蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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なんかアイクだけ突っ込んでも敵さんサイドが強化されないのはどうかと思いましてね


第十三話

「【目覚めよ】!」

 

 アイズが魔法の詠唱を行いその身に風を纏う。ウダイオスに向け突貫し敵の攻撃の棘を破壊する。ゴライアスは持っていた剣を横薙ぎにするがアイズは身を屈めその剣を躱し、ウダイオスに切りかかる。しかしその攻撃もやはりウダイオスの耐久の前には通じずに剣は弾かれてしまう。

 着地した瞬間を狙ってウダイオスは再び地面から棘をはやす。駆け抜け、躱そうとするが敵の攻撃は少しづつアイズの身体を掠めていく。

 ウダイオスは剣を持ってる腕を引きアイズに向けて突きを放つ。直撃は避けるもののウダイオスの攻撃にあえなく吹き飛ばされてしまう。

 それでもアイズは諦めない。

 

「風よ!」

 

 今までの風よりも高密度の風を纏い、相手に突貫する。防御を捨て攻撃に全神経を集中させる。

 ウダイオスの棘を躱す攻撃も持ち前の反射神経を以って躱す。しかしその棘に阻まれウダイオスの剣は見えなくなってしまう。

 ウダイオスは棘に囲まれたアイズに向けて剣を薙ぎ払う。アイズは全神経を集中させ棘を破壊しながら放たれてきた剣を、風を纏った剣を以って迎え撃つ。

 ウダイオスの剣は粉々に砕け散り、最大の攻撃手段である剣を失った。

 残った刀身を以って攻撃を放とうとするが、アイズは既に空中に身を躍らせており、剣にも風を集中させていた。

 

「『リル・ラファーガ』!」

 

 アイズ渾身の突きはウダイオスの眉間に命中しその頭蓋に罅を入れ、その勢いのまま頭部を破壊する。その衝撃によってウダイオスの身体は崩壊した。

 心臓部に残された魔石にアイズは歩みを進める。剣に風を纏わせ、魔石に向けて渾身の一突き。魔石は粉々に砕かれウダイオスはその身体を灰に姿を変えた。

 こうしてアイズはウダイオス単身撃破という偉業を成し遂げた。

 

* * * * * * * * * *

 

「馬鹿な……まさかウダイオスを一人で撃破できるなど……」

 

「信じてみるのも、悪くはないんじゃないか?」

 

 アイズは先の戦闘による疲労でその場に崩れた。リヴェリアとアイクがそばに駆け寄りアイズの現状を把握する。

 

「生きてはいるようだな」

 

「ねえ、アイク……」

 

「なんだ?」

 

「私……これで少しは、強くなれる、かな……?」

 

「ああ、あれだけの激戦をこなして生き残ったんだ。この世界の『神の恩恵』とやらを抜きに考えても、今の戦闘の経験はお前の経験値となった」

 

「ふふ……良かった……」

 

 その言葉を最後に気を失う。呼吸は正常なところからただ単に眠っているだけだろう。

 

「リヴェリア、回復薬を――!」

 

 今の激戦が終わったばかりだ。当事者ではないアイクたちも気が緩んでいたのは否めない。

 遠くから何やらガシャン、ガシャンと鎧の音だろうか?何かがこちらに近づいてきている。もしかしたら冒険者かもしれないとは思っていたが、それは違った。

 その鎧を見た瞬間、アイクの表情は驚愕に染まり、次いでこの世界に来る前の、戦争をしていた時の雰囲気を身に纏う。

 

「予定変更だ。リヴェリア、アイズを連れてここから逃げろ」

 

「アイク?いきなりどうした?」

 

「いいから言う通りにしてくれ。依頼の報酬とかはもう払わなくて構わない。だから早くこの場から離れてくれ」

 

 だんだんと鎧の音が大きくなってくる。アイクは既にその姿を視界に入れている。

 その鎧は深紅のマントを翻し、漆黒の鎧に身を包んでいた。手には剣ではなく槍を携えている。その槍の名前をアイクは知っている。銘は『ゼーンズフト』。

 漆黒の騎士本人だからだ。

 

「……アイク、あいつは一体――」

 

 漆黒の騎士は手にしていた槍を投擲してくる。アイクはリヴェリアとアイズをまとめて抱え横に飛ぶ。

 

「早く行け!」

 

「そう言うわけにもいかないだろう。既にあいつは私たちを敵と認識しているようだ」

 

 立ち上がりアイズを後ろに下げ杖を構えるリヴェリア。アイズはラグネルを抜き手にぶら下げたまま、油断なく敵を見据える。

 先ほど投げた槍はいつの間にか漆黒の騎士の手に戻っており、腰を落としてこちらの隙を窺っている。

 

「斬!」

 

 アイクは剣を持ったまま走り出し空中へ身を躍らせる。その勢いのまま漆黒の騎士に切りかかるが漆黒の騎士は槍を横持ちにし、アイクの剣を防ぐ。

 鍔迫り合いを漆黒の騎士が押しのけアイクは後ろに飛び衝撃を殺して着地する。

 その間に漆黒の騎士は距離を詰めてきており槍を突き出す。

 上体を右、左と逸らしその攻撃を躱す。漆黒の騎士は槍を上段から切り下ろし、アイクは剣でそれを受け止める。

 

「何故あんたがここに居る?」

 

『……』

 

「答えろ!」

 

「【レア・ラーヴァテイン】!」

 

 アイクと漆黒の騎士が大立ち回りをしている感に魔法の詠唱を行っていたリヴェリアは準備していた魔法を発動する。

 アイクは魔法の効果範囲から離脱し、劫火に焼かれていく漆黒の騎士を見つめている。

 しかし漆黒の騎士は今の魔法で傷一つ付いていない。それどころか深紅のマントの一欠けらさえ燃えてはいない。

 

『無駄ダ……オ前程度ノ攻撃デハ、我ガ鎧ニ傷一ツ、付ケルコトハ叶ワナイ……我ガ鎧ヲ纏ッタ我ヲ傷ツケルコトガ出来ルノハ、同ジ女神ノ祝福ヲ受ケタ、͡コノ世二存在シナイ、黄金ト白銀ノ剣ノミダ』

 

 漆黒の騎士が片言で声を発している。アイクはその言葉に衝撃を受けている。

 漆黒の騎士の女神の加護はクリミア開放の戦争でアイクが漆黒の騎士と一騎打ちをした際に失われたはずだ。

 

「お前の正体は何者だ!先ほどの打ち合いで、ゼルギウス将軍でないことは確認できている!」

 

『……』

 

「答える気が無いのならば、無理やりにでも聞き出すまでだ!」

 

「待て!アイク!」

 

 リヴェリアの制止の声を振り切り、漆黒の騎士との距離を詰める。

 上半身を狙い袈裟切りを放つが、見た目以上に身軽に動ける漆黒の騎士は上体を逸らすことでそれを躱す。袈裟切りを放ったまま逆袈裟切りをするが、それは槍に阻まれてしまう。

 槍を薙ぎ払う。アイクは後ろに飛びその攻撃を躱す。漆黒の騎士は距離を詰め、アイクの剣が届かない絶妙な位置から突き、突き、薙ぎ払いを放ってくる。

 漆黒の騎士とアイクの体格は同じくらいだ。腕の長さも同じくらいため武器のリーチが長い槍の方が必然的に有利となる。

 突きを斜め前に出ることで攻撃を躱したアイクは体を回転させながら漆黒の騎士に切りかかる。しかし石突きの方でアイクの胸を打つ。

 

「がはっ……!」

 

 口から血を吐き出しながらアイクはその衝撃に吹き飛ばされる。何とか地面を転がりながら衝撃を殺すが、漆黒の騎士は槍を投擲する構えを取っている。

 ちょうどアイクが止まったところで漆黒の騎士は槍を投擲してきた。その矢を間一髪で剣を上に跳ね上げさせ弾く。

 武器が無くなったところを好機とみてアイクは一気に距離を詰め切りかかる。

 武器を持たない漆黒の騎士は右腕でその剣を受ける。アイクの剣は漆黒の騎士の右腕の肘から先を切り落とす。

 中に人が入っているのならば大量の血潮が飛び交うはずだが、それは全く起こらない。切り落とした肘から肩にかけて、植物がぎっしりと埋め尽くしていることが確認できた。

 

「人間じゃない!?」

 

『ホウ……我ノ鎧ノ防御ヲ切リ裂クカ……ドウヤラオ前ノソノ剣、彼ノ女神ノ祝福ヲ受ケテイルノカ。オ前、一体何者ダ……?』

 

「俺はアイク。グレイル傭兵団団長のアイクだ」

 

『アイク、カ……覚エテオコウ。此処は引カセテモラウ』

 

「待て!お前は一体何なんだ!?なぜその鎧がこの世界にある!?」

 

 アイクの質問には答えず、切られて右腕を拾い、いつの間にか左手には『ゼーンズフト』が握られており、アイクたちから背を向け歩き出す。

 アイクは漆黒の騎士に手を伸ばすが、漆黒の騎士の足元に間方陣が出現したかと思うと忽然とその姿を消した。

 

「アイク……あいつは一体何者なんだ?お前は、あいつの何を知っている?」

 

「……リヴェリア、この件は俺がすべて片付ける。お前たちは手を出すな」

 

「何故だ?そんなに私たちは頼りにならないか……?」

 

「先ほどの攻防を見ただろう。お前の攻撃は漆黒の騎士には通じなかった」

 

「漆黒の騎士……それが奴の呼び名か?」

 

「ああ。あいつの中身は人間じゃなかった。何やら植物で構成された人形だった。つまり、あの鎧を破壊しなければあいつは常に動けるのだろう」

 

「お前はあの鎧を破壊する術を持っているというのか?」

 

「あいつの鎧を傷つけることができるのは、今現在俺のラグネルだけだ。お前の魔法も、アイズの攻撃も、『ロキ・ファミリア』全てが総出で掛かったとしてもあいつの前では無力だ。……せめて『エタルド』を使えるあいつがいてくれたら……とりあえず帰ろう」

 

「……ああ」

 

* * * * * * * * * *

 

 ここはダンジョン五階層。現在ここには大量の魔石が転がっている。

 新しく魔法を発現させたベルが、魔法の試し打ちに来たところ、調子に乗って魔法を撃ち過ぎた結果である。

 魔石の他にも、白髪の少年、ベル・クラネルも転がっている。

 そしてそこに突然青い光が迸る。

 光が収まったかと思うと、そこには紫の髪を腰まで伸ばし、白いカチューシャをし、一本のアホ毛が跳ねている。均整の取れたプロポーションの、十人中十人が美少女と答えるであろう少女が、腰に『白銀の両手剣』と一本の刀を携えて突然と姿を現した。

 

「あれ……?ここは、どこ?」




敵に漆黒を、そしてとうとう嫁ちゃんの登場です!

次回は閑話として嫁ちゃんサイドの話を書きたいです!どうせなら今から書きたいけど、体力的になかなかつらいので明日頑張って書きます!

魔法科?知らんな。優先順位はFEじゃ!
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