蒼炎の勇者がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:クッペ

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明後日頑張って書こうと思っていたんですが、なんか書きたくなったので今日頑張って書きます

今更ですが、最後がネタバレになっていますので、ネタバレ死ねやって思う人はこっちはまだ読まないほうがいいです。と言っても結果だけなんですけどね……(2018/3/4)


閑話~戦争遊戯編~

「ちゅー訳で二週間後に『ヘスティア・ファミリア』と『アポロン・ファミリア』で戦争遊戯や!いやー、ドチビが負けると分かってる戦争遊戯ほど楽しみなものはあらへんな!」

 

 ついこの間開かれた『アポロン・ファミリア』主催の神の宴。何を思ったのかアポロンは神の宴でヘスティアに戦争遊戯を吹っ掛けたのだ。

 

「なあ、戦争遊戯ってなんだ?」

 

「はあ……お前が冒険者登録した時に教えただろう。戦争遊戯はファミリア間の戦争だ。勝った方が負けた方になんでも一つ絶対命令権を得ることができる」

 

「せや!アポロンが勝ったらドチビの所のベル・クラネルが『アポロン・ファミリア』に改宗、ドチビが勝ったら『アポロン・ファミリア』の全財産、及びホームの没収、アポロンのオラリオ永久追放や。ドチビん所の眷属は眷属が二人、アポロンの所はその何倍もおる。やる前から結果なんて分かりきってるわ」

 

 これでドチビの吠え面拝めるで!なんて騒いではいるが、実際の所はどうなのだろう?

 

「リヴェリア、戦争遊戯っていうのは実際の戦争と同じか?」

 

「いや、戦争遊戯によってルールが違う。ファミリア間の全面戦争になることもあれば、人数或いは戦力差に圧倒的な偏りがある時は出来るだけ対等にルールが設定されはするが……」

 

 グラスに注がれた水を一口口に含み、一呼吸おいて続ける。

 

「今回の場合、どうあがいても戦力差が有り過ぎる。助っ人の制度を『ヘスティア・ファミリア』側に設けない限り、もはや戦争でも遊戯でもない、一方的な蹂躙になるだけだ」

 

「そう言えばドチビのとこの眷属、今回の宴に連れてきてるやつがベル・クラネルやなかったな……まあ大したことあらへんやろ。なんかベル・クラネルは酒場で『アポロン・ファミリア』と喧嘩したらしいしな。何でドチビんとこにあんな可愛い子がいるんかは分からんし不満やけど……一人で戦場なんて覆せへんからな」

 

 どのようなルールになろうとも、『ヘスティア・ファミリア』には万に一つも勝ち目はない。

 ロキが一人ではしゃいではいたが、誰一人として意見が出ないところを見ると、思っていることは皆同じようだ。

 

* * * * * * * * * *

 

 そして戦争遊戯が始まる二週間の期間はあっという間に過ぎた。

 此度の戦争遊戯のルールは『攻城戦』。『ヘスティア・ファミリア』が『アポロン・ファミリア』の大将が守護する城の玉座を奪い取るというのが、今回のルールだ。

 細かいルールとして使う武器、魔法、スキルに制限はない、『ヘスティア・ファミリア』には一名の助っ人を認める、互いの眷属が戦闘で命を落としても文句を言わないこと。

 最後の一つのルールはかなり批判の声が出たが、ルールを決めた主催者側はその意見を一蹴している。

 つまり今回の戦争遊戯では死人が出ても全く不思議ではない、とても苛烈なものになると予想、いや、確信ができる。

 

「あー、あー!皆さんこんにちは。今回の戦争遊戯実況を務めさせていただきます『ガネーシャ・ファミリア』所属、喋る火炎魔法こと、イブリ・アチャーでございます。二つ名は【火炎爆炎火炎】です。では主神のガネーシャ様、一言お願いします!」

 

『俺がガネーシャだ!』

 

「ありがとうございます!」

 

 なかなか起こらない戦争遊戯とあって今日はどこの酒場も商店も盛況だ。

 ギルド前の特設スタジオでは『ガネーシャ・ファミリア』の眷属とその主神であるガネーシャが此度の戦争遊戯の実況をするらしい。

 『ロキ・ファミリア』の面々は『黄昏の館』で全員で見ることになっている。これは主神であるロキの命令だ。

 ちなみにロキが座っている机の前には二つの容器が置かれており、今回の戦争遊戯でどちらが勝つかを賭けている。

 戦争遊戯が始まる前まで自分の名前を書いた紙を入れればよいことになっているため、まだ全員分入っているわけではないが、殆どのメンバーが『アポロン・ファミリア』に入れていた。

 負けたファミリアに入れたメンバーは後日の打ち上げで勝った方のファミリアに入れたメンバーに何か奢ることになっている。

 アイクはまだ投票していないのだが、周りからはどちらに入れるか注目されているようだ。

 

「ねぇアイク、まだ入れないの?」

 

「申し訳ないけど、この人数差じゃアルゴノゥト君たちは勝てないって」

 

 ティオナの言うアルゴノゥト君はベル・クラネルのことだ。

 

「もう少し待て、せめて構成員が分からないと入れるに入れられん」

 

 そう話しているとロキがおもむろに指を鳴らす。空中には鏡が出現し、現在の戦争遊戯の現状が映し出されている。

 これは下界で唯一許されている『神の力』の鏡だ。任意の場所の光景を一方的に見ることができるが、使えるときはギルドを運営しているウラノスが許可を出した場合のみだ。

 ロキの鏡が城で待機している『アポロン・ファミリア』のメンバーを映し、次いで城から離れた場所に集まっている『ヘスティア・ファミリア』のメンバーを映し出す。

 そのメンバーは『ベル・クラネル』、元『ソーマ・ファミリア』の『リリルカ・アーデ』、元『ヘファイストス・ファミリア』の『ヴェルフ・クロッゾ』、元『タケミカヅチ・ファミリア』の『ヤマト・命』、謎の覆面冒険者、そしてもう一人のメンバーを見た瞬間、今までにないほどの驚愕を生み出し、次いで今までのことが全て腑に落ちたというような表情をする。

 ウダイオスをアイズが倒してその帰還中にラグネルが光り輝いたこと。あれはやはりエタルドが近くにあったということだ。

 ベルがミノタウロス戦で見せた回避術、それは彼女が教えたものだ。

 ベルがミノタウロス戦で見せた高速の五連撃、それは彼女の奥義『流星』だ。本物には遠く及ばないが、冒険者に刻まれた『神の恩恵』が限りなく本物に近づけていた。

 今まで有り得ないという理由で切り捨てて来た考えが実は正しかった。

 アイクが席を立ちあがりロキの前においてある器に、自分の名前が書かれた紙を入れる。それは大方の予想を裏切る『ヘスティア・ファミリア』の方へとだ。

 

「アイク、正気か?」

 

「ああ、何だったら、今『アポロン・ファミリア』に入っている紙をすべて『ヘスティア・ファミリア』に入れ替えないことを後悔するぞ」

 

 それは予想などではなく確信だった。『ヘスティア・ファミリア』が負けることを全く疑っていない口ぶりだ。

 ヘスティア・ファミリアの最後のメンバー、『グレイル傭兵団』の『ワユ』。腰に白銀の両手剣を携え、攻めるべき城を真っすぐに見据える。

 

(というかこれで負けたら、あいつはクビだな)

 

* * * * * * * * * *

 

 今回の戦争遊戯の結果を伝えよう。結果としては『ヘスティア・ファミリア』の勝利だった。

 開始の合図が鳴ると同時、ワユと覆面の冒険者は二人で『アポロン・ファミリア』の待つ城へと乗り込んだ。

 『アポロン・ファミリア』の大将以外の冒険者の実に三割が戦闘不能、もう残りの七割は死亡が確認された。

 『アポロン・ファミリア』の大将であるヒュアキントス・クリオがいる玉座に辿りついた二人は何を思ったのか踵を返し、城を後にした。

 見れるのは光景だけで声は聞き取れないが、その場を去る直前ワユはヒュアキントスに対して何かを言っていたようだ。

 暫くが立ち、ヒュアキントスの前にはベルが単身現れ、レベル3のヒュアキントスとレベル2のベルとの激戦の末、見事ベルがヒュアキントスを下し此度の戦争遊戯の勝者は『ヘスティア・ファミリア』となった。

 アイク以外の全員が『アポロン・ファミリア』に入れていたため、後日遠征の打ち上げでは全員の出費が決まった瞬間でもあった。




ものっそいカットをして一話に収めました

そして本編の方でこれまで言っていた通りワユたちの視点で綴っていきたいと思います

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