿を変えた。

 レフィーヤは精神力枯渇、回復しきっていないダメージ、極度の緊張から解き放たれ気を失ってしまった。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

 ロキとギルド職員のエイナが戦闘が終わったところに駆けつけた。

 

「町に解き放たれたモンスターはすべて討伐されました。『ロキ・ファミリア』の皆様、ご協力ありがとうございました」

 

 エイナは頭を深々と下げお辞儀をする。ロキを含めてここに居るメンバーの視線がアイクに向いていた。アイクが代表して答えろということだろう。

 

「頭を上げてくれ。そういうお辞儀とか敬語とか、そういう貴族の嗜みとかは性に会わん。背中がむずむずしてくる」

 

 アイクが言い放った一言にエイナは頭を上げポカンとした表情を浮かべる。

 その場にいたメンバーからは思わずといった形で笑いがこぼれる。

 こうして長い『怪物祭』の一日は終わりを迎えた。




何が一番時間かかったかっていうと魔法の詠唱の文章だな
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