蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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明日は確実に投稿できませぬ

いや別に毎日投稿誓ってるわけじゃないんだけどね?


第二十三話

 

 ゴライアスとアイクとの戦闘を見たパーティーの面々は、アイクがゴライアスにとどめを刺しても呆けていた。

 再起動を果たしたのはヒュン!と空気を切る音が耳に入ってからだ。音のした方向を見ると、アイクがラグネルに着いた血を振るって落としていた。

 

「あんたらは?」

 

「いやー、すごいね君。一人でゴライアスを倒すなんてなかなかできることじゃないぜ?」

 

 帽子を被ったいかにも軽そうな男が代表してアイクの方へと歩み寄り、飄々とした態度を崩さずに話しかける。

 

「そりゃどうも。で、俺の質問の答えはどうなんだ」

 

「俺はヘルメス。一応神ってやつだ」

 

「神か……」

 

 一瞬眉を顰める。これまであった神は初見で碌な反応をされなかった。

 ロキとヘファイストスには怖がられ、フレイヤにはオッタルをけしかけられそのまま勧誘をされた。

 

「神はダンジョンには入ってはいけないんじゃなかったのか?」

 

「特例だよ特例、ギルドには黙っててくれよ?」

 

 片目を閉じ、唇に自分の指を当てながらいけしゃあしゃあと答える。それはつまりギルドの定めたルールに反しているということなのだが。

 

「君!ベル君を知らないかい!?」

 

 ツインテールに豊満な胸を持ったロリっ子がアイクの身体に自分の身体を押し当てながら問う。

 いきなりのことだったので回避ができなかったが、すぐに肩に手をやり押し返しながら、

 

「少し落ち着け。人に物事を尋ねるなら、まずは自分の身分を明かしてからにしろ。それとベルとその仲間は無事だ。今俺が所属しているファミリアにもてなされている筈だが」

 

 その答えにほっと胸を撫で下ろす。見るとそのロリっ子だけではなく一段全員がほっとしている雰囲気を醸し出していた。

 

「ああごめんよ。僕はヘスティア。『ヘスティア・ファミリア』の主神で、ベル君の主神さ」

 

(また神か……)

 

 本格的に頭痛を錯覚する。頭を押さえため息を吐くようなことはしないが、そのような行動を取ってしまいそうな状況だ。

 

「ということは、貴方は『ロキ・ファミリア』の所属ということでしょうか?今ダンジョンで人をもてなせるほどの余裕があるファミリアは『ロキ・ファミリア』だけですが」

 

「そうだが……ん?お前どこかで会ったことがあるか?」

 

 ショートパンツに薄手のシャツ、覆面を被った冒険者の方に顔を近づけるアイク。そのアイクを避けるかのようにその覆面の冒険者は一歩後ろに下がった。

 

「すいません……咄嗟のことだったのでつい……」

 

「気にするな、妖精、なんだろう?」

 

「青年君!僕たちを早くベル君の所へ案内してくれ」

 

 アイクの腕を引っ張りながら18階層日続く階段の方を指指すヘスティア。その光景は親に何かをせがんでいる子供にしか見えない。

 ため息をぐっとこらえ無言で18階層の方へと歩みを進めたアイク。ヘスティアを先頭に、その一行はアイクについて行く。

 

「……アスフィ、彼には注意をしたほうがいい」

 

「ヘルメス様?」

 

「常に動向を監視させられたらそれが一番いいんだろうけど、恐らく彼はそれを見破るだろうね。君の兜を使ってもだ」

 

 ヘルメスの一言に動揺を隠せない。『ヘルメス・ファミリア』のアスフィは発展アビリティ『神秘』を持っている数少ない冒険者で、数々の魔道具を作っている。

 その中には被ると透明になる兜があるのだが、その透明化をもってしてもそれを見破るとヘルメスは言うのだ。

 

「それに彼の剣、戦闘技術、全てが底知れない。積極的に関わらないようにしてくれ」

 

「……分かりました」

 

 その後『ロキ・ファミリア』のキャンプで食事をしていた場所へとヘスティアたちを連れて行き、アイクはこっそり合流しようとしたのだが、リヴェリアに見つかり説教されたことは言うまでもない。

 17階層でしたことも無理やり聞きだされ説教の時間が伸びたことも最早言うまでもないだろう。

 

* * * * * * * * * *

 

「お疲れーアイク。いい加減懲りないの?」

 

 少し疲れたような表情を浮かべながら食事をしている場所へと移動しているとティオナから声をかけられる。

 

「懲りるって、何にだ?」

 

「あれだけ連続でリヴェリアに説教されてて良く懲りないなーって思ってさ。言っておくけど58階層でリヴェリアが泣いてるところ、私初めて見たよ」

 

「懲りるも何もな……向こうでやっていたようなことをこっちでもやっているだけなんだがな」

 

「自分を犠牲にして一人で戦うこと?」

 

「少し違う。前へ立って、戦い続けることだ。これでも一国の軍の大将だったんだ。前へ出て戦うことは当然だと思うんだがな」

 

 普通は後方から指示を出すことが軍の総大将の仕事なのだが、彼の人望と力がなせる業なのだろう。

 

「あ、そうそう。全く関係ないんだけどね。リヴィラの町で不思議な子を見かけたんだ」

 

「不思議な子?」

 

「なんかリヴィラの町で物品の根切交渉すっごく頑張っててね。商人の方もその子にデレデレしちゃっててさ、なんか町で売られてる値段の半額位の値段で商品買ってたんだ」

 

「で、そいつはその後どうしたんだ?」

 

「なんかホクホク顔のまま19階層の方に向かっていったよ。ソロで」

 

 本当に関係ない話だった。前との会話に何もつながりが無かったが、偶にはそう言った雑談も悪くはないだろう。

 次の日にはベートが地上から解毒薬を取ってきて『ロキ・ファミリア』の遠征チームは無事地上へと帰還した。

 後日談なのだが、その後の18階層ではダンジョンに潜っていたヘスティア、もしくはヘルメスの所為なのか、黒いゴライアスが出現し騒然としたらしい。

 リヴィラの町の冒険者、ベルたちを探しに行っていた冒険者達が協力して黒いゴライアスは討伐をしたらしい。




前回の後書きでも書きましたが、次回から戦争遊戯なのですが、アイクの方の視点は一話か二話で終わると思います

その分ヘスティア・ファミリアサイドで書いていきたいと思います

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