蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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結局買っちまったよ

今月は完全に金欠です辛いです新井です


第二十七話~戦争遊戯④~

「で、さっきのはどういう事だい?」

 

「どういうことも何も、全部言ったとおりだよ。あたしは気が付いたらダンジョンにいたんだ」

 

「どうしてそんな大事なことを黙っていたんだい?」

 

「どうしても何も、最初に言及しなかったのはヘスティアじゃない?」

 

「むぐぐ……そう言われたら何も言い返せないじゃないか……」

 

 ワユは現在『ヘスティア・ファミリア』のホームで、先ほどの発言について言及されている。ワユはこの世界の住人ではなかったこと、気が付いたらダンジョンにいたこと、そして向こうの世界、テリウス大陸で起こった戦争と世界を救うための抗争の話を。

 

「ワユさん、その白銀の剣って……」

 

「ああ、これ?神剣エタルド、古の対戦でオルティナが振るっていた二刀のうちの一刀。神剣ラグネルとは対になる白銀の両手剣」

 

「古の対戦……?って何ですか?」

 

「古の対戦ていうのは女神アスタルテと女神ユンヌの抗争。そこで女神アスタルテは三人の戦士に自らの加護を与えて女神ユンヌの用意した軍勢と戦ったんだ」

 

「そんな話初めて聞きました……お伽噺では語られてなかった話ですか?」

 

「お伽噺か……」

 

「ああ、すいません!ワユさんにとっては現実の話なんでしたね……」

 

「まあいいや、それで古の対戦はあたしが生まれるうんと前、約3000年前にあった対戦だからね。そのお伽噺ってやつは大将の活躍を書いたって話なんでしょ?だったらそれが細かく語られて無くてもしょうがないよ」

 

「……嘘は吐いて無いみたいだね。じゃあ君がレベル7なのは?」

 

「こっちの基準はよく分からないけど、この世界の冒険者が潜りえない死線をいくつも掻い潜って来たんだ。たしか、偉業を認められたらレベルが上がるんでしょ?」

 

 ヘスティアとベルは首肯することによってその問いに答える。

 

「あたしが直接為した偉業じゃないけど、それでも国を救ったり、世界を救っている戦いに参加していたんだ。最終的な止めは基本的に大将だったけど、それでもそれは偉業ってことにはならない?」

 

 ヘスティアは顎に指を当て考えている仕草を取る。おいてあったグラスの水を一口飲み、考えを纏めているようだ。

 

「君みたいな子は前例はないけど、『神の恩恵』を与える前からダンジョンのモンスターを難なく倒したり、その……世界を救ったっていうのが『神の恩恵』を与えたことによって数値として現れた……てことなのかな?」

 

 ワユとベルに確認を取るがワユは肩をすくめ、ベルは少し考えたところで「すいません、分からないです……」と弱弱しく答えた。

 

「君の話が本当だとして、じゃあ何故あそこでアポロンをあんなに挑発したんだい?それも今回の『戦争遊戯』の条件として殺しても文句を言わないなんて危険な条件まで付けて」

 

 ヘスティアが発した今回の『戦争遊戯』の条件に、ベルは思わず目を見開き絶句していた。そのベルを見向きもしないで、ワユは淡々と答える。

 

「この『戦争遊戯』を最後の『戦争遊戯』にしたい。戦争『遊戯』が付くとはいえ、戦争は戦争だ。戦争を経験してきたものから言わせてもらうけど、戦争なんて本当に碌なものじゃない」

 

 ワユは水を口に含み、喉を湿らせ説明を再開させた。

 

「戦争は殺し合いだ。どちらかの軍の大将が負けを認めるか、敵軍を殲滅させ自分たちの方が上だと相手に示さない限り、戦闘は終わらない。そんな碌でもないこと、今回で終わらせる。下界の人々は神々の玩具じゃない、それを神々に知らしめる。『あたしたちは、神なんかに命令されるだけの駒じゃない!』って」

 

「……天界の神々を全否定、か……流石は世界を救った勇者の永遠の宿敵、とでも言うべきかな……」

 

 肩をすくめ、若干の諦めと呆れを含めた話し方でワユの意見を聞き入れるヘスティア。ベルの方はあまりの規模の大きい話に着いて行けなくなっているようだ。

 

「……それが全てかい?まだ何か、目的があるんじゃないのかい?」

 

「うーん……頭を使うのあんまり得意じゃないし、説明とかあんまり好きじゃないんだけど」

 

 そう言いながらもベルの方を真っすぐに見据え、話し始める。

 

「ベルの成長の速さはは一般の冒険者の比じゃないくらい早いんでしょ?」

 

 ヘスティアは首を縦に振り、視線で続けてと言う。

 

「今回のアポロンだけじゃなくて、成長が早いベルにはこれからも色んな神からちょっかいを出されると思う。そんな神たちに対する宣戦布告?みたいなものかな……」

 

「宣戦布告、ですか?」

 

「『ベル・クラネル』が欲しければ、あたしたち『ヘスティア・ファミリア』を正々堂々と屈服させてからにしろ!っていうね」

 

「で、現実的な話、今回の『戦争遊戯』勝てそうなのかい?数の暴力で一気に押し切られたら、どうしようもないと思うけど?」

 

「え?簡単じゃん、あたしが全員倒せば勝ち……いや、あっちの大将はベルに倒してもらおうかな」

 

「『アポロン・ファミリア』の大将って……ヒュアキントスさんですか!?無理無理、無理ですよ!相手はレベル3、僕はレベル2。レベルが一つ違えば勝てないのは常識じゃないですか!?」

 

「勝てないからって最初から諦める?悪いけど、あたしそういうの一番嫌いなんだ。大将に何回も挑んで、何回も死にかけても、あたしは一回も諦めようと思ったことは無いよ?」

 

 それに――と続ける。

 

「それに大将がこの世界に居たら、多分あたしよりもレベルが上だろうね。それでもこの世界でもしも仮に大将に会えたら、あたしは性懲りもなく挑み続けるよ。ねぇベル、ベルはどうやってレベル2になったんだっけ?」

 

「それは……」

 

「レベル1のベルはレベル2のミノタウロスを一騎打ちで下したんでしょ?レベル差なんて、どうにでもなるっていうのはベルがすでに実証してくれてるじゃん!」

 

 ワユの発言にベルは目を見開き、瞳に闘志を宿し始めた。

 

「各上には各上に対する戦い方っていうのもある。それとも、一発殴られただけで勝てないって諦める?」

 

「そんなの嫌です!」

 

「じゃあこれから『戦争遊戯』まで特訓だね。目標は……あたしに一撃でも入れること、でどう?」

 

 うぐっ!と息が詰まるが、ワユはにやりと笑いベルに対して言い放った。

 

「それとも、為す術も無く一方的にやられたい?」

 

 首をぶんぶんと横に振る。

 

「じゃあ明日から、特訓だね。あたしも暫くダンジョン潜らないから、マンツーマンで頑張ろっか」

 

 その光景をまるで母親のような慈愛を込めた表情で見守るヘスティア。この時点でヘスティアは、負ける未来は見えていなかった。

 

* * * * * * * * * *

 

 ヘスティア、というよりもワユがアポロンに対して宣戦布告してから三日が経ち、此度の『戦争遊戯』の詳細なルールが公表された。

 

・戦闘形式は攻城戦、『ヘスティア・ファミリア』側が『アポロン・ファミリア』側が守る玉座を制圧することが勝利条件だ。

・使う武器、魔法、スキルについては一切の制限を設けない。

・あまりにも人数差が有るため、『ヘスティア・ファミリア』側には助っ人を一人認めるというもの。ただし都市外の冒険者に限るというもの。

・他のファミリアからの改宗された眷属は参加可能

・今回の『戦争遊戯』で死者が出ても、一切の文句、抗議を行わないこと

 

 これが今回の『戦争遊戯』のルールだ。最後のルールに関して、ギルド側からはかなりの反対の意見が上がったようだが、双方の主神がそのルールで構わないと言っている以上、これ以上の抗議は聞き入れてもらえないだろう。

 二つ目のルールはかなり重要であろう。ギルド側からの支給品ではなく、普段自分が使っている武器をそのまま使えるというのはかなり大きい。つまりワユの神剣やベルのヘファイストスが打ったナイフ、魔剣なども使い放題ということだ。

 現在ワユとベルの二人はダンジョンの18階層の広場にいる。オラリオ市街の人目が付かない広場で特訓を行ってもよかったのだが、オラリオで完全に人目が付かない場所などほとんどない。特訓はほぼ一日中ぶっ通しで行われるため、『アポロン・ファミリア』の目が届かないダンジョンでの特訓の方が適していると思ったのだ。

 

「じゃあもう一回、今日はこれができるまでは地上に帰らないからね」

 

「はい!」

 

 そう言ってベルは右手に光の粒子が集まるように意識を集中させる。

 ベルがレベル2になって新しく会得したスキル、【英雄願望】。チャージによる火力が上がるスキルだ。ワユはこのスキルをどんな状態でも発動できるように特訓しているのだが……

 

「出てこないね……」

 

「すいません……」

 

 ベルが以前このスキルを使ったときはヴェルフとリリとダンジョンに潜っている時にインファントドラゴンが出てきた時だ。そして次に使ったのは18階層での黒いゴライアスとの戦闘時。

 

「うーん……今までそのスキルを使ったときの状況って何か共通点とかあるかな……」

 

 顎に手を当て、うーんと頭を捻るワユ。ベルも同じくこの時の共通点を探そうとして頭を捻る。

 あまり頭が良くない二人が頭を捻って考えたところで早々に進展するとは思わないのだが、今回はベルが奇跡的にその時の共通点に気が付いた。

 

「一回目はヴェルフとリリを守りたかった。二回目は皆を守りたかったってことですかね……」

 

「ねぇベル、今どんなこと考えてスキルを使おうとしてた?」

 

「どんなことを考えて、ですか?特に何も考えずに、スキルが発動するようにひたすら神経を集中させてましたけど……」

 

「じゃあ皆を守りたいって全力で思いながらやってみて。それでできなかったらまた別の方法を考えよう」

 

 アドバイス通り、再び意識を集中させる。思い描くのは皆を守りたいという純粋な思いだけだ。

 すると光の粒子は少しづつだが右手に集まって来た。それを見たワユは声を上げる。

 

「そのまま魔法を発動して!」

 

「【ファイアボルト】!」

 

 壁に向かってベルは魔法を放つ。雷を纏った蒼き炎は通常使う魔法よりも多少威力が上がっており、魔法が当たった壁は少しのひびが入り、パラパラと石が落ちてくる。

 

「ワユさん!どうでしたか?」

 

「確かにいつもより威力は上がってたけど、まだ行けるでしょ?」

 

「は、はい……」

 

「まあでも『戦争遊戯』までに任意のタイミングでそのスキルを発動できるようにしておけばいいから、第一関門はクリアかな。じゃあ次は、実際に剣を打ち合ってみようか?」




なんか今更なんですが、アイク視点の戦争遊戯ってまだ上げるべきじゃなかった気がしてきた

少なくともネタバレが嫌いな人はまだ読むべきではありませんね、非常に申し訳なく思っています
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