蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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ベルとか言いながら序盤はヘスティア視点

そして今後ヘスティアが出てくるかどうかは不明だったりする


閑話~ベル・クラネル~後編

 

~ヘスティアside~

 

 ベル君が『豊穣の女主人』とか言う食堂から帰ってきてダンジョンに潜った次の日、ステータスを更新した時に僕は驚愕を隠そうともしなかった。

 まず一つ目、今までに無い位ステータスの上り幅が大きかった。僕は今までに眷属を持ったことが無いから確証はないけど、ベル君のステータスの上り幅は正直言って以上だと思う。

 そして二つ目、スキルが発現していた。そしてこのスキルがベル君の急成長を促しているものであると確信する。

 

【勇者願望】

 

・早熟する

 

・勇者に対するあこがれが大きいほど効果上昇

 

・勇者に対するあこがれが続く限り効果は続く

 

 早熟するなんて確実にレアスキルだ……そしてこの勇者、オラリオで勇者と呼ばれているのはあの忌々しいロキの所の団長、フィン・ディムナだ。つまりベル君は『ロキ・ファミリア』の所の団長に対して憧れを持つことがあった?

 

「ベル君、ロキの所の団長と何かあったのかい?」

 

 疑われることを承知でベル君に訊ねる。別にロキの所だからということではなく、スキルが発言する理由は何かしら原因があるはず。それを知ることが無い限り、このスキルをベル君に教えるのは危険だ。

 それに他の神々たちに狙われるリスクまでついてくるとなると尚更だ。

 

「へ?『ロキ・ファミリア』の団長っていうと、『勇者』のフィンさんですか?なにもありませんよ?」

 

 とりあえずロキん所の団長は白。他に誰かいるのかな?

 

「ベル君、正直言って今日の君のステータスの伸びは尋常じゃない。これがいつまで続くかは分からないけど、これは君の成長期だと思っておいてくれ」

 

 スキルの存在を馬鹿正直に教えるわけにはいかない。だからと言って今回のステータスを誤魔化すわけにもいかない。嘘を付くのは心苦しいけど、これも君のためなんだ……!

 ステータスの写しをベル君に渡す。ベル君はその伸び率に驚き、喜んだ。

 

「神様!これ本当に僕のステータス何ですか!?」

 

「うん、本当だよ!僕がベル君に嘘を付いたことがあったかい?」

 

 まあついさっき嘘を付いたことは黙っておこう。

 

「いいえ、神様が嘘を付いたことなんて有りません!ということは本当にこれが僕の今のステータス……あれ?スキルの欄がおかしくないですか?」

 

「いや……少し手元が狂っちゃってね、いつも通り空欄だったよ」

 

「そうですか……」

 

 心苦しい!嘘を付いていることの罪悪感が半端じゃない!

 

「ま、まあさっきも言ったけど今の君は多分成長期だ。だからと言ってあんまり無理しないでくれよ?君は僕の、たった一人の眷属なんだから」

 

「はい、僕は神様を一人にするわけにはいきませんから」

 

「うん!それでいい!というわけで、僕は数日留守にするよ」

 

「お出掛けですか?」

 

「まあね、神からの招待状。パーティーみたいなものさ」

 

「分かりました。楽しんできてくださいね!」

 

 安く手に入れたドレスを着て、ホームである廃教会を後にする。

 僕は僕にできることでベル君を守る。そう心に誓いながら。

 

* * * * * * * * * *

 

~ベルside~

 

 あれから数日が経ったけど、神様はまだ帰ってこない。何かあったのかと心配になるけど、今の僕にできることは神様のために強くなることだけだ。

 今日は『怪物祭』だけれど、僕はダンジョンに潜るつもりだ。ステータスの更新はできないけれど、経験値の貯蔵はできるからダンジョンに潜ることは無駄にならない。

 

「おーい、そこの白髪頭。ちょっと待つニャー!」

 

 『豊穣の女主人』の前を通ったところで声をかけられる。周りをキョロキョロと見回すが白髪頭は見当たらない。

 

「そこでキョロキョロしているお前にゃ!シルの許嫁!」

 

「許嫁!?なんですかそれ!?」

 

「おい白髪頭、お前暇かニャ?」

 

「いえ、ダンジョンに潜るつもりでしたけど」

 

「だったらおっちょこちょいに財布を届けてきてほしいニャ。あのおっちょこちょい、『怪物祭』に行くって言っておきながら財布を忘れて行ったニャ」

 

「アーニャ、それでは説明不足です。すいません、クラネルさん。アーニャが言ってることはシルにこの財布を届けてきてほしいということです。本来なら私たちの誰かが行くべきなのですが、私たちはお店の準備がありますから」

 

「はあ、そういうことですか。分かりました」

 

 シルさんの財布をリューさんから受け取る。落とさないようにしっかりとポケットに入れておく。

 

「シルはさっき出発したばかりです。急げばすぐに合流できるでしょう」

 

「分かりました」

 

 一礼してその場から駆け出す。しかし僕は『怪物祭』の盛り上がりを嘗めていた。人混みが多すぎて全く進めない。

 ようやくコロシアムに到着したが、あまりにも人が多すぎたため辺りを見渡すが、薄鈍色の髪をした女性はやはり見つからない。

 途方に暮れていると、何やら聞き覚えのある声が耳に届いた。

 

「おーい、ベルく~ん!」

 

「あれ?神様?どうしてここに?」

 

 何やら布に包まれた箱を背負った神様がいた。ここで会えるとは思わなかったので思わず驚いてしまった。

 

「何でって、君とデートしに来たに決まっているじゃないか!さあ、ベル君!僕とデートしよう!」

 

「待ってください神様!僕ちょっと人を探してるんですけど……」

 

「そんなのデートしながら探せばいいじゃないか」

 

「そうですか……?」

 

 僕の腕を取り、引っ張りながら屋台を見て回ったり、クレープを食べたりじゃが丸君を食べたりしながらシルさんを探すも、やはりシルさんは見つからない。

 諦めかけたその時、何やら回りが騒がしくなっている。

 

「モンスターが逃げたぞー!」「何で!?『ガネーシャ・ファミリア』が厳重に保管しているんじゃなかったの!?」「そんなの俺が知るか!とりあえず逃げるんだよ!」

 

「神様!『ガネーシャ・ファミリア』から調教用のモンスターが逃げ出したみたいです!僕たちも――」

 

「ねぇベル君……その逃げ出したモンスターって、もしかしてこれのことかい?」

 

 神様が指さした方を見ると、腕に鎖を巻いたシルバーバックがこちらを見下していた。そして拳を握り腕を引いたかと思うと、僕たちを狙ってその引いた拳を伸ばしてきた。

 

「神様!」

 

 僕は神様と一緒に横に大きく飛んで躱す。シルバーバックが殴ったところには大きなクレーターが出来上がっていた。

 神様の手を引っ張りながら、シルバーバックから逃げる。しかし、シルバーバックは他の一般客を見向きもせず僕たちを執拗に追いかけまわしてくる。

 

「ベル君!そっちはダメだ!」

 

「え?……あ」

 

 僕たちが逃げて来たのはダイダロス通り。とても複雑に入り組んでいる為、何もしらずに入ったら出てこれないようなところだ。

 シルバーバックはお構いなしに僕たちを追いかけてくる。ここまでかと思い、神様をメイン通りに続く道の扉に入れて扉を閉める。

 

「ベル君!?駄目だ!君も一緒に逃げるんだ!」

 

「神様、僕を拾ってくれてありがとうございました……どこのファミリアにも門前払いされて絶望していた僕を、あなただけは拾ってくれた。とても感謝しています」

 

「駄目だベル君!ここを開けるんだ!」

 

「僕があいつを食い止めます。その間に神様は逃げて下さい」

 

 神様は泣きながらその場を走り去る。僕はナイフを抜いてシルバーバックと対峙する。

 シルバーバックは拳を振るうが上体を逸らしそれを躱す。伸びきった腕をナイフで切るが浅い。

 そんな攻撃は効かないとばかりに、シルバーバックは連続で拳を振るってくる。転がりながらも何とか躱すが、腕を振るった際の鎖に当たってしまい吹き飛ばされる。

 急いで立ち上がりシルバーバックの身体めがけてナイフを振るが、シルバーバックの身体に阻まれナイフは粉々に砕け散ってしまう。

 攻撃手段が無いベルはその場から走る。メイン通りにいかないように狭い路地裏を通る。シルバーバックの敏捷では今の僕には追いつけないが、引き離せもしない。

 苦し紛れにはなってくる拳と鎖を何とか躱していくが目の前に急に段差が現れ転んでしまった。しかしシルバーバックもその段差ですッ転び呻いている。

 前に進もうにもシルバーバックの巨体がその道を阻んでいるため来た道を戻ろうとするが、シルバーバックが振るった鎖が鞭のようにしなり、僕を吹き飛ばす。

 

「がはっ!」

 

 壁に叩きつけられ肺の空気をすべて吐き出してしまう。

 

(神様は、うまく逃げ切っただろうか……アイクさんならここでもまだ諦めないんだろうけど、今の僕ではあいつに太刀打ちできない……)

 

 シルバーバックは10層付近に出現するモンスターだ。今の僕のステータスでは太刀打ちできない。

 

「ベル君!」

 

 幻聴だろうか、神様の声が聞こえた気がした。声のした方に目を見やると息の切らした神様が背負っていた箱を大事そうに持っていた。

 

「神様!」

 

 シルバーバックは神様の方へ拳を振るおうとした。しかし落ちていた石をシルバーバックの目をめがけて投擲する。偶然当たったそれはそいつをひるませるのに十分なダメージを与える。

 神様の手を引きその場から走り物陰に隠れる。

 

「神様!どうして逃げなかったんですか!?」

 

「君を助けに来たからに決まっているだろう!」

 

 そう言って箱の中身を僕に差し出してくる。中には黒いナイフが入っていた。

 

「神様、これは……?」

 

「僕がヘファイストスに三日間土下座して、ようやく作ってもらった君専用の武器さ!君が強くなればなるほど、そのナイフは強くなる。君専用の、君だけの武器さ」

 

「神様……」

 

「それを使って、君があいつを倒すんだ。ここで、君のステータスを更新する」

 

「そんな!僕ではあいつなんかは……」

 

「君は勇者を目指しているんだろう?どこの勇者だか知らないけど、君が目指している勇者はあんな雑魚も倒せないほどの雑魚勇者なのかい?」

 

「いいえ!僕が憧れている彼は、もっと強いです!」

 

「だろ?そんな君が憧れている勇者に近づくためには、君があいつを倒すんだ。すぐに強くなれなんて僕は言わない。少しづつでも強くなればそれでいいんだから。その為の踏み台に、あいつにはなって貰おうじゃないか!」

 

 奇しくもそれは、アイクさんが言っていた言葉に少し似ている。受け取ったナイフを鞘からだし、胸に当てて誓う。

 

「神様、僕があいつを倒します。その為の力を僕に下さい!」

 

「うん!」

 

 服を脱ぎ、その場でうつ伏せになる。神様は指先に針を刺し、僕の背中にそれを塗る。

 

「ステータス更新完了!行っておいで、ベル君!」

 

「はい!」

 

 僕は物陰から勇んで飛び出す。もう恐怖心は無い。神様から貰った力と、アイクさんの言葉。これがあれば、あいつなんかに負けるわけがない!

 シルバーバックは僕に気付いたのか、先ほどと同じように拳を振るってくる。先ほどと違いステータスを更新した僕はそれを余裕を持って躱す。そして先ほどと同じように腕を黒いナイフで切り裂く。先ほどとは違い、腕に一本の切れ込みが入り血が噴き出す。

 

「グオオオォー!」

 

 痛みに悲鳴を上げ左腕で殴りかかってくる。その左腕にナイフを刺し、動きを止める。そのままナイフを引き抜き、胸にある魔石を狙ってナイフを突き刺す。

 

「はあああぁー!」

 

 声を荒げながら深く深くナイフを突き刺す。シルバーバックの魔石が破壊されシルバーバックは灰へと姿を変えた。

 

「神様!やりました!」

 

 僕は今日、冒険をした!




はいはい、連投連投

魔法科?しばらくお待ちください

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