蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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FEHのサービス開始から約一年、ようやく、ようやく!リーフさん実装!!

おめでとうございます、と言っても俺はFEHやってないからどうでもいいのですが
何ならCV.だけしか見ない


第三十話~戦争遊戯⑦~

 

 場所はバベル30階層、神会が開かれる会議室。そこでは数多の神たちが現在行われている『戦争遊戯』の行方を見守っている。ロキやフレイヤなどの大派閥は自分のホームで見ているものもいるが。

 そこには今回の『戦争遊戯』の対戦ファミリアであるアポロン、ヘスティアの両名の姿も見られる。

 開始早々、覆面を被った妖精とワユが同時に飛び出す。ワユの敏捷の方が妖精を上回っているため、彼女らを待ち伏せしていた『アポロン・ファミリア』の眷属と先に対面するのはワユだ。

 待ち伏せしていた『アポロン・ファミリア』の眷属がワユが近付くと同時、五人で一斉に襲い掛かる。しかしワユはスピードを緩めずにそのまま剣を抜き、剣を一閃。実はこの時五回剣を振るっているのだが、神々やこれを見ている冒険者には剣を抜いて振るったようにしか見えないだろう。それだけワユの剣速は常軌を逸していた。

 そしてワユは、切り終えたと同時、口元を吊り上げていた。

 

「おい、ヘスティア!彼女を止めろ!今すぐにだ!」

 

 今回の『戦争遊戯』では互いの眷属が死んでも文句は一切受け付けないルールとなっている。アポロンが宴の場で聞いた話では『最近眷属になった』と聞いていた。

 つまりアポロンはワユがアポロンの眷属を殺せるだけの技量、実力を持っていないと高を括っていた、慢心していたということだ。

 しかしアポロンを責めることなかれ、あの場にいた神々全員がワユは駆け出し冒険者としか思っていなかったのだ。

 神たちはあそこで異変を疑うべきだった。『何故駆け出し冒険者であるはずの彼女が、あのような条件を提示したのだろうか?』と。

 

「今回のルール上、殺されても文句は言えないはずだけど?」

 

 ヘスティアが冷酷ともいえる表情、声音でそう答える。ヘスティア自身もワユが実際に戦っているところをこの目で見たことは一切ないし、殺したうえで口元を吊り上げるような残忍な性格だとは思っていなかった。

 ワユの正体を聞いた時から、殺すことに躊躇するような人物であることは容易に想像がついた。しかし殺しそのものを楽しむような性格であるとは思わなかった。

 実際には殺しを楽しんでいるわけではなく、戦場の空気に懐かしさを覚えているだけなのだが、それをこの場にいる神々が知る術はない。

 

「だからと言って本当に殺るとは思うわけないだろう!いいから彼女を止めろ!これ以上被害が拡大する前に――」

 

「うるさいぞ、アポロン!」「お前が受け入れたルールだろうが、黙ってみていろ!」「それともお前は自分の所の眷属を信じられないのか?」

 

 次々とアポロンを糾弾する声が上がり、ぐぅッ!と黙らざるを得ないアポロン。

 だがアポロンを糾弾した神たちもこの『戦争遊戯』はこのままでは終わらないという確信、『アポロン・ファミリア』の全滅も視野に入れて見なければならないと決意を新たにした。

 

* * * * * * * * * *

 

 城へと向かう途中に起こった戦闘は最初の一回きり、つまり彼らは様子見、もしくは捨て駒だったのだろう。城に近付くと城壁から矢や魔法が飛んでくる。その矢や魔法を切り落とす、躱すなどしてリューの到着までの時間を稼いでいる。

 

「すいません、ワユさん。お待たせしてしまいました」

 

「ううん、じゃあ、作戦通りに」

 

 二人は布にくるまれ、背負った剣を表にさらす。

 『クロッゾの魔剣』、ヴェルフの家のクロッゾ家のものが打てる無慈悲な魔剣。ヴェルフの父親や祖父は魔剣を打てないが、なぜかヴェルフには打てるのだという。

 その魔剣を作ることを、ヴェルフは酷く嫌がっていた。魔剣は使い捨ての道具だ。武具は己の半身だと思っているヴェルフからしたら、魔剣というものは自分の意義に反するものだ。

 その協力無慈悲な魔剣は人を駄目にする。だから魔剣を打ちたがらなかったヴェルフだったが、今回の戦争を以って仲間と意地を天秤にかけることを辞め、仲間のために限り魔剣を打つと決めた。

 今回の戦争で準備できた魔剣は二振り、この二振りの魔剣で行おうとしていることは城落とし、『クロッゾの魔剣』を以って城を落とす、あわよくば敵将の撃破だ。

 これで城を落とせなかったらワユとリューが城へ乗り込み、ヒュアキントス以外の敵を殲滅、ベルとヒュアキントスの一騎打ちを演出するというものだ。

 

「……妖精の私がこの魔剣を使うことになるとは……」

 

「リュー、準備は良い?」

 

「……はい、いつでも」

 

 二人はそれぞれ魔剣を振りかぶり、城に向かって全力で振るった。

 二人の魔剣からは巨大な炎が生み出され、二つの炎は重なり合い、城壁へとぶつかる。

 衝撃に備え、ワユとリューは地へと伏せ城の行方を見守った。

 やがて煙が晴れ、城の様子を見る。しかし城はいまだその姿を保ったままで、破壊されるまでには至らなかった。

 

「……駄目だったね」

 

「まぁ破壊できなかった場合は私たちで殲滅ですから、結果は変わらないかと」

 

「ワユさん、リューさん!」

 

「無事ですか?」

 

 遅れて飛び出したベルたちが合流する。途中で戦闘が行われた形跡は無く、皆が皆まだ無傷だ。

 

「うーん……予定よりも合流が早くなっちゃったね……ベルたちはその辺で隠れてて、あたしたちが城の中にいる兵は粗方片付けてくるから」

 

「はい、お気をつけて」

 

「城壁から打ってきた魔法とか矢とかはそっちで頑張って躱してね」

 

 一言注意を促し、ワユとリューは城に正面から堂々と乗り込む。

 先ほどの爆撃で多少の陣形に乱れがあったようだが、こちらがベルと合流して少し話しているうちに、ある程度の陣形は固まったようだ。

 前衛には盾を構えた冒険者たちが壁を作り、後ろでは魔法の詠唱が行われている。

 ワユとリューは即座に突っ込み、ワユは盾なんてお構いなしとエタルドを振るう。エタルドを防いだ盾は一刀両断され、即座にリューが盾持ちの前衛に飛び蹴り、小太刀による斬撃など浴びせる。

 ワユはリューが前衛を相手している間に、後衛にいた魔導士たちに切りかかる。仮に並行詠唱ができるものが居れば魔法を詠唱をしたまま、ワユの攻撃を捌けたかもしれないが、この場に並行詠唱ができる程の魔導士はいなかったようだ。並行詠唱ができたとしてもワユの剣戟を防ぐことなど彼らには不可能だが。

 魔導士たちは為す術も無くワユの剣を食らう。加減など全く考慮しない剣戟は、一撃で魔導士たちの命を刈り取った。

 リューの方も前衛の撃破が終わったことを確認し、階段を上がっていく。

 階段を上ったところでリューと別行動を取り、殲滅の効率化を図る。

 次の階に続く階段にたどり着くまでの全ての部屋を開け、兵がいないかどうかを確認しながら進軍しているので、ペースはかなりゆっくりだ。

 寝室らしき部屋に入ると同時、部屋の中から矢が飛んできた。突然の不意打ちにもかかわらず、前に転がりながら部屋へと侵入、矢を放って隙だらけの兵に向けて斬撃を飛ばす。果敢にも槍やナイフを抜いてワユに挑んでくるが、殆どその場を動かずにその攻撃を躱し、すれ違いざまに剣を振るう。

 

「うう……だから降伏しようって言ったのに……」

 

 そんな呟きが部屋の隅から聞こえて来た。一人の少女がうずくまりながら、完全に戦意を喪失していた。

 その少女の元に近付き、エタルドを振り上げる。「ひぃっ!」という小さな悲鳴と共にさらに縮こまる。

 流石に戦意を喪失している敵を殺すことは忍びない、剣の腹で後頭部を殴り気を失わせる。

 その後も全ての部屋を回り、小競り合いを繰り広げながら玉座があるであろう最上階に到着する。

 部屋の前では既にリューが待機しており、ワユに気が付くと近づいてくる。

 

「片付きましたか?って、聞くまでもない事ですね……」

 

 ワユは全身に返り血を浴びており、剣からも大量の血が滴っている。

 

「そっちも済んだ?」

 

「ええ、滞りなく」

 

「そっか、じゃあ開けるよ」

 

 ワユは扉に手を置き、扉を開く。玉座に座っている敵軍の大将、その傍に控えている二人の冒険者。

 

「君が『アポロン・ファミリア』大将のヒュアキントスだよね?」

 

「そうだ、皆は無事か?」

 

「さあ?運が良ければ生きてるんじゃないの?」

 

 もちろんワユを相手取った『アポロン・ファミリア』の眷属は一人を残して全滅だが、リューが相手取った眷属の方はワユには分からない。

 

「一、二、三……リュー、行くよ」

 

 ヒュアキントスたちに背を向け、部屋を出て行こうとするワユとリュー。

 ヒュアキントスの傍に控えていた一人がワユたちに向かって無謀にも突貫してくる。ワユとリューはそちらを見向きもせずただ一歩横にずれる。

 すれ違いざまにリューが小太刀の峰で一撃を加える。手加減された一撃は意識を刈り取ることも無く、ただその場に蹲るだけだ。

 

「私たちを殺さないのか?」

 

「殺したいのは山々だけど、君たちを倒すのはうちの大将とその仲間たちだから」

 

* * * * * * * * * *

 

「ベル、ヴェルフ、命、リリ、お待たせ」

 

「ワユ殿、その血は……」

 

「ああ、これ全部返り血だから。あたしは一撃も貰ってないよ」

 

 その一言にほっとする。そして三人は意識を引き締める。

 

「後は玉座に残っている敵軍の大将、その傍に二人控えてたから一人が一人づつ倒せば私たちの勝利です」

 

 リューの言葉にうなずく三人、各々が武器を手に取り、玉座の間がある最上階を見据える。

 

「敵将のヒュアキントスはレベル3です。クラネルさん、油断なさらないで下さい」

 

「分かってます、リューさん」

 

「ベル、各上に対する戦い方、しっかり覚えてるよね?」

 

「ええ、大丈夫ですワユさん。では、行ってきます!」

 

「ご武運を」

 

 ワユとリューとリリがその場に残り、三人が城に入っていくのを確認する。

 

「じゃあリリ、リリの作戦も分かってるよね?」

 

「あのぉ……本当に大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫、場所は二階の寝室、そこで一人気絶してるから……」

 

 ワユは事前に練っていた作戦をリリに伝える。なお作戦を考えたのはワユではなくリューだ。

 




中途半端ですがここまで、恐らく次回で戦争遊戯自体は終わることでしょう

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