蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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先に言っておきますが、戦闘理論は恐らく全く正しくないかと思います

この作品の中で行われている戦闘は滅茶苦茶です、ぶっちゃけ上段切りとか袈裟切りとかそれっぽいこと書いてればそれっぽい戦闘シーンに仕上がりますから

今回はそれに拍車を駆けて絶対におかしいこと言ってますが『お前戦闘理論分かってなさすぎwww』とか『戦闘シーン下手過ぎ死ねや』とか『一辺死んで馬鹿治せ、或いは馬鹿でいいから一辺死ね』とか言われると泣くのでそう言った感想を書かないでください

……振りじゃねえからな!?


第三十一話~戦争遊戯⑧~

「……ワユさん」

 

「ん?何、リュー」

 

「クラネルさんたちは、あちらの団長に勝てますでしょうか?」

 

「さぁ?勝つ確率を上げるための特訓はしたけど、絶対の勝ちなんて有り得ないからね。まあベルが持ってる刀はあたしが渡した武器だから、結構いい切れ味はあるけど」

 

「そちらの剣は渡さなかったのですか?あなたは自分の使う武器にそこまでのこだわりは無いのでしょう?」

 

 リューの質問にワユはエタルドをリューに差し出すことで答える。リューが何事かと思いワユの方を見る。

 もう一度リューに向けて突きだし、持ってみろと催促する。

 リューは何も考えずに受け取り、ワユがエタルドから手を放す。それだけでリューはエタルドを持っていられずに、地面に落としてしまう。

 

「……この剣は一体何なんですか?レベル4の私が持てない剣なんて……」

 

「残念だけど、この剣はそんな単純な腕力だけで扱える剣じゃなくて、十全に使いこなすためにはこの剣に認めて貰わなくちゃいけないんだ」

 

「剣に認められる……?」

 

「そ、もっと言えば『剣が使い手を選ぶ』ってこと。剣をずっと使い続ければ一応、エタルドも力を貸してくれはするけど、エタルドの力を引き出すためには、この剣に選ばれる必要があるんだ」

 

「剣に選ばれる、ですか?」

 

「そ、もう一本のラグネルはうちの大将が選ばれたんだ。何でか知らないんだけど、エタルドにあたしが選ばれてね……」

 

「まあいいでしょう、これでクラネルさんにその剣を渡さなかった理由が分かりました。それで、勝算はどの程度なのでしょうか?」

 

「4:6であっちが勝つんじゃないかな?まあ勝てる確率はそれなりにあるけど、それでも勝てたらラッキー程度に考えておけばいいんじゃない?」

 

「それでいいんですか……?」

 

「この戦争のこっちの敗北条件は特に提示されてなかったけど、順当に考えてこっちが全滅したらでいいんじゃないかな?勝つだけなら、あたしかリューで全然構わない訳だしね」

 

「まあそうですが、なら尚更私たちが倒せばよかったのでは」

 

「あれ?リューってこの茶番が始まった理由知らなかったっけ?」

 

「神アポロンがクラネルさんを欲したからでしょう?」

 

「そうなんだけど、この茶番が始まる前、『アポロン・ファミリア』の眷属がうちの神様馬鹿にしたらしくてね、それで酒屋でベルがあっちの眷属に殴りかかったとかなんとか。その時にベルがあっちの大将に殴られてね。要はベル、一回あっちの大将に負けてるんだ」

 

「そうなんですね」

 

「そ、だから今回のこの『戦争遊戯』っていう舞台で借りを返したいんだって」

 

* * * * * * * * * *

 

 ベル、ヴェルフ、命の三人は玉座の魔へと足を進めていた。通った道がワユが『アポロン・ファミリア』の眷属を倒し続けてきた道なので、壁や床が血で赤黒く染まっていた。

 玉座の魔の扉に到着し、ベルを先頭に扉を開ける。開けた瞬間の不意打ちなどは無く、『アポロン・ファミリア』の大将のヒュアキントスが玉座に腰掛け、両隣には二人の眷属が控えていた。何故か片方の眷属は痛みを我慢するかのように若干顔を顰めているが。

 

「来たか、ベル・クラネル。貴様のファミリアの精鋭一人に我が『アポロン・ファミリア』が文字通り壊滅させられようとは……仮に貴様に勝ったとて、此度の『戦争遊戯』は我らに勝ち目はないだろうな」

 

「……降参しますか?」

 

「冗談を、たとえこの『戦争遊戯』に敗れようとも、貴様は倒す。そうでなくては、私のプライドが保たん」

 

「そうですか……では、始めますか」

 

 背中に背負った刀を鞘ごと抜き、鞘から刀をだす。鞘を放り投げ構える。後ろに立っているヴェルフと命も武器を構え、臨戦態勢に入る。

 ヒュアキントスたちもそれぞれが武器を構える。ヒュアキントスは大剣を、後ろの二人はそれぞれ槍と弓矢を構える。

 槍を持った猫人が最初に動く、ベルに向けて突き一閃。ベルと猫人の間に命が割り込み、槍を刀で弾き弾かれ体勢を崩された懐に回し蹴りを入れる。

 

「貴殿は私が相手だ!」

 

 部屋の左に飛ばされた猫人の元へと向かう命。

 ヒュアキントスの後ろで弓に矢を番え構えている妖精が、魔法の詠唱をしている。

 

「【燃え尽きろ、外法の業】」

 

 ヴェルフも同時に魔法の詠唱に入る。しかしヴェルフの魔法は超短文詠唱、強制的に魔力暴走を起こさせる反魔法。

 

「【ウィル・オ・ウィスプ】!」

 

 魔力暴走した魔法はその場で爆発を起こす。爆風に吹き飛ばされた妖精は、咳き込みながらも立ち上がり弓を背負いナイフを二本構えた。

 

「ベル!あいつは俺に任せろ!」

 

 命とヴェルフが他の二人の眷属を相手にしている間に、ベルは【英雄願望】のチャージを行っていた。

 

「【ファイアボルト】!」

 

 ベルが放つ速効魔法、雷を纏った蒼き炎は速効魔法とは思えない威力でヒュアキントスに向かって飛んでいく。

 ヒュアキントスは構えていた大剣を咄嗟に自らの身体の前に滑り込ませ、蒼き炎から自らの身を護る。衝撃を全て防ぎきることはできず、たまらずに後ろに後退させられた。

 【英雄願望】は攻撃の威力を上げるスキルだ。代償は自らの体力をすり減らすことだ。戦闘の最初に繰り出すようなスキルではない。

 しかしベルは敢えて戦闘開始後すぐにこのスキルを使った攻撃を行った。これはワユと組み立てた作戦だ。

 

『最初に高火力の攻撃を一つぶちかましておきな。そうすれば、敵はその攻撃を意識しながら戦わざる負えなくなる。精神面で有利な格下と、精神的に不利な格上だったら、精神的に有利な格下の方が勝機はあるから』

 

 大技を最初に繰り出させることによってその攻撃を警戒させながら戦わせる。目の前の攻撃だけではなく、来るかどうか分からない攻撃を警戒しなければ戦わなければならない相手は、必ず精神をすり減らしながらやがて大きな隙を作る。

 

「貴様、正気か……?」

 

「さて、どうでしょう――ね!」

 

 片手で構えていた刀を後ろ手に持ちながらヒュアキントスと一気に距離を詰める。接近しながら刀を上段に振り上げ、切りかかる。

 基礎的な上段切りをヒュアキントスは大剣を掲げ防ぎ、すぐさま剣を引き追撃を取ろうとする。

 ベルは一撃を与えたところでバックステップ、ヒュアキントスから距離を取り右手をヒュアキントスに向け速効魔法を発動する。

 

「【ファイアボルト】!」

 

 先ほどよりもかなり威力が低い炎がヒュアキントスに向けて放たれる。ヒュアキントスは大剣を薙ぎ払い、炎を切断、その場で小規模な爆発を起こす。

 その爆発の煙に紛れ、ベルはすぐさま後ろに回り込み刃を突き出した。気配だけを感じ取りヒュアキントスは咄嗟に前転、ベルの刀を回避した。すぐさまベルは追撃、ヒュアキントスは地を転がり続け回避する。

 ブレイクダンスの要領でヒュアキントスは下半身を振り上げベルに向けて蹴りを放った。ベルは腕でそれを受け止めるが、ここでレベルの地力差が出てしまう。不安定な姿勢から放たれた蹴りでも、レベルが一つ違えば真っ正面から受け止めるのは困難だ。ベルのアビリティがSだとしてもそれは変わらない。

 ベルはその場から吹き飛ばされてしまい、ヒュアキントスと距離が開いてしまう。しかし不安定な姿勢のまま迎撃してくることは無く、ゆっくりと立ち上がりながら体勢を整え直していた。

 

「不意打ちのつもりだったが、咄嗟に後ろに飛んで威力を殺したか……レベル2の貴様が、レベル3の私とほぼ互角にやり合えていることに驚いたぞ」

 

 ヒュアキントスの言葉に何も返さず、ベルは立ち上がり刀を構えヒュアキントスをしっかりと見据える。全ての動きを見逃さないと言わんばかりだ。

 

「来ないならば、こちらから行くぞ!」

 

 大剣を構えたままベルに突貫してくるヒュアキントス。ベルはヒュアキントスの繰り出してくる剣戟を刀で受け、時には躱し鍔迫り合いに持ち込む。

 レベル差が有る鍔迫り合いは基本的に高レベルのものが勝つ。技術があろうとも、力で押し切れるためだ。

 しかしベルは押しきられる直前、漆黒の『神のナイフ』を抜きゼロ距離のヒュアキントスに向けて切りかかった。咄嗟に後ろに飛ぶものの、躱しきれずに右腕に赤い線が走った。

 ベルの超変則二刀流、刀とナイフという長さに差が有り過ぎる武器の二刀流だ。しかし虚をつくことはできても、常にこのまま戦うのは相手がどうこうの問題ではなく自分の距離感的に極めて難しい。こういったゼロ距離、或いは超近距離の時しか使えない。

 ナイフを仕舞い再びヒュアキントスと距離を詰めるベル。上段から切り下ろした刀をヒュアキントスは紙一重で躱す。刀を振り切って動けないところにヒュアキントスはカウンターを叩きこみ、ベルは壁まで吹き飛んだ。

 

「ヒュアキントス様!」

 

 玉座の魔の扉の方向から少女の声が響き渡った。その方向をベルトヒュアキントスが見るが、ベルは見覚えがある顔ではなかった。

 

「ヒュアキントス様!ご無事ですか!?」

 

「カサンドラ?無事だったか……」

 

「え、援軍……」

 

「援護します、ヒュアキントス様」

 

 ヒュアキントスとベルの間に立ち、ベルの方を向きナイフを逆手に構えるカサンドラ。

 

「一人で充分だ、と言いたいところだが止むを得ん。カサンドラ、たの――」

 

 ヒュアキントスは足に衝撃を受け、何事かと自分の足を見る。見ると先程カサンドラが構えていたナイフがカサンドラの右大腿部に突き刺さっていた。

 

「カ、カサンドラ……一体、どういうことだ……?」

 

「申し訳ありません、ヒュアキントス様。私はカサンドラではありませんよ?」

 

 ベルの方へ歩み寄り振り返ってみると、カサンドラの姿は小人族の少女へと様変わりしていた。

 

「リリ!?」

 

「はい、ベル様!リリですよ」

 

「貴様、貴様ァアアアアアアー!」

 

 ヒュアキントスは頭に血が上りベルに向けて剣を振り下ろした。壁に叩きつけられ動けないベルとサポーターであるリリにそれを防ぐ手立てはない。

 するとヒュアキントスとベルの間に二人の人影が間に入り、大剣と刀をクロスさせヒュアキントスの剣戟を受け止めた。

 

「ベル、動けるか?」

 

「助太刀いたします!」

 

「ヴェルフ、命さん……」

 

「あの二人はどうした?」

 

「あ?あんなの、あの悪魔みたいな奴に比べれば全然大したことないぞ」

 

「まぁ、あの人と比べるのがそもそもの間違いかと、ヴェルフ殿」

 

 五日間とはいえ、ヴェルフも命もワユの特訓、という名のサンドバッグになっていたのだ。その中でもワユの動きに目を慣らしていた彼らからしたら、レベル2の冒険者の動きは緩慢に見えても仕方がないだろう。

 ヒュアキントスは後ろに飛び、ベルたちから距離を取る。その間にベルは刀を杖代わりに立ち上がり、

 

「ありがとう、リリ、ヴェルフ、命さん。後は、僕がやります……!」

 

「……そうか、よし、行けベル!」

 

 ヴェルフがベルの背中を叩き激励する。リリと命がベルの方を見て頷く。

 ベルも三人の方を振り向き頷いてヒュアキントスに向けて突貫する。ベルは刀を袈裟切りに振るう、ヒュアキントスは大剣でそれを防ぐ。すかさず片手を開け、その手をヒュアキントスに向ける。

 

「【ファイアボルト】!」

 

 ゼロ距離から発射された魔法がヒュアキントスに直撃する。思わず後ろに後ずさるヒュアキントスに向けて追撃、『流星』の剣技を舞う。

 高速の五連撃がヒュアキントスに向けて放たれる。最初の二撃は何とか防ぐが、全て剣舞を防ぎきることはできずに三回の剣戟を食らう。ワユの流星よりは速さに劣るが、前回のミノタウロス戦よりも早い剣戟がヒュアキントスを襲う。

 『流星』を放った後にバックステップで距離を取る。かなりのダメージをヒュアキントスは負ったが、攻撃を食らったことを意にも介さずにベルに向けて攻撃を次々と放つ。

 ベルは後退し、時には地を転がりながら全ての攻撃を回避した。回避しながら【英雄願望】をチャージする。

 それに気が付いたヒュアキントスは回避の態勢を取る、が先程リリに刺された足の痛みに動作が遅れ、

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 一撃目の魔法よりも高威力の魔法を放った。ヒュアキントスは咄嗟に剣を目の前に翳すが、余りの火力にを防ぎきれず剣を貫通しヒュアキントスに直撃した。

 最大火力の魔法が直撃したヒュアキントスはその攻撃で意識をしなった。

 全滅した『アポロン・ファミリア』のがら空きの玉座にベルが腰掛ける。その瞬間『戦争遊戯』終了の合図が戦場に鳴り響いた。




次の次に滅茶苦茶ふざけたものを上げます

ギャグと言うほど面白くはなりませんが、まあ有り得ないような話を作りたいと思います

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