蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:クッペ
89%の攻撃外して74%の攻撃喰らうとかザラすぎて辛すぎるだろ……
結局あれから一週間、ダンジョンの18階層にワユとベルは潜りっぱなしだった。
ワユは基本的に手合わせや特訓でも手加減をしないため、基本的に一撃でベルが気絶してしまい、帰るに帰れなかったのだ。
しかしその一週間、何もベルが気絶するだけで終わったわけではない。ベルはベルで【英雄願望】の任意発動は大体様になって来たし、各上であるワユとの戦いでは少しずつだが動きを読めるようになってきている。ただ動きを読めてもワユのステータスの関係上捉えられるわけではないのだが、これなら一つレベルが上のヒュアキントスの動きを読み捉えることは不可能ではないのだろう。
18階層から地上に戻るまでのモンスターは殆どベルが倒した。ワユが倒そうともしたのだが、僅かでもベルの経験値にする方が得策だと判断した結果だ。勿論途中で魔石を拾うことも忘れない。
ダンジョンから地上へと帰還し、ベルのステータスを更新するためにワユとベルはヘスティア・ファミリアのホームである廃教会へと向かって歩みを進めていた。やがて廃教会に、いや、廃教会があった場所へと到着したベルとワユは驚きの表情を隠せずにいた。
「これは、一体……誰、が……」
呆然とした表情のままベルがぽつぽつと呟く。この廃教会での暮らしは決して楽ではなかったが、それでもここはベルが冒険者として第一歩を踏み出すことができた場所であり、主神であるヘスティアとの思い出が詰まった大切な場所だった。
しかし今の廃教会は入り口は瓦礫で塞がれており、ボロボロだった外見は見るも無残な状態だ。
「ねぇベル、こんなことするやつらに心当たりはある?」
ワユはワユで珍しく怒気をにじませた声を発していた。
この廃教会はグレイル傭兵団の砦を彷彿とさせる外見で、中のオンボロ具合も相まってかなり住み心地がよく、ダンジョンに暫く潜ったら帰ってこないとはいえ気に入っていた場所だった。
それがダンジョンで特訓をして帰ってきたら住める状況じゃなくなっていたのだ。ここで二人が暴れ出さなかっただけでも感謝するべきだろう。
「いえ……分かりません、ですが、『アポロン・ファミリア』の可能性が高いのではないでしょうか……?」
「『戦争遊戯』までは後一週間くらいあるけど、その前に喧嘩を売って来たってことかな?」
「恐らくは……」
戦争をするにはあらかじめ宣戦布告が必要だ。仮に宣戦布告をせずに戦争を始めようものならば、戦争に勝ってもその国は他国からの糾弾、もしくは他国との新たな戦争は免れないだろう。
今回の『アポロン・ファミリア』の狙いは恐らく先にファミリアの団員を戦闘不能にさせての不戦勝狙いなのだろう。
確かに戦争では『勝てば官軍負ければ賊軍』という言葉があるように、勝った方が正しいというものだ。だからそのための手段を選ばない、これも戦術と言えば戦術だ。少々常識に欠けるが。
この時点でワユは『戦争遊戯』で相手に慈悲を持つことを辞めた。視界に入った敵、自分に向かってきた敵、降伏を宣告してくる敵であっても容赦なく切り捨てる。そう決めた瞬間であった。
「神様は、神様はどこですか?無事なんですか!?」
「落ち着いてベル。その恩恵は神が死なない限り着いて回るものでしょ?あたしたちの恩恵はまだ失われてないからヘスティアは無事だよ、安心して。どこにいるかまでは分からないけど……とりあえず、ヘスティアが仲が良かった神たちを訪ねて回ろう。何か知ってる神もいるかもしれないよ?」
ワユの言葉に多少の落ち着きを取り戻すベル。ただ動揺は抜けきっておらず、目の焦点も虚ろなままだ。たとえ無事だと分かってはいても、自分の目で確認しない限り不安なのだろう。
* * * * * * * * * *
ヘスティアが現在どうしているかは想定していたよりも早くどうにかなった。
とりあえず手近な『ミアハ・ファミリア』に向かい、主神であるミアハ、眷属のナァーザに話を聞いたところ、現在は格安の宿を取って難を逃れているらしい。
そして『ヘスティア・ファミリア』のホームを襲撃してきたのはやはり『アポロン・ファミリア』の眷属で、その場に居合わせていた『ヘファイストス・ファミリア』のヴェルフと『タケミカヅチ・ファミリア』のヤマト・命、騒ぎを聞きつけて廃教会へと向かったナァーザによってヘスティアは何とか逃がしたらしい。
さらにワユとベルがいないことを知ると、それまでに行っていた抗争を早々に切り上げ帰って行ったらしい。やはり狙いはワユとベルの戦闘不能による不戦勝だったようだ。
「これが私の知っている情報だ。私の所から此度の『戦争遊戯』の援軍を出せないこと、本当に申し訳ない」
ミアハが知っている情報をワユとベルに伝えた後、ミアハは何故か頭を下げて来た。確かに今回の『戦争遊戯』では他ファミリアから改宗した眷属は戦えるが、そのルールにはそもそもワユは全く期待していなかった。
そして神に頭を下げられている状況に、ベルは慌てふためく一方だった。
「ミアハ様!?頭を上げて下さい。寧ろこちらがお礼を言わなければなりません、神様を助けてくれてありがとうございました」
「援軍に行けなくて、本当にごめん……」
「謝らなくてもいいよ、ナァーザ。あたしは『アポロン・ファミリア』に対して慈悲は与えない。例えあっちの眷属が望んでやったことじゃなくても、あたしに喧嘩を売ったらどうなるか、それを今回の『戦争遊戯』でたっぷりと教え込んであげることにしたから」
言外に敵は皆殺しと言っている。神格者であるミアハも、ワユの迫力には息を呑み何も言うことができなかった。
「とりあえずありがとう、ミアハ、ナァーザ。とりあえずこれはお礼、後でギルドなり、どっかで換金してきてね」
ドサッ!と置かれた革袋の中をのぞきギョっとするミアハとナァーザ。そしてその革袋をワユたちに返そうとするが、ワユはそれを頑として受け取ろうとしない。
「あたしは元は傭兵やっててね、情報っていうのはすっごく価値があるものだって知ってる。だからそれは今回の情報量として受け取って、あんまり高くなくて申し訳ないけど」
「そんなことは無い、ならばありがたくいただこう。今度また店に来ると言い、サービスしよう」
隣のナァーザも珍しく首を縦に振っている。しかしワユはその言葉に苦笑を浮かべる。「それじゃ意味ないじゃん……」と。
『ミアハ・ファミリア』を後にしたベルとワユはミアハが教えてくれた宿屋へと向かっていた。
宿屋に到着し、カウンターにいる宿主にヘスティアがいるかどうかを確認し、居ることが確認された。
宿主に言われた部屋に到着し、ベルがその部屋をノックする。中から「誰だい?」と反応があり、ベルは泣きそうに泣きながらも「ベルです、神様」と返事をした。
ドタドタと床をける音が聞こえ、ドアがバン!と勢いを以って開かれる。ドアから出てきたのは見慣れた主神の姿だ。
部屋から出て来たヘスティアはベルに抱き着き、べルは突然のことに顔を紅潮させながら狼狽えていた。
「あ、あの、神様!?」
「ベル君、ベル君、ベル君!ごめんね、ホーム滅茶苦茶にされちゃって……」
「謝らないでください、神様。僕の方こそ、神様が危険なときに傍にいられなくてごめんなさい……」
「ベル君……」
このままだと話が進まない。そう判断したワユはヘスティアの頭を剣の腹で軽く小突き、現実へと引き戻した。
「痛い!ワユ君、いきなり何するのさ!せっかく僕がベル君と感動の対面を果たしたというのに!」
「それは後で二人っきりの時にでも存分に楽しんで、それよりも部屋にいる人たちは誰?」
部屋には赤髪の青年、黒髪を結んだ少女、覆面を被った妖精、小人族の少女がいた。
「ふっふっふ……聞いて驚け。彼らは今回、僕たちに手を貸してくれる援軍さ!」
今回はそんなに長くないかな
個人的見解何ですが、千文字ちょっとだと短すぎて読む気が起こらない、6000~10000文字近くあると長すぎて疲れる
だから俺は3000~4,000字くらいで気軽に読める量を書いているつもりです。
ネットに投稿されてる小説とかってちょっと空いた時間に気軽に読めるっていうのが最大の利点だと思う
なお駄文wwwとか思ったやつ、正解