蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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ハーディンの初出が紋章新紋章の闇堕ちの方だとは


第二十話

 

 漆黒の騎士の方へと歩み寄っていくアイク。そのアイクの肩をアイズが掴み、一本の剣をかざす。

 

「アイク……この剣……」

 

 それは先ほどの戦闘でアイクがヴァルガング・ドラゴンに向けて投擲した剣。

 

「『アロンダイト』か……これはお前が持ってろ。あいつ相手に使うことは無いからな」

 

「うん、分かった……負けないで」

 

「アイク!」

 

 リヴェリアがアイクを呼び止める。振り返ると皆がアイクを心配そうな表情で見返していた。

 

「大丈夫だ、約束は守ろう。あいつを倒し、お前たちの元へと戻ってくる。それに、お前たちの相手はあの怪物だろう」

 

 アイクたちが話している間も、女型のモンスターは食人花、芋虫型のモンスターの捕食を続けている。

 アイクが漆黒の騎士の方へと歩みを進めると、捕食されているモンスターと女型の怪物がアイクの方を見た。今にも飛びかからんという勢いだが、漆黒の騎士が手を上げるとその勢いは急激にしぼむ。

 

『再ビ会イ見エルコトニナルトハナ。貴様ハ覚エテイル、我ノ鎧ニ傷ヲ付ケルコトノ出来ル剣ヲ持ツモノヨ』

 

 腰を落とし槍を構える漆黒の騎士。一方のアイクは剣をだらりとぶら下げたままだ。

 

「この間は御守りをしながら戦わなければならなかったからな。今回はお前だけに集中させてもらうぞ!」

 

 言い終わると同時、アイクはその場から漆黒の騎士へと一気に距離を詰め飛び蹴りを放つ。

 漆黒の騎士は槍でそれを防ぐが、勢いは殺しきれず地面を擦りながら森の中へと引き摺りこまれていく。前回の戦闘で中身が植物であることを見抜き、鎧の重量の割に中身は軽いのではと踏んでいたが、どうやら当たりだったようだ。

 アイクはすぐにそれを追いかけることはせずに、ラグネルを地面に突き立てる。するとアイクの後ろには障壁が出現する。

 この障壁は導きの塔でゼルギウス将軍がアイクとの一騎打ちをするために生み出した障壁と同じだ。戦闘が終わるまで解かれることは無く、どのような攻撃でも破壊されることは無い。

 アイクと漆黒の騎士との一騎打ち、女型のモンスターと『ロキ・ファミリア』との戦闘に集中させるために打った一手だ。

 女型との戦闘チームの方へ振り返りもせずにアイクは森の中へと走る。後ろを振り返らなかったのはアイクが皆を信用している証拠だ。

 森に入ると漆黒の騎士は辺りを警戒している。キョロキョロと見回し、でも隙は作らず。アイクは漆黒の騎士から身を隠しながら斬撃を飛ばす。

 漆黒の騎士はそれを間一髪回避し、斬撃が飛んできた方向へと『ゼーンズフト』を投擲してくる。

 様子を見ていたアイクは何なく躱し漆黒の騎士の前へと姿を現すと同時、再び斬撃を飛ばす。

 手元へと戻した槍でその斬撃をかき消し、一気に距離を詰めて来た。槍を横薙ぎに振り払い、アイクはそれをバク転で距離を取る。足を地面につけた瞬間距離を再び開き斬撃を飛ばす。

 

『厄介ナ……!』

 

 今までの戦闘で初めて苛立ったような声を出した。一応、感情というものも持っているようだ。

 斬撃を再び槍を振り払い斬撃をかき消す。振り払った懐向けて一気に距離を縮め胴へと袈裟切り。

 漆黒の騎士は後ろに飛ぶことによって間一髪回避する。着地した隙を逃さず攻撃をし続ける。漆黒の騎士はアイクの攻撃を躱し、時には槍で受け止め何とか対応している。

 

「どうした、以前戦った時より弱くなったか?」

 

『小癪ナ……!』

 

 漆黒の騎士は少し距離を取り、槍を連続で突き出す。しかしアイクは身を翻し半歩後ろに下がるという最小限の動きだけで回避し続ける。

 

「お前は良くも悪くも動きが機械的過ぎる。フェイントも入れなければ攻撃も単調だ。お前の動きは前回の戦いで見切った、お前の攻撃は俺には当たらん。それが植物人形であるお前の限界なのだろう」

 

 漆黒の騎士の渾身の突きを右斜め前に回転しながら踏み出すことによって回避、そのまま回転の勢いを利用し漆黒の騎士の首を斬る。

 兜が首ごと飛び完全に勝利したかのように思えたが、漆黒の騎士の中身は人間ではない。つまり首を切られても動けても不思議ではない。

 飛んで行った首を見向きもせず、切り払ったアイクの背中に向けて槍を突き出す。

 しかしアイクはそこまで読んでいた。首を切っても、上半身と下半身を切り離しても、中身が人間でないのならば動いても不思議ではないと。

 その槍を見向きもせずの地面を転がり避ける。地面を転がりながら方向転換し漆黒の騎士の方へと向き、剣を真上に投げる。

 その剣の動きに注目してしまった漆黒の騎士はアイクの方への注意が疎かになってしまう。

 空中で回転している剣の場所に突然アイクが出現したと思ったときには、アイクは空中から漆黒の騎士めがけて剣を振り下ろしていた。

 咄嗟に槍で一撃目を防ぐが、二撃目があることを漆黒の騎士は知らない。地面に着地したままバク転をして切り上げる。

 漆黒の騎士の鎧の洞には一本の剣筋が走り、そこからは淡い紫色の光が漏れだしている。

 この光は見覚えがある。この世界における魔石の色そのものだ。

 

「お前の原動力は、魔石ということか……お前は突然変異のモンスターと同列なのか」

 

『……』

 

 胸を押さえ何も言わない漆黒の騎士。

 

「お前は何故さっきモンスターを使役しているような動きを見せた、そしてなぜモンスターはそれに従った?」

 

『……』

 

「赤毛の調教師、あいつと何かしら関係があるのか?」

 

『……』

 

 アイクの質問に何一つ答えない。もとより答えを期待しての問いではなかったのだが、ここまで露骨に何も答えようとしないとさすがにイラつく。

 すると突然、『ロキ・ファミリア』の遠征組がいたところから爆音が鳴り響き、そちらへ目をやると爆炎が上がっていた。

 その一瞬目を離したすきに、漆黒の騎士の足元には魔法陣が現れ一瞬の間にいなくなる。

 咄嗟に手を伸ばすがその場所には何も残っていない。また逃がしたということだ。

 ここに燻っていても仕方がないので先ほどの爆音がした場所へと向かう。皆の無事を祈りながら。

 

* * * * * * * * * *

 

 アイクが漆黒の騎士の方へと向かいすぐに残ったメンバーは戦闘を開始した。いや、しようと思ったが正しい。

 アイズがアイクに『アロンダイト』を渡され、漆黒の騎士と他のメンバーを分離させた後に、再び女型のモンスターと対峙してふと違和感を感じた。

 そしてこの違和感の正体をアイズは直感的に悟った。

 

「……あれは、精霊?」

 

 アイズの呟きを近くにいたメンバーが驚愕と共に聞き返す。

 

「精霊だと!?あの怪物がか?」

 

『アリア!!アリア!!会イタカッタ!貴方ヲ食ベサセテ!』

 

 女型の精霊は大声で言葉を発する。モンスター、もとい精霊が言葉を発するとは露ほどにも思っていなかったメンバーはその光景に固まってしまう。

 

『貴方モ一緒ニナリマショウ?』

 

「皆、油断しないで。何が来ても対応できるようにしておいてくれ。レフィーヤ、魔法の準備を!リヴェリアは詠唱を待っててくれ、嫌な予感がする……」

 

 フィンの指示と共にレフィーヤが魔法を唱え始める。

 その魔力に反応したのか、女型の精霊が何やらぶつぶつと呟きだした。

 

『火ヨ、来タレ――』

 

「詠唱!?モンスターが!?」

 

 女型の精霊が詠唱を始めると同時、その足元には巨大な魔法陣が展開される。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

 レフィーヤの魔法が完成し、女型の精霊に向けて最大火力で発射される。魔法の矢は女型の精霊を寸分狂わず穿ち続け、やがて一斉射撃が終わり煙が晴れていく。目g他の精霊には傷一つ付かないまま。

 

「嘘でしょ……無傷だなんて……」

 

「リヴェリア、防護結界を張れ!」

 

『【猛ヨ猛ヨ猛ヨ炎ノ渦ヨ紅蓮ノ壁ヨ業火ノ方向ヨ突風ノ力ヲ借リ世界ヲ閉ザセ燃エル空燃エル大地燃エル海燃エル泉燃エル山燃エル命全テヲ焦土ト変エ怒リト嘆キノ号砲ヲ我ガ愛セシ英雄ノ命ノ代償ヲ――】』

 

「【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ。森の守り手と契りを結び、大地の歌を持って我等を包め。我らを囲え】」

 

 女型の精霊とリヴェリアの同時詠唱。それはともに超長文詠唱、しかし詠唱速度はリヴェリアよりも女型の精霊の方が早い。

 その間に女型の足元の触手やモンスターは詠唱中のリヴェリアを狙う。その触手をティオナやティオネが切り、ガレスとベートと椿が迎え撃つが、それもギリギリだ。

 

『【代行者ノ名ニオイテ命ジル与エラレシ我ガ名ハ火精霊炎ノ化身ノ女王――】』

 

「総員、リヴェリアの結界まで下がれ!」

 

「【大いなる森光の障壁となって我らを守れ――我が名はアールヴ】!」

 

 リヴェリアの詠唱が終わり、皆がその結界まで下がってくる。

 

「【ヴィア・シルヘイム】!!」

 

 リヴェリアが物理・魔法の遮断結界を張り終えると同時、女型の精霊も魔法の詠唱を終える。

 

『【ファイアーストーム】』

 

 世界が紅に染まった。目の前を巨大な炎が通過し、遮断結界のいたるところに罅が入っていくのが確認できる。

 ガレスが前へ出、その炎を盾を以って防ぐ体勢を取る。やがて遮断結界は破壊され、ガレスの盾をも、その炎はすべてを焼き払っていく。

 業火が過ぎ去った場所には倒れている『ロキ・ファミリア』の面々。そしてそれを意に介さずに、女型の精霊は新たに魔法の詠唱を開始する。

 

『【地ヨ、唸レ――】』

 

 その詠唱を止める術を持たない彼らは、ただ魔法の完成を待つことしかできない。

 魔法の詠唱を続ける女型の精霊、やがて魔法陣は巨大化していき、魔法の完成が間近であることを伝えてくる。

 

『【メテオストーム】』

 

 魔法が完成し、次々と隕石群が落下してくる。それを防ぐ術もまた、彼等にはない。

 皆が終わりを覚悟し目を閉じる直前、人影が彼らの前へと割り込み、黄金の剣を地面に突き立てた。

 剣を突き立てた場所からは障壁が生み出され、リヴェリアの遮断結界を持ってしても防ぐことができなかった魔法を次々と防ぎ、隕石群は消滅していく。

 やがて音が鳴りやみ、うっすらと目を開けるとそこには先ほど一人で別の敵へと向かって行った『蒼炎の勇者』の姿があった。

 

「無事、とは言えないようだな。お前達、生きているか?」




始めて4000文字行きました。

魔法の詠唱は二度と書きたくない、本を片手に開きながら片手でタイピング、カタカナとかもう死ねよ本当に
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