蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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UAが10万突破しました、これって凄い事なんでしょうか?いまいち分からないですが、これは確実にアイク補正です

それと同時に調整平均が少し下降しました、なんでや!

まあ緑とか青になるよりは0.2位落ちるのは全然問題ないのですが
そもそもここまで評価が高くなる作品だと自分自身全く思えていないので6.0位あるのに驚きを禁じ得ません


第三十六話

 

 ここは『フレイヤ・ファミリア』の本拠『戦いの野』。現在フレイヤはそこにいた。

 

「フレイヤ様、『イシュタル・ファミリア』に動きがありました」

 

「詳細は?」

 

「歓楽街のホーム周辺に娼婦たちがいつになく動き回っている模様です」

 

「監視は、アレン達だったかしら?」

 

「はい。オッタル様がダイダロス通り側から監視の指揮を、アレン様やグレール様たちが歓楽街に潜入しています」

 

「ええ、分かったわ」

 

「それともう一つ、ダイダロス通りに白髪の少年と青髪の青年を担いだ『男殺し』を見かけたとの情報が――」

 

「へぇ……」

 

 報告の途中でフレイヤの目がすっと細められ、その迫力に報告をしていた少女は身じろぎする。

 

「いけないわ、それはいけないわね……『彼』ならば自力でなんとでもなるでしょうが、『あの子』にはまだ早いわ」

 

 そして俯き肩を震わしながら大きな笑い声をあげ天井を見やる。そして少女の方を向き、微笑みながら命令を下す。

 

「『イシュタル・ファミリア』を潰すわ。私のお気に入りたちに手を出すとどうなるか、しっかりと分からせてあげる必要がある様ね……」

 

「は、はい……」

 

「それと今回は私も出るわ。『イシュタル・ファミリア』の本拠を監視している子たちも全員、歓楽街に集まるように指示して頂戴」

 

「り、了解致しました!」

 

 急ぎ部屋を出て行く少女。そしてフレイヤは窓の外に見える満月と、次いで歓楽街のある方向を不気味に微笑みながら睨みつけた。

 

* * * * * * * * * *

 

 アイクたちは現在外に出る為に歩き続けている。その場に止まって事情を聞いていると、確実にフリュネに追いつかれてしまう危険性があるため、少しでも早く外に出る必要があるためだ。

 

「それで、お前が今日このまま何もしないと死ぬのには、何か訳があるのだろう。話してくれるか?」

 

「は、はははは、はひ!」

 

 目の前にいることがあり得ない、物語の中の勇者であるという事実に春姫はすっかりと委縮してしまっている。

 流石に嘘だろうとベルの方を見たが、アイクの最後の一言に自信を持って頷いているところを見たら、彼が嘘を付いていないということが分かってしまった。

 このままその様子を眺めているのも面白いのかもしれないが、今は一刻を争う時だ。春姫の命の為、そしてこのままその場に止まっていればフリュネに見つかるのも時間の問題だということは、想像に難くないだろう。

 

「少し落ち着け、取って食おうなんてしてないだろう」

 

「は、はい、すすすいません!」

 

 アイクは頭を押さえ溜息を付いてしまう。最近自分の名前の影響力をようやく分かってきたアイクだ。だから逃げるとき名前を言ったら大なり小なり慌てふためくことも想像に難くなかった。

 だから部屋を出るとき名前を尋ねられても、あえて何も答えずに部屋を出て来た。

 今までの神たちのように怖がられているわけでも遊ばれているわけでもない。ただ驚いているだけだというから余計に何もできずにいる。何か行動を起こしたところで逆効果だからだ。

 自分で聞きだすことを諦めたアイクはベルの方を見やり、春姫から事情を聞きだすように視線で指示を出した。

 

「春姫さん、先ほどのことってどういうことですか?今日が自分にとって最後の日っていうのは」

 

「は、はい……お二方は『殺生石』というものをご存知でしょうか……?」

 

 アイクは首を横に振る。ベルは「名前だけ……」と。

 

「その殺生石と言うのは狐人専用の道具です。『玉藻の石』というアイテムと『鳥羽の石』という二つの道具を使って生み出される、いわゆる禁忌の道具として用いられています」

 

 『玉藻の石』というのは狐人の遺骨から作られ、狐人の魔法の効力を劇的に跳ね上げる効果がある。

 もう一つの『鳥羽の石』というのは別名『月嘆石』、『ルナティックナイト』と呼ばれる石で、月の光を浴びることで色を変え、光を放ち、魔力を帯びる特殊な鉱石だ。

 そしてその石は、月の光に応じて硬度、威力、効果を変える。

 そしてその石は、満月の夜、最大限に効果を発揮する代物だ。

 

「そして殺生石は、狐人の、この場合は私の魂を石に封じ込め、私の魔法の効果を増大させる。そして、石に魂を封じられた私は……」

 

 最後の一言は発さずに、胸に組んだ手をやり俯いてしまう。ベルはどうしていいか分からず、アイクは顎に手をやり、どうすれば春姫を救えるか考える。

 そしてとてもシンプルな答えを導き出した。

 

「今日中にその『殺生石』とやらを破壊する。それだけじゃ駄目なのか?」

 

「恐らくは……前回はアイシャさんが殺生石を壊したのですが……あれからまたどこかからイシュタル様は殺生石を入手してきましたから」

 

「そもそも『イシュタル・ファミリア』はお前の魔法を使って何がしたいんだ?お前の魔法の能力は何だ?」

 

「わ、私の魔法は、任意の方を一人に限ってレベルを一つ上昇させます。勿論一時的にですが……その力を殺生石に封じ込め効力を上げることによって、恐らくは複数人、或いはレベルの二段階上昇を出来ると目論んでいるのでしょう」

 

 春姫の魔法の効果にベルは驚きを隠せない。レベルの一時的な上昇、そんな魔法が本当に存在するのかという疑惑の念が湧いてきてしまう。ここで春姫が嘘を付くメリットが何一つないと分かっていてもだ。

 だがアイクはレベルという概念をいまいち理解できていない。レベルが一つ違う相手にはほぼ確実に勝てないと言われているが、ワユには元から負けたことはないし、この世界の戦士、或いは冒険者はほぼ確実にテリウスで戦った戦士よりも実力が劣る。

 それに今までにベルが自分よりもレベルが高い相手を撃破してきていることから、本当にレベルというのが関係あるのかどうかという疑念が、頭の中を渦巻いている。

 彼らが頭の中を整理している間も、春姫の説明は続いていた。

 

「そしてイシュタル様の目的は、『フレイヤ・ファミリア』を、もしくはフレイヤ様に一泡吹かせることだと仰っていました」

 

 フレイヤという名前が出てきた瞬間、アイクは眉を顰める。特段何があったというわけではないが、初対面の印象はあまりよくないのだ。

 

「ど、どうかしましたか、アイク様?何か不愉快なことが……?」

 

「いや、何でもない。続けてくれ」

 

「は、はい……イシュタル様の目的は褒められたものではありませんが、イシュタル様がその目的を達成しようとするのならば、どうしても今の『イシュタル・ファミリア』、いいえ、『イシュタル・ファミリア』に限らず、この都市のどのファミリアに所属している冒険者にも、彼は倒せないでしょう。『猛者』オッタル」

 

 出てきた名前に本格的に頭を抱えたくなってきた。アイクがもしこのまま春姫を助けたとして、その助ける方法が『アイクが殺生石を破壊する』だと、イシュタル、ひいては『イシュタル・ファミリア』の眷属に目を付けられ、『フレイヤ・ファミリア』に対する意趣返しに使われるかもしれない。

 最も、アイクがそれを拒否して『イシュタル・ファミリア』を潰してもいいのだが、これを行えば確実に『ロキ・ファミリア』に多大な迷惑をかけてしまう。

 

「だ、大丈夫ですかアイク様……?先ほどから御様子が……」

 

「いや、本当になんでもないんだ。ただフレイヤという名前とオッタルという名前が出てきてただろ。もしこのまま俺が殺生石を破壊した後のことの最悪な展開を考えるとな……」

 

「アイクさん、その……事情を聞いてもいいですか?」

 

「言っておくが、お前も全くの無関係じゃないんだぞ?」

 

「……へ?」

 

「お前がレベルアップするときに戦った時のミノタウロス、覚えているか?」

 

「ええ、勿論です……」

 

「あの時お前たちと一緒にいた小さい奴が俺たちに助けを求めて来たんだが、お前の元に向かう途中にオッタルの妨害が入ってな」

 

「…………」

 

「それだけじゃなくて怪物祭の時、その時もオッタルと戦わされて、そのあとフレイヤに勧誘された。御丁寧に『魅了』までしてきてな」

 

「二回も『猛者』と戦っているなんて……」

 

「あの、つかぬ事をお伺いしますが……その戦いの結果は?」

 

「二回とも俺があいつを倒している」

 

「「…………」」

 

 春姫とベルはその事実に絶句してしまう。さらに『魅了』をされておきながら何事も無かったかのようにしているアイクを信じられないようなものを見る目で見ている。

 

「ベル、お前に『殺生石』の破壊頼んでいいか?」

 

「え?それってどういうことですか?」

 

「俺が直接出向いて破壊してもいいんだが、その間に『イシュタル・ファミリア』の誰かに春姫が捕まっても駄目だ。『イシュタル・ファミリア』はレベルがほとんど2か3なのだろう?」

 

「はい、それに加えてアイシャさんはレベル4、フリュネさんはレベル5です」

 

「だとすると、お前たちの所で『イシュタル・ファミリア』のやつの相手をすることができるのはワユだけだ。そのワユは今どこにいるのかわからないからな。だったら俺が『イシュタル・ファミリア』の面々を相手取っている間にお前が『殺生石』を破壊しろ」

 

「え、アイクさん一人で全員相手するんですか!?」

 

「そんな、無茶です!いくらアイク様でも、全員相手取るのは――」

 

「春姫は俺が守ろう。お前は『殺生石』の破壊に専念すればいい」

 

 作戦らしい作戦は思いつかないが、これが一番確実なのだろう。アイクは本気でそう思っているし、今『ヘスティア・ファミリア』の面々がどこにいるか分からない以上、今回の戦闘員は最悪アイクとベルだけなのだ。

 そうこうしているうちに出口思わしき扉を見つけ、アイクは春姫に確認を取ってその扉を開ける。

 

「……あれ?大将?」「アイク殿、ベル殿!……春姫殿も、よくぞご無事で……!」




次回はワユたちの方を少し書いて行こうかなって思います
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