蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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はいはい、その場のノリで書き上げますよっと


第三十二話~戦争遊戯after~

 

 戦争遊戯から二日後、各所では先日の『戦争遊戯』の熱冷めやらぬ状況だ。

 そしてここ、『ロキ・ファミリア』のホームもその一つである。

 

「いやー、一昨日のあれ、すごかったよねー?」

 

「ホント、あの賭け負けてる人が多くて助かったわ」

 

「ねぇアイク、どうして『ヘスティア・ファミリア』が勝つってわかったの?」

 

「『ヘスティア・ファミリア』で大暴れしていた破天荒剣士」

 

「……え?」

 

「それが答えだ」

 

「おいアイク、どこかに行くのか?」

 

「今日『ヘスティア・ファミリア』の面々が帰ってくるのだろう?少し挨拶をと思ってな」

 

「「挨拶?」」

 

「アイズ、『アロンダイト』借りて行っていいか?」

 

「借りていくも何も、アイクに渡された剣でしょ?確かに今は私が持ってるけど……」

 

 アイズは部屋に戻り持ってきた『アロンダイト』を渡した。アロンダイトとラグネルを背負った。

 

「ではな」

 

 そしてアイクは『黄昏の館』を後にし、オラリオの正門に向かう。『ヘスティア・ファミリア』のメンバーの帰還を待ちながら。

 

* * * * * * * * * *

 

 現在『ヘスティア・ファミリア』のメンバーは馬車に揺られながらオラリオに帰還していた。

 

「まさかベルが本当にあっちの大将倒すとは思わなかったよ」

 

「あ、アハハ……結構酷いこと言いますね、ワユさん」

 

「だってレベルが一つ違うだけでかなり動きに差が出るんでしょ?それにベルはそんなに戦闘経験っていうのが向こうよりも短いわけだし、まあ勝つための特訓はしていたわけだけど」

 

「何はともあれ勝ってよかったじゃねえか!ベルは『ヘスティア・ファミリア』の存続が決まったしな」

 

「まあ『アポロン・ファミリア』の今後を考えたら同情を禁じ得ませんが」

 

 今回の『戦争遊戯』で『ヘスティア・ファミリア』が『アポロン・ファミリア』に出した条件は『アポロン・ファミリア』の全財産、及びホームの没収、アポロンのオラリオ永久追放だ。

 そして今回の『戦争遊戯』では『アポロン・ファミリア』の眷属の内7割の死亡が確認された。

 アポロンのことを嫌っている神も多いが、流石に今回の出来事には同情を禁じ得ない様だ。

 

「まあ今回の目的は達成できたでしょ?今後はあたしに恐れてベルを欲しがってもちょっかいを出されることは無いと思うけど」

 

「クラネルさんが他のファミリアに行かれても困ります。クラネルさんはシルの伴侶となる御方ですから」

 

「ちょっと、リューさん!?」

 

「ムムム……ベル様!鼻の下が伸びてます!」

 

「ちょっとリリっ!?」

 

 馬車の中で戯れていると、急に馬車が止まった。中にいたベルたちは何事かと辺りをキョロキョロする。

 

「御者殿、何かあったのですか?」

 

「い、いえ……目の前に人が居まして……進むに進めないのです」

 

 馬車の進行方向にローブを着た大柄な男性と思わしき人物が立ちふさがっている。このままでは馬車が進めないため、馬車に乗っている『ヘスティア・ファミリア』のメンバーは馬車を降りた。

 

「おいあんた、そこに突っ立ってると進めねえんだ。退いてくれねえか?」

 

「……」

 

 ヴェルフが男に詰め寄るが、男は何も言い返さない。

 

「ヴェルフ殿の言う通りです。このままでは私たちの馬車が進めず、オラリオに帰れなくなってしまいます」

 

「こちらの言い分が通らないなら。実力で押し通ることになりますが」

 

 そう言いながらリューは小太刀を抜いて男に詰め寄る。男は背負っていた剣を抜き、行動でリューの質問に答えた。

 リューが男に切りかかる。男は身を翻しそれを躱すが、もう一本の木立を鞘から抜き逆手に持って男に向けて突き出す。

 男は振り返りながら剣を振るい、二刀目の小太刀の攻撃を捌き男が持つ剣を逆手に持ち柄でリューの背中を殴り地面に叩きつける。

 

「にゃろ!」

 

「御免!」

 

 命とヴェルフも武器を取り男に向けて切りかかる。ヴェルフの大剣をいなし、命の刀を躱す。

 がら空きになった懐に手刀を一閃、ヴェルフはその一撃で意識を刈り取られる。命は男がヴェルフに攻撃している隙に背中に向けて刀を薙ぎ払う。しかし男は振り向きもせず、背中に剣を回しその一撃を受け止め男はその場にかがむ。そのまま命の腕を取り背負い投げ、命は背中から地面に叩きつけられ気を失う。

 

「ベル下がってて、あたしがやる」

 

 ワユが前に出て腰を落とし、抜刀の構えを取る。 

 男は持っていた剣を仕舞い、背中に背負っていたもう一本の黄金の剣を抜く。背中から現れたのは黄金の両手剣。

 男が黄金の剣を抜くと、エタルドともう一本の剣が輝き共鳴し出した。

 それを意に介さず、ワユと男は同時に地を蹴り距離を詰める。

 ワユは抜刀、居合切りのようにエタルドを繰り出す。その動きに合わせて男はだらりと下げていた剣でその一撃を受け止める。

 ワユは一度下がり、剣を抜いて男と距離を詰め激しい剣技を繰り出す。男の方もその剣技に対応し、受け止め、躱しを繰り返す。

 見る限りワユが攻めているように見えるが、ワユの方は表情に余裕がなさそうだ。

 ワユがエタルドを男の頭に向けて突き出す。男は首を曲げながら前に出ることによって距離を詰めながら攻撃を回避するという神業を見せた。

 しかしワユの攻撃は男のローブのフードを引きちぎり、男の顔を露わにした。

 

「少しお痛が過ぎるんじゃないの……大将!」

 

 ベルとリリはその男の顔を見て驚愕する。その男の正体はベルをミノタウロスから救った、そしてワユの所属していた傭兵団の団長だった男、アイクだったからだ。

 

「久しぶりだな、ワユ」

 

 話しながらも剣舞は止まるところを知らない。ワユが奥義『流星』を繰り出すが、アイクはすべてを【見切り】その攻撃を回避する。

 

「嘘でしょ!?」

 

「お前は俺のスキルを忘れたのか」

 

 最後の一撃を放って隙だらけのワユに向けてラグネルを振るう。

 ワユは血潮を噴き上げながら吹き飛ばされた。

 

「やはり以前よりも弱くなっているな、お互いに」

 

「いやいやいや、何してるんですかアイクさん!?普通に死んじゃいますから!?」

 

「あの程度では死なん、まあ放っておけば死ぬが」

 

「大問題ですよ!早く治療しないと――」

 

 リリがワユの傍らに近寄ろうとするが、それより先に動き出していたアイクにワユが担がれる。

 

「こいつは俺の所属しているファミリアでちゃんと治療して送り届ける。心配するな」

 

「他の三人はどうするんですか!?」

 

「そいつらは放っておけば目を覚ますだろう。特に外傷もないからな……最初からこいつが突っかかってくれれば無駄な戦闘をせずに済んだんだがな」

 

 そう言い残しその場を去っていくアイク。その場に取り残されたエルとリリと馬車の御者は呆然としたまま見送る。

 

* * * * * * * * * *

 

「リヴェリア、こいつの治療を頼む」

 

 ワユを担いだまま『黄昏の館』のリヴェリアの私室を蹴り開けるアイク。突然の来訪に咄嗟に振り返り、アイクとアイクが担いでいた大物に目を見開く。

 

「お前は一体何をしているんだ……」

 

「言っただろう、挨拶だ」

 

「死にかけてるじゃないか!?それのどこが挨拶だ!それに彼女は『ヘスティア・ファミリア』の――」

 

「俺の仲間だ」

 

 ワユをベッドに寝かせ、リヴェリアが回復魔法を行使する。普段の特訓でアイクがアイズを半殺しの状況で担ぎ込んでくることが多いため、治療の魔法の出番が最近かなり増えてきたように感じるリヴェリア。

 

「それで、仲間というのは」

 

「文字通りの意味だ。こっちに来る前の世界で俺が団長をしていた傭兵団の団員だ」

 

「……少し彼女を見てやっててくれ、今ロキを呼んでくる」

 

 少し経ち、ロキがフィンとリヴェリアを従えて来た。来て早々ロキはアイクの襟元を掴みガックンガックンさせている。

 

「お前はワユたんに何やらかしとるんや!?アホか!アホなんか!?」

 

「こいつと面識があったのか?」

 

「この間の宴でドチビが連れてきてたわ」

 

 違う眷属ってこいつのことかと思っていると、ベッドの上から軽い呻き声が聞こえ頭をさすりながらワユが上体を起こしていた。

 

「ワユたん、大丈夫か?どっか痛いとこないか?胸とか、胸とか、後胸とか?」

 

「胸ばっかじゃん、ってロキ?あー!大将!もう一回、もう一回勝負!」

 

「少し落ち着け、話が済んだらまたやってやるから」

 

「やってええわけないやろ!病み上がりやぞ!」

 

「やあ、ワユさん……だったよね?少し話良いかな?」

 

「ええっと……誰?」

 

「僕はフィン。『ロキ・ファミリア』の団長をやってる」

 

「え?ここの大将って大将じゃないの?」

 

「あはは……まあ冒険者として僕の方が経験あるし、それにそっちのファミリアの団長も君じゃないだろ?」

 

「うん、あたし団長とかそういう柄じゃないし」

 

「……話を進めてもいいかい?君はなんで、ここに居るんだい?」

 

「へ?どういうこと?」

 

「何でこの世界にいるんだということだ?本当に何でいるんだ?お前はテリウス大陸旅して回ってただろ?」

 

「それを言うなら大将だって何でこの世界にいるのさ?」

 

「知らん、青い光に包まれたと思ったらダンジョンにいた」

 

「あたしも。皇帝からエタルド受け取ったその日に青い光に包まれて、気が付いたらダンジョンにいた」

 

「理由は分かるか?」

 

「大将の方は?」

 

「俺は分からん」

 

「あたしも」

 

 なんとも頭の悪そうな会話が続いているのだろう、他の三人が思ったかどうかは定かではない。

 

「ワユ、今すぐというわけではないが、力を貸せ」

 

「へ?いきなりどうしたの?」

 

「ダンジョンに漆黒の騎士が現れた。ご丁寧に、女神の加護を宿した鎧を着こんでな……」

 

「……ゼルギウス将軍?」

 

「いいや、鎧の中身はただの植物、或いはモンスターだ」

 

「へぇ……強いの」

 

 にやりと笑いながらアイクに問いかける。その様子にリヴェリアはため息をつきながらこめかみを押さえた。

 

「大したことは無い。が、女神の加護を宿している。通じる武器は俺のラグネルとエタルドだけだ」

 

「で、具体的にはどうするの?」

 

「ダンジョンに潜る時に声をかける。遠征には……着いて来てもらえばいいか」

 

 後ろを振り向きフィンとリヴェリアに確認を取る。二人とも少し考えるそぶりを見せた後に首を縦に振る。

 

「そう言うわけだ。見返りはどうする?」

 

「うーん……ねぇロキ、ここに来れば大将と戦える?」

 

「まあこいつがホームにいればな」

 

「じゃあ大将と好きなときに戦える権利、後ろにいるお姉さんの治療付きで。お姉さん回復職でしょ?なんか同時に魔法も使えそう。なんかセネリオみたいだね」

 

 それと――と続けるワユ。

 

「グレイル傭兵団の復活、とかは?」

 

「俺とお前だけでか?それは団ではないだろう。傭兵をしたければ個人でやっていろ」

 

「ってことは大将も傭兵続けてるってこと?」

 

「心証的にはな」

 

「それでいいよ。何かあったらお願いね、お互いに……じゃあ、もう一回勝負!さっきは少し調子が悪かったけど、今度こそ勝つ!」

 

「そう言ってお前が勝った例がないだろう。やるなら中庭だ」

 

 そう言ってリヴェリアの私室を後にするアイクとワユ。その後『ロキ・ファミリア』の中庭が二人によって荒れに荒れたのは言うまでもないだろう。




戦争遊戯終わりました……

個人的に春姫編にアイクをどうにかして絡ませたいんですよね

個人的にダンまちのキャラの中で春姫は結構好きな部類に入る。

リューさん、リヴェリアと同じくらい春姫は好きですね。男の身体見ただけで気絶とか面白すぎる


それと全く関係ないんですが、ヒロインハーレム路線が一番楽なんじゃないかという気がしてきたのだ……

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