蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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土曜の夜から日曜の明け方にかけてオールしてカラオケ行った所為で喉が痛いクッペです

合唱人がオールでカラオケで喉痛めるってアホすぎるやろ!


第二十二話

 59階層の女型の精霊を撃破し後、芋虫型のモンスターや食人花は次々と散らされていくようにその場からいなくなり、恐らくは60階層に下って行ったのだろう。

 そしてその戦闘での被害は甚大だった。一人を除いて殆どの冒険者が満身創痍、アイズ、リヴェリア、レフィーヤに至っては魔法の過使用による精神枯渇の状態に陥っていた。

 59階層は未到達階層であったため、他にモンスターが出ないとも限らないため、急ぎ50階層のキャンプへの帰還が決まった。

 ちなみに精神枯渇で動けない三人を運んでいるのはアイク一人である。他の冒険者は先ほども言ったように皆が皆満身創痍、人一人を運びながら移動する余裕がなかったからだ。

 レフィーヤとリヴェリアを両肩に担ぎ、アイズを横抱き、いわゆるお姫様抱っこの状態で運んでいる。最初リヴェリアは降ろせと文句を言っていたが、精神枯渇が酷く碌に抵抗できなかったため、為すがまま担がれているというわけだ。

 三人も運んでいるアイクは当然戦闘など碌にこなせない。その為隊の後方、殿を務めている。

 

「アイク、結局漆黒の騎士はどうなった?倒せたのか?」

 

 肩に担がれたリヴェリアはアイクに問う。女型の精霊との戦闘に駆けつけた際には目立った外傷がなかったため、負けてはいないことは確認が取れているが。

 

「いや、また逃げられた」

 

「そうか……」

 

「だがあいつの弱点はもう分かった。次に邂逅した時には」

 

 ――あいつを倒す。

 改めて決意をしたように言い放つ。

 

「それで、あいつの弱点とは一体何なんだ?」

 

「鎧の胸の部分を切った際に魔石の光が漏れだしていた。つまりあいつの原動力は魔石ということだろう。この世界は魔石で色々と動かせるんだろ?」

 

「ああ」

 

「そしてその魔石を破壊すればそれは動きを止める」

 

 リヴェリアは首を縦に振ることでその問いに答える。

 

「それと同じだ。あいつの胸の魔石を破壊する、そうすればあいつは絶命、動きを止める筈だ」

 

 それに、と続ける。

 

「あいつの槍術、というか戦闘能力はゼルギウス将軍、本物の漆黒の騎士よりも劣る。それにこっちには『神の恩恵』がある。ついさっき初めて『神の恩恵』力を全力で使ったが、中々のじゃじゃ馬だな」

 

「『神の恩恵』をじゃじゃ馬扱いか……慣れていない内はそうなるだろう。熟練の戦士ほど、最初は恩恵の力に戸惑うものも出てくる」

 

「ステータスの更新ですぐに身体能力が上がるんだろ?今までの自分に喧嘩を売っているようで、ものすごく癪なんだが」

 

「『神の恩恵』とはそういうものだ。遠征が終わったらステータスを更新してみたらどうだ?」

 

「気が向いたらな」

 

* * * * * * * * * *

 

 時は進み現在『ロキ・ファミリア』の遠征チームはダンジョンの18階層で足止めを食らっていた。

 上層に進んでいる途中にいるモンスターに毒を貰ってしまい、その解毒薬をベートが地上に取りに行っている間は進軍できないということだ。

 足止めを食らっている間は特にやることも無い。18階層はモンスターが生まれてくることは無いため、警戒は最低限で構わないし、ダンジョンの遠征からの帰還ということであまり激しい鍛錬を行おうという者もいない。

 59階層で戦闘を行ったものは50階層で充分に休息を取ったため、ほぼ全快の状態だ。その為ティオナなんかは暇だー!と喚いてた。

 18階層での警戒は基本的に当番制を取っている。そして今の当番はアイクとアイズだ。

 

「アイズ、もう戦闘の傷は完全に癒えたのか?」

 

「うん……」

 

「エリクサーとか、高等回復薬とか、この世界の薬が便利というか、馬鹿げているな」

 

「そうだね……」

 

「ただこっちの世界は治療の魔法が使える奴が少ないな。『ロキ・ファミリア』でもリヴェリア位なものだろう?」

 

「うん……」

 

「……いい加減こっちを向いて話さないのか?」

 

 どういうわけかアイズはアイクと目を合わせて放そうとしない。元から口数は多く中たためただ相槌を打っているだけでも不自然ではあまりないのだが、一応目を見て話すことはできたはずなのだが。

 

「……ねぇアイク、アイクって向こうの世界で仲のいい女の子とか多かった?」

 

「女?それなりにいたんじゃないのか?」

 

 話し始めたと思ったらいきなり女性の話である。流石のアイクも若干対応に困る。

 

「よく話をする同じ傭兵団の剣士とかは?あとはアイクが救った国の王女様とか、アイクが戦ってた国の大将も女の子だったよね?」

 

 同じ傭兵団の剣士はワユ、アイクが救った国の王女様はエリンシア、アイクが戦った国の大将というのは恐らくデインの暁の巫女、ミカヤだろう。

 

「ワユとはそんな浮ついた関係にはなったことが無いな。あいつは目があったら勝負だなんだと騒いでいたからな。エリンシアは身分が違い過ぎる、それにあいつと結婚したのはあいつの国の騎士団長だ。ミカヤは結局デインの王女になったからな、あいつと結婚したのは俺の傭兵団に一時いたあいつの弟のような奴だ」

 

 言われた通りの女性との関係を一通り説明し終えたアイク。女性関係の話なんかはあまりしてこなかったし、アイク自身女性とそう言った関係になったことも無い。

 

「そうなんだ……今も好きな人とかいないの……?」

 

「ああ……さっきからどうしたんだ?」

 

「なんでもない」

 

 聞きたいことは聞き終えたと言わんばかりにぷいとそっぽを向く。何があったかは分からないが、何でもないというのなら構わないかと思うアイクだった。

 やがて18階層の見回りが終わろうとなったとき、18階層と17階層をつなぐ階段の所に白髪の少年と赤髪の青年、小人族の少女が倒れていた。

 アイクとアイズは彼らの傍へ駆け寄り生きているかどうかの確認をする。全員意識は無いが呼吸はしている。

 アイクとアイズは三人を『ロキ・ファミリア』のキャンプへと運び、フィンたちに事情を話した。

 フィンたち幹部組は彼ら、というよりも白髪の少年を見ると快く承諾し、空いているテントへと運ぶように指示されたため。彼らをテントへと運ぶ。

 テントに運び、一通り治療をして暫くが立つ。すると中から少年の声が聞こえて来た。

 

「――リリ!ヴェルフ!」

 

 少年が目を覚ましたと分かったアイクはテントの中へと入り、彼らの容体を確認しつつ、何があったかを聞きだすことにした。

 

「起きたか」

 

「ええっと……アイクさん!?あの、ここは!?仲間は無事ですか?」

 

「少し落ち着け、お前の仲間というのはそこに寝ている二人のことだろう」

 

 いまだに目を覚まさない二人を指さし、ベルを宥める。二人を見て落ち着いたのか、ほっと胸を撫で下ろした。

 

「僕たちを助けてくれてありがとうございます」

 

「構わない。それよりも何故あんなところで倒れていた?」

 

「僕たち中層辺りに潜っていたんですけど、その時に他のパーティーに怪物の群れを押し付けられてしまいまして……その時の戦闘で回復薬がほとんど駄目になってしまいまして、地上に戻ろうにも戦闘を避けられる装備じゃなかったので。リリが18階層に降りれば一応の装備は整えられるって言っていたので、この階層を目指していたのですが……」

 

 アイクは続けろと言う。

 

「17階層にゴライアスがちょうど生まれてしまいまして……命からがらこの階層にたどり着いたということです」

 

 17階層にいるゴライアスは此度の遠征で倒したのだが、運悪く生まれ落ちる周期に当たってしまったらしい。

 

「まだゴライアスは17階層にいるのか?」

 

「ええ、どこかのパーティーが倒していなければ恐らくは」

 

「分かった。すまないが、フィンに起きたことを伝えてきてくれないか?案内するから、着いて来てくれ。それともまだ動けないようならもう少し休んでいて構わないが」

 

「い、いえ大丈夫です。案内お願いします」

 

* * * * * * * * * *

 

 ベルをフィンの元へと案内し、フィンに事情を説明している間にリリとヴェルフと呼ばれていたベルの仲間が目を覚また。

 その頃にはすでに夕食の時間となっていたので彼らは『ロキ・ファミリア』の面々と一緒に食事を取っていた。

 そしてアイクは現在17階層に単身乗り込んでいた。先ほどベルに言われたゴライアスを倒すためである。本来なら大勢でパーティーを組んで戦ううモンスターなのだが、ゴライアスのレベルは4相当、アイクのレベルは8.一人で充分だと判断し、単身ここに乗り込んできた。

 ゴライアスは17階層に乗り込んですぐの場所にいた。アイクの足音でこちらに気が付いたのか、ゴライアスはアイクが来た咆哮を向き、両手を握り腕を振り上げた。

 その振り上げた腕をアイクがいた場所に振り下ろす。アイクは『神の恩恵』のステータスになれるためにも回避はせずにラグネルを掲げ、剣の腹でゴライアスの腕を受け止めた。

 巨大なゴライアスの攻撃を受け止めるなど本来は不可能なのだが、アイクのレベルと力のステータス、そして二神の女神から授かった加護により破損することが無く、切れ味が落ちることも無いラグネルがそれを可能としていた。

 

(……やはり『神の恩恵』は滅茶苦茶だな。こんな芸当普通なら絶対にありえんぞ)

 

 心中でそう思いながら、アイクは受け止めた腕と剣の鍔迫り合いを押し返した。

 回避されることはあっても受け止められたことは無かったゴライアス。その有り得ない事象に思わず仰け反り、動揺を隠せずにいた。

 アイクはそんな好きを見逃すはずが無い。まずは動きを止めることを最優先とし、大きく仰け反ったゴライアスの足を狙って一気に距離を詰める。

 加速とラグネルの威力、そしてアイクの力を以って振りぬかれた剣は、容易くゴライアスの右足を切断した。片足ではバランスが取れずに後ろへと倒れる。

 腕を使って上半身を何とか起こし、目を充血させアイクを睨みつける。ゴライアスはアイクに向けて渾身の右ストレートを放つ。

 しかし下半身の支えがないパンチなど見切るのも容易い。早くて威力が高いだけの攻撃は動きを見切ってしまえさえすれば十分に躱せる。

 アイクは最小限身を翻し向かってきた右腕に剣を当てて右腕に一閃の剣筋を入れる。振りぬいた時にはすでにゴライアスには右腕の感覚は無かった。そのまま空中に身を躍らせ振りぬかれた右腕を切断する。

 右半身のほとんどを欠損したゴライアスは咆哮を上げる。左半身しかまともに動かせないゴライアスには勝ち目などあるはずもない。

 しかしここで少しのイレギュラーが発生した。アイクとゴライアスが戦闘している17階層と18階層の一本道、17階層の方に何人かのパーティーが目に入った。

 何を考えたのか、戦闘中のゴライアスとアイクの方へと歩み寄って来たのだ。

 その動きを見たゴライアスは、パーティーの方へと左腕を伸ばす。覆面を被った冒険者が先頭に立ち、その腕を受け止めようとしている。しかしゴライアスの攻撃を受け止めるのはほとんど不可能だ。この場合、アイクの方が異常なわけだが。

 アイクは再び空中に身を躍らせ、そのパーティーに伸ばされた左腕を一閃、ゴライアスの腕は切断され血が大量に噴き出した。

 

「何を考えている、下がっていろ!」

 

 その一団に乱雑に言い放ち、決着を早々につけることにしたアイク。剣を回転させながら上へと放り投る。

 その剣の動きを目で追うゴライアスと後ろにいるパーティーの面々。回転している剣を空中でキャッチし、落ちてくる勢いを利用してゴライアスの胸へと剣を突き立てる。

 胸に埋まっているゴライアスの魔石を破壊し、ゴライアスは消滅した。




次の次に戦争遊戯入れると思いたい

なおアイク視点での戦争遊戯は一回か二回で終わると思うので、ヘスティア・ファミリア視点を主としたいので、アイク視点を閑話にさせていただきます

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