蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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一人称視点ってあんなに難しかったっけ?ぶっちゃけ三人称視点になれっちゃってそっちじゃないと書いてて違和感がある


第二十六話~戦争遊戯③~

 

 パーティーは恙なく進んでいき、各々が食事を取ったり気になる異性とダンスに興じたりといろいろなイベントも始まった。

 ワユもダンスが始まった最初の方は先ほどのオッタルへの宣戦布告の発言と、ロキを受け止めた時の動きを見て興味を持った男神や男声冒険者、はたまた女神や女性冒険者から次々とダンスの申し込みがあった。

 クリミアにいた時からずっと傭兵をし続けてきたワユは当然ダンスの振り付けなどさっぱりだ。さらにそう言った上流階級の物事にはあまり関心や知識もないため、ダンスの誘いを素気無くあしらい続けていた。

 

「諸君、宴を楽しんでくれているかな?」

 

 食事をしたり他の冒険者と話をしていると突然声をかけられた。声をかけて来たのは先ほど前に立って話していた男神、今回の宴の主催者であるアポロンだ。

 アポロンはヘスティアやヘファイストスやロキ、ミアハとタケミカヅチなどがいる一団に近付いてきた。

 

「盛り上がっているようならば何より。こちらとしても開いた甲斐があるというものだ」

 

 そして先ほどからワユの方をちらちらと見ている。ワユも気が付かない振りをしているが、アポロンからの視線には少々うっとおしく思っている。

 

「遅くなったがヘスティア、先日は私の眷属が世話になったな」

 

「……ああ、こちらこそ」

 

「私の子は君の子に重傷を負わされた。代償を受けてもらいたい」

 

 ワユはその言葉に首を傾げる。ヘスティアとベルに聞いていた話とは食い違いがあるからだ。

 

「言いがかりだ!僕のベル君だって怪我をしたんだ。一方的に見返りを要求される謂れはないぞ!」

 

「だが私の愛しいルアンはあの日、目を背けたくなる姿で帰って来た……私の心は悲しみで砕け散ってしまいそうだった」

 

 胸に手を当てながら、まるで演劇の役者のような喋り方をするアポロン。左右に控えていた従者は泣くようなそぶりを見せ、極め付けにはアポロンの傍に近付いてくる包帯グルグル巻きの小人族が現れた。

 アポロンはその小人族に向かって「ああ、ルアン!」とさらに大げさに両手を広げ泣きつくような素振りを見せる。

 

「痛え、痛ええよぉー……」

 

 下らなさ過ぎてため息が出そうになる。ここまで下手な芝居を見せられ、何がしたいいのかさっぱり分からない。

 

「更に、先に仕掛けてきたのはそちらだと聞いている。証人も多くいる、言い逃れはできない」

 

 指をぱちんと鳴らすと控えていただろう、『アポロン・ファミリア』の眷属を始め、先ほどから宴を楽しんでいた観客が一歩前に出てくる。最初からグルだったというわけだ。

 

「待ちなさいアポロン。貴方の団員に最初に手を出したのはうちの子よ?その子だけを責めるのは筋違いじゃないかしら?」

 

「ああ、ヘファイストス。美しい友情だ。だが無理はしなくていい、君の娘がヘスティアの子を焚き付けたのは火を見るよりも明らかだ」

 

 ヘファイストスがヘスティアを庇うが、アポロンはそれを一蹴する。ヘファイストスのその行動が自分の計画を狂わせるとでも言いたいのだろう。

 

「団員を傷つけられた以上、大人しく引き下がるわけにはいかない。ファミリアの面子にも関わる……ヘスティア、どうあっても罪を認めないつもりか?」

 

「くどい!そんなもの認めるか!」

 

「ならば仕方がない、ヘスティア。君に『戦争遊戯』を申し込む!」

 

 その一言に会場中の神のほとんどが一斉に声を高らかに響かせた。

 

「うおお!マジか!」「アポロンがやらかした!」「すっげえ虐め!」

 

 会場のボルテージが上がっていく一方、聞いたことのない単語にワユは疑問を覚え、近くにいたロキに問う。

 

「ロキ、『ウォーゲーム』?って何?」

 

「なんやワユたん、知らへんの?ウォーゲーム通称『戦争遊戯』、ファミリア間の戦争や。勝った方は負けた方に対して絶対命令権を手に入れられるんや……どうしたん、ワユたん?」

 

「はぁ……また、戦争か……」

 

 ワユの纏っていた雰囲気が先程のものとは一変した。その雰囲気をアイズは見覚えがあった。

 

(あの雰囲気、アイクに似ている、気がする……気のせいかも)

 

「我々が勝ったら、ベル・クラネルを貰う」

 

「最初からそれが狙いか……!」

 

 ヘスティアとアポロンが『戦争遊戯』について話している。話しているというよりも、アポロンが一方的に捲し立てているだけであり、ヘスティアは受ける気は一切ない。

 

「それでヘスティア、受ける気は?」

 

「勿論断――」

 

「いいよ、やろうか。その『戦争遊戯』とかいう戦争を」

 

 ヘスティアが答える前にワユがヘスティアとアポロンの間に割って入り、勝手に返答してしまう。

 

「ワユ君!!」

 

「君は誰だ?ヘスティアの眷属はベル・クラネルだけだった筈だが?」

 

「あたしはワユ、最近ヘスティアに拾ってもらった新しい眷属ってやつ」

 

 ワユが前に出ると周りがざわざわと騒がしくなってくる。

 

「誰だあの子?」「馬鹿、知らないのか?」「さっきオッタルに喧嘩売ってた女の子だよ」「え?!あんな可愛い子が?」

 

「それで、アポロン……だっけ?結局やるの、やらないの?」

 

「ワユ君、少し黙っててくれ!」

 

「私の方から申し込んだんだ、私は既にやる気だが?」

 

「ならやろうか、そんな生ぬるい事じゃなくて、本物の戦争ってやつを」

 

「君は何を言って――」

 

「互いの眷属が死んでも一切文句を言わない、戦争遊戯なんて生ぬるい、本物の戦争ってやつだよ」

 

 ワユは戦争に対していいイメージなどあるわけがない。一度は祖国のクリミアがデインに落とされ、その後クリミアはアイクを大将に祀り上げデイン軍に勝利。デイン軍からクリミア王国を取り戻した。

 その後はラグズ連合とベグニオン帝国元老院との戦争、ベグニオン・ラグズ連合とデイン軍との戦争、最終的には女神アスタルテに付き従う正の使徒、ゴルドアの竜麟族。今まで数多くの死線を掻い潜り続けてきた。

 その過程でたくさんの人を殺めて来た。一本取ったら終了の手合わせではなく、相手を殺すまで終わらない。それが戦争だ。

 

「まさか戦争とか言いながら、そんな温い事は言わないよね?戦争はどちらかが全滅するまで続けられる。そんな覚悟も無くて、戦争を仕掛けてきたの?」

 

 戦争をやるというのならば、ワユは全力で敵を排除する。言外にそう伝えている。

 

「君は最近冒険者になったばかりなんだろう?そんな自信満々に言っているが、負けた時の良い訳が必要なのかい?新米冒険者風情が、神の前に出てくるべきではない」

 

「あたしが見たことのある神と言ったら世界を滅ぼす神、それに対抗する神、それだけ。下界で燻っている神なんて、今まで戦ってきた女神に比べたら全く大したことが無いね」

 

 アポロンに対して挑発をしていくワユ。その挑発を鼻で笑うアポロン他数多の神。しかし後ろにいるロキとヘファイストスは若干表情を強張らせた。

 

「良いだろう、ベル・クラネルは私が貰うから殺さないでおいてやるが、君はどやら身の程を弁える必要があるようだ。私は私の眷属が死んでも文句は言わん。詳しいルールはまた後日追って連絡させてもらう。それでいいな、ヘスティア?」

 

「良い訳がないだろう!ワユ君、すぐに撤回を――ムグッ!」

 

「ヘスティア、少し黙ってて。いいよ、その条件で。『ヘスティア・ファミリア』と『アポロン・ファミリア』の全面戦争、死んでも恨みっこなしだよ」

 

 そのままヘスティアを黙らせたまま、会場を後にするワユ。ロキとヘファイストスは何か話しかけようとしていたようだが、ワユはそれに気が付かずに会場を後にする。

 会場から出てしばらく、ヘスティアはずっと不機嫌そうに黙ったままだったが、ホームに近付き周りに誰もいないことを確認すると、

 

「ワユ君!君は勝手に何をやっているんだい?いくら君でもアポロンの所全員に敵うはずが無いじゃないか!」

 

 開口一番説教をしてきた。当然だろう。レベルがいくら高くても頭数があれば対抗できないわけではない。

 

「しかもあんな危険な条件にしちゃって、君は自分の命を何とも思っていないのかい!?」

 

「少し落ち着いてよ、ヘスティア。ホームに帰ったら、改めて自己紹介するから」

 

「うん?自己紹介?君は一体何を言っているんだい?」

 

 ヘスティアの疑問にあえて何も答えずに、ホームへと歩みを続けるワユ。今は何も答えないと判断したワユも、ワユの隣に立って歩く。

 

「ただいまー」「ただいま……」

 

 ホームに着いていつも通りに挨拶をするワユと、意気消沈といった様子の様子のヘスティア。そのヘスティアを見てベルは一抹の不安に駆られる。

 

「神様、何かあったんですか……?」

 

「ごめんよ、ベル君。アポロンの所と『戦争遊戯』をすることになってしまった……」

 

「『戦争遊戯』ってあの『戦争遊戯』ですよね?一体なぜ?」

 

 ヘスティアは宴であったことをベルに話した。話を聞いていくうちにベルは表情を暗くしていく。

 

「すいません、神様……僕が喧嘩なんてしなければ……」

 

「二人とも何を落ち込んでいるの?勝てばいいんだよ勝てば」

 

「君は、気軽にそんなこと言っているけど、総力戦になったら数の暴力で押し負けるんだぞ!?それなのに、殺されても文句を言わないなんて条件付けて!正気かい!?」

 

「だから落ち着いてって、レベル云々の前に、あたしがあんな有象無象に負ける筈が無いじゃん」

 

「そう言えば、さっき自己紹介がどうこう言っていたけどあれって一体……?」

 

 ワユはヘスティアに聞かれたことに呆気からんと答える。しかしワユの正体を聞いたベルは開いた口が塞がらず、ヘスティアは立ったまま気を失った。

 

「あたしはワユ。今は『ヘスティア・ファミリア』でオラリオで一番レベルが高いレベル7。本当の正体はテリウス大陸のクリミア王国、グレイル傭兵団のワユ。グレイル傭兵団団長のアイクの永遠の宿敵!女神アスタルテを倒した戦いにも参加していたんだ!」




スニーカー文庫の『如月さんカミングアウト』っていう小説が今結構気になってます

今まではアニメ化してないラノベを買おうとは全く思っていなかったのですが『アサシンズプライド』っていうラノベ読んでからそういう抵抗なくなったな

でも今月他に魔法使いの嫁と魔法科高校の劣等生の新刊なのよね……




魔法科の方は少々お待ちください、話が思いついたら書きます

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