鉄血短編集 -FILLING BLANKS-   作:suz.

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25〜26話の間の話
(鉄華団が火星に凱旋したあと、地球支部を開設するまでの話)


ブルー・プリント

 相手機を射程にとらえた。

 狙いをつけて、引き金に手をかけたまま機体をランダムに左右へ。距離をつめる。距離をとる。相手の銃口がいまだとこちらを睨み据えたら、すかさず岩場を利用して急速旋回、側面を確実にとらえる。

 振り返らせる前に砲撃(ファイア)

 三〇ミリマシンガンからペイント弾がほとばしり、白い機体をべしゃりと汚す。

 

(……一発外した、)

 

 グリーンアイズを鋭くしかめる。着弾の衝撃によろめく相手機に照準を定めたまま、さらに背後へ回り込もうとするがそう簡単にはいかないらしい。MW(モビルワーカー)のコクピットで操縦桿をにぎるアストン・アルトランドはすばやく視線を走らせると一度バックステップで距離をとった。降り注ぐように落ちてくるペイントをぎりぎりで回避しながら遠ざかる。

 重力偏差を補正。慣性の影響、射程――当たらなかった理由を意識の外で処理しながら蛇行する。MS(モビルスーツ)と違って近接戦闘はできず、組み付くこともできない。空も飛べない。装備はお互い機体上部に搭載した機関砲のみで、この両目で睨みつけたからといって次の瞬間には着弾させられるわけでもない。

 重力のある火星では弾道は放物線を描いてしまう。地球でギャラルホルンのMWを相手にしたときは運良く足を狙えていたが、舗装された道路ではなく足場の悪い岩場の場合、MWの弱点は本体上部だ。重心を傾がせれば三点式の走行用ローラーは岩肌に足をとられて動きを止める。

 不安定な岩場をくぐり、荒涼の赤土を駆ける。加減速を繰り返してわずかな隙を積もらせていく。相手の照準補正を完了させない敏捷性こそ阿頼耶識使いの真骨頂である。すべての条件は相手も同じ、敵も味方もわずか三六〇度の視野だけだ。

 岩陰から顔を出した瞬間、銃口と目が合った。

 ――よし。

 せっかちなペイント弾が左舷に被弾しそうになるのを一気に踏み込んで回避する。加速。相手機の眼前へと躍り出ると、そのまま機体を横にふりきる。

 急な方向転換の衝撃で飛び散る小石と土煙の奥から、トリガーを引き絞った。

 

 

 

 

「なかなか派手にやってんなぁー!」

 

 MW同士にしては何とも大げさな土煙に、さすがのオルガも感嘆をはずませる。ここ数日で模擬戦がド派手になったという評判にたがわないスピード感あふれる立ち回りだ。

 整備を担当する年少組が出番を待っている中から、まとめ役のタカキがぱっとオルガをあおいだ。

 

「お疲れさまです! 団長も休憩ですか?」

 

「いや――ま、そんなとこだ」

 

 休憩を観戦にあてていたらしい連中がオルガの登場にざわつきはじめるので、あえて見ない振りをしてやる。デスクワークにはほとほと参っていたから、ちょうどいいガス抜きなのだ。椅子に座ってじっとしているだけでも落ち着かないというのに事務作業が次から次へと舞い込んで、模擬戦の視察だなんて名目をでっちあげて出てこないと腐り落ちてしまいそうだった。

 大部分が未開発の火星では土地の所有権なんてあってないようなもので、都市でもプラントでもない荒涼の大地にまではギャラルホルンの監視も届かない。何をしていてもどやされないのをいいことに、基地にほど近い丘陵地帯で模擬戦を行っている。

 すっかり闘技場となっている岩場を見下ろすと、浅い谷の底でMWが二機、一対一でやりあっている。なかなか面白い展開だ。娯楽にも勉強会にもなっているのだろう。

「ダンテェー!」と情けない雄叫びが漏れ聞こえたから、どうやら押されているほうはダンテ機らしい。隣のガッツポーズは、もう一方に賭けたのか。

 ペイントはいくらか付着しているのに直撃の形跡はなく、突撃と即時撤退を繰り返すヒット・アンド・アウェーの戦術――あんな戦い方をするやつは鉄華団(うち)にいたろうか。

 

「タカキ、あっちの青いのは?」

 

「アストンです! ここしばらく負けなしなんですよ」

 

「それで旧昭弘機カラーか……へぇ」

 

 気合い入ってんなあ。顔を見合わせて苦笑をこぼし、青いカラーリングのMWを見守る。照準補正がことさら早いダンテを相手に一発も食らっていないとは、なかなかよくやる。

 あっちにチャドさんがいて、向こうにはデルマが。――とタカキが説明してくれるほうへ目をやると既に沈黙している二機が目に入った。コクピットハッチを椅子にして特等席で観戦とは、ふたりともなかなかいい度胸をしている。

 ペイントの付着具合を見るに、チャドは開始早々ダンテ&デルマ組の集中砲火を食らったのだろう。なぜだかアストンに声援を飛ばしているデルマはどうやら、窪地にはまってしまったところを突かれたらしい。足元の悪い火星での模擬戦に慣れない今はしょうがないが、アストン機によるペイントがコクピットへ狂いなく四発打ち込まれているのが何とも、今すぐ楽にしてやると言わんばかりで哀愁をさそう。

 

 蒸し返すことでもないからと記憶の奥に押しやっていたが、宇宙海賊ブルワーズが『武闘派』と知られていたのは彼らMS部隊の存在があったからだ。

 タービンズだって輸送組織の中では武闘派も武闘派で、〈ハンマーヘッド〉に乗艦するエースパイロットたちの加勢によってブルワーズのMS隊は壊滅。搭乗していたヒューマンデブリは過半数が戦死した。

 そんな中、シノたちが母艦を制圧したのちに信号弾を受けて帰投した、たった二機の〈マン・ロディ〉。

 アストンはラフタと、デルマはアジーとそれぞれ交戦して無事に生還したのだ。鈍重な〈マン・ロディ〉の機体性能でテイワズ製の〈百里〉〈百練〉を相手取っただけでも尋常ではない。

 特に機動性に優れた〈百里〉、それを操るラフタの腕前を知っていればこそ末恐ろしかった。整備の行き届いた機体を駆る彼女らとまともにやりあうとはどういうことなのか、わからないほどオルガは戦場を遠く離れてはいない。

 

 急成長企業として名を上げつつある鉄華団にとって、唯一無二のセールスポイントが『戦闘力』だ。ギャラルホルンという大軍に一矢報いてみせ、地球経済圏に根を張っていた政治的癒着という腐敗を暴いた。クーデリアを地球に送り届ける道中に降って湧いた戦いの数々を糧にして武闘派組織として成り上がり、さらに大きく成長しつつある。

 子供ばかりと侮られることもいまだ多いが、反発するかのように構成員もそれぞれ前へ進んでいる。テイワズから仕入れた新型MS〈獅電〉、タービンズのエースパイロットたちによる戦闘指南もあって、戦力は確実に増強されている。

 しかし、MSでの戦闘練度となるとブルワーズの生き残りに今一歩及ばないのが現実だった。

 彼らはまさに『即戦力』だ。三日月や昭弘がタービンズのシミュレーターごしに叩き込まれ、今はシノやライドが体得しようと試行錯誤している戦術を、実戦の中で身に付けてきた強かさがある。

 今もジグザグに駆け回っているMWが豪快に砂塵をまとって、見るも凄まじいスピードを出していることがわかるのに、足取りにはまるで危なげがない。火星に来て半年も経っていないというのに地形を生かした戦い方ができるのは、さすがの一言だろう。手際がいい。反応も早い。自身を囮にしては岩場を盾にして、弾切れを狙う戦術も。

 ……腕がいい。突撃、撤退、引き際の見極めがうまい。MSの機動性あっての戦術をMWの戦いにうまく落とし込んでいる。

 俊敏な動きが在りし日の三日月を思わせ、懐かしさすら覚える光景にオルガは目を細めた。

 バルバトスに乗る前は三日月もああやって昭弘やシノ、ユージンを相手に二対二の混戦を戦ったものだった。いつもユージンが真っ先に狙われて沈黙させられ、そのうち三日月と昭弘の一騎打ちになる。そんな模擬戦を横目にどっちが勝つかささやかな賭けをしたり、年少組が戦い方を覚えたり――まだCGSの参番組だったころもそうやって笑い合った。

 ついにダンテ機までもが戦闘不能になると、わっと歓声があがる。

 オルガはああと嘆息して、賭け金の行方だけではない大喝采に苦く笑った。阿頼耶識使いの本領発揮を見るとスカッとするのは、みんな同じだ。

 結局いつも三日月だけがほぼ無傷のまま帰ってくるから賭けになんてならなかったのだけど。

 

 

 

 

「よう、お前も事務方(コッチ)に来るかダンテ?」

 

 模擬戦を終えたMWたちの補給と整備にと岩肌を滑り降りる年少の兵站部隊に続いて谷底に降り立つと、オルガは鷹揚なしぐさでダンテにからんだ。

 

「オルガまでやめてくれよぉ、おれはMS乗りにっ」

 

「つれねーこと言うなって、細けェ作業はお手の物だろ?」

 

 けらけら笑うと、ダンテはへにゃりと眉を落とした。日々デスクワークに耐えるオルガ・イツカはもはや少年兵ではない。経営者だ。社長だからこそMWなんて脆弱な機体で最前線に出ることはできないし、模擬戦を懐かしく思う気持ちもダンテには充分に推し量れた。

 こうやってMWで模擬戦ができるのも、ささやかな賭博に興じられるのも、何もかもオルガが慣れない社長業に奔走して資金を集め、仕事をもらい、信用を積み重ねているからだ。期せずして会社運営の厳しさについて触れた古株組には身にしみてわかっている。

 

「つうか、なんでオルガまで来てるんだよ?」

 

 からみつく腕から逃げ出すようにダンテがもがくと、オルガはすんなり開放して「ヤボ用だ」と肩をすくめた。

 

「アーブラウで正規軍を発足させんのに、教育係を鉄華団から寄越してくれってんでな。地球に降りてもらう面子も考えなきゃなんねえし、休憩がてら様子を見にきたんだよ」

 

「地球ぅ?」

 

「地球!?」

 

「団長、おれたち地球に行くの?」

 

「まだわかんねえよ」

 

 補給部隊に改めて配属されたエンビ・エルガー双子をあやすオルガも、実のところ明言できるほどの情報を持っているわけではなかった。

 このほど、アーブラウで新たに発足する自衛軍だか防衛軍だかに軍事教育を施す役目はどうかと、蒔苗氏の斡旋による仕事が舞い込んだのである。

 現状の鉄華団で売り物にできるものは戦闘力くらいのもので、ギャラルホルンに一発かましてやったという実績だって、遅かれ早かれ風化するだろう。火星を拠点にしていれば地球圏での知名度も時間の経過とともに下がっていく。テイワズの影響力だって圏外圏がせいぜいだ。地球圏はいまだギャラルホルンの掌中にある。

 今後テイワズの手足、そのつま先として地球に降り立つのであれば、鉄華団はテイワズの中でも有用な存在になれるだろう。

 ギャラルホルンという大軍に一矢報いた戦術というものをアーブラウの正規軍で指南するポジションにつけば、戦いの記憶を保ち、鉄華団を企業として成長させる足がかりにもなるはずだ。『正規軍の軍事顧問』という肩書きは次の信頼につながる。楔を打ち込む意味でも、テイワズと地球経済圏、双方にコネクションを持っておきたい。

 何より、駐屯地をアーブラウ側で用意してくれるというのが、鉄華団地球支部設立という話のうまみだった。

 入団希望者を可能な限り採用している鉄華団では、そろそろ宿舎が足りなくなってきている。会議室をつぶすなどして寝室を増やしてはいるものの、ひとところで食事を囲むのはもう無理だ。ふくれあがる人数と、あまりの大所帯に耐えきれない基地。増築も進めてはいるのだが、資材、工事費、施工日程もろもろを考えると余裕もない。どうすべきかと頭を抱えはじめた矢先だった。

 今ここで数十名を地球支部に移らせれば、窮屈な思いはさせないで済む。

 とはいえ地球に送るなら、向こうでの主な仕事は戦闘指南ときた。

 阿頼耶識もない、実戦経験もない職業軍人を相手に、鉄華団のやりかたを教えてやれ――そんな任務を命じられるやつはうちにいたろうか……。

 本格的に頭を抱えていたオルガだったが、模擬戦を直に見てみると、おおよその腹は決まった。

 

「なぁダンテ、片付け終わったらおれんとこ来いってあいつらに伝えといてくれねぇか」

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 地球支部の起ち上げにあたり、メンバーの選抜は消去法で始まった。

 団長であるオルガが火星を離れるわけにはいかず、整備の難しい〈ガンダム・バルバトス〉、〈ガンダム・グシオン〉も歳星から遠く離れさせたくはない。パイロットである三日月と昭弘は必然的に火星本部に残すことになる。特に『鉄華団の悪魔』として名を知られている三日月は極力手元に置いておかなければ基地が危うい。

 となればユージン、シノ――と指折り数えて、あいつらに戦闘指南ができるかどうか、という点で行き詰まった。

 鉄華団はそもそもが大人との折り合いの悪さでできている。地球で接するのは、これから兵隊になろうとする大人だ。職業軍人を相手に仕事をする。

 そこで、人当たりの良さからチャド・チャダーンが選出されるのは半ば当然の流れだった。

 チャドは思慮深く柔和な男であるし、地味ながらオルガやシノに続く長身の持ち主でもある。見た目で舐められることもないだろう。何より、チャドなら地球で揉め事を起こしてやいないかとオルガが気を揉む必要がない。

 それから、鉄華団では例外的なまでにまともな敬語が使えるタカキ・ウノ。

 かつてクーデリアと初対面のとき、オルガら参番組は「挨拶もまともにできんのか」とマルバにどやされたのだが、いざ起業してみればまともな挨拶、というのは予想以上に重要だった。タカキの快活で穏やかな人となりは、鉄華団が単なる血気盛んなチンピラ集団ではないことの証明でもある。〈イサリビ〉であれもこれもと仕事を覚えてくれたおかげで戦闘に関する備品は一通り扱えるし、タカキがいるなら年少組が見知らぬ土地ではめを外す心配もいらないだろう。

 ビスケットの妹双子と同様、タカキの妹だって学校に通わせてやりたいとオルガは常々思っていた。お誂え向きにアーブラウ側から提供される宿舎の付近には学校があって、火星からも生徒を受け入れられるという打診もついてきている。ギャラルホルンの統治を失って治安の悪化が危ぶまれる地球圏だが、それでもクリュセよりはずっと安全だ。

 ただ、チャドもタカキも、軍事教育、となると頼りない。ふたりともMS乗りではないのだ。MWを動かすぶんには問題ないにしても、MSで戦うとなると初心者同然である。

 

「そこでアストンか。なるほど」

 

 チャドが穏やかに微笑して、頼りにしてるぞ、と隣で目を丸くするアストンの背中をポンと叩いた。アストンを社長室に連れてきたタカキも納得の表情だ。チャド、アストン、タカキが三人並ぶと不思議にしっくりくる。協調性という面では問題なさそうだと、オルガもほっと一息ついた。

 

「え、でも……おれなんか」

 

「昼間の模擬戦を見たんだよ。お前すげえなァ」

 

「……いや、えっと」

 

「すごいよ、アストンは。だって昭弘さんのMWに乗り換えてから一発も食らってないんだ」

 

「それは……おれが汚すわけにはいかないから、それで」

 

「うん。それで本当に全部避けちゃうんだから、アストンはすごい」

 

 タカキの的確な援護射撃にオルガは我知らず目を細める。雑談に不慣れなアストンはまだ言葉がうまく出てこないらしいが、そのぶん慎重に言葉を選ぶ。年少組のまとめ役としてコミュニケーションに長けるタカキならうまくフォローしてやれそうだ。

 正解を探して目を伏せてしまうアストンに「あのな」とオルガが呼びかけると、鮮やかなグリーンの双眸でまっすぐにオルガを見据えた。表情に乏しくとも気持ちはしっかりと前を向いているようだ。与えられる言葉すべてを咀嚼し、噛み砕こうとする向上心は好ましい。

 模擬戦ではあれほどの強さを誇るというのに、こうしていると真面目で素直な少年だ。

 

「今のところ、MSでまともに戦えるってなるとミカと昭弘、シノ、お前とデルマしかいねえだろ? しかもウチはみんな、戦闘っつっても隙を見てガンガン行くしか戦術もねえ、オラついた無作法モンばっかりだ」

 

 言いながら頭を抱えだすオルガの言いざまにはチャドも苦笑して、「耳が痛いな」と肩をすくめた。

 MWでできることなんて、走り回って撹乱するか、遮蔽物に身を隠して突撃のタイミングをはかるかの二択だった。宇宙戦を経験して牽制して逃げ切ることを覚え、防衛戦を経験して弾幕を張ることを覚え――、戦術がちまちまと増えてはいるものの、鉄華団はいまだ『戦略』というものには疎い。

 ユージンが積極的に学んでくれてはいるのだが、実地で身に付けたサバイバル能力という点で見ればアストンとデルマが最先端だろう。

 ただ、デルマはああ見えて血の気が多い。ブルワーズでは前線戦闘員だったのだから無理もないが、顔に似合わず『ガンガン行く』タイプらしく、前衛に切り込む戦法を好むのだ。敵機を捕捉したら弱いやつから順番に集中砲火を浴びせて叩き潰していく――という至極妥当なやり方ではあるものの、手ごろな相手を見つけだし、追い込んで仕留めるには戦場で研ぎすまされた嗅覚が必要不可欠である。勘のいい年少組ならまだしも、実戦初心者に教えるのはあまりにも危険だ。

 一転して、アストンは一発食らわせては撤退して立て直し、確実に動きを封じて仕留める戦術を好んで使う。

 後衛が射撃で足を止め、前衛が鈍器でぶちのめす……というのがMS戦における基本戦術であるし、アストンは援護・白兵どちらも器用にこなす。前衛のデルマ・後衛のアストンを組ませると悪魔もかくやの連携を見せてくるので模擬戦においてはもはや禁止タッグ扱いになっているのだが、アストンを青いカラーリングの機体に乗せてみたところ、思わぬ収穫があった。

 元ヒューマンデブリたちには総じて命を投げ出すような戦い方が癖づいており、昭弘とアストンは特にその傾向が強かった。そんな戦い方を危ぶんだ誰かが、被弾を避けさせるために、MWをひとつ昭弘カラーに塗り直したのだろう。これは旧昭弘機――アルトランドの姓をくれた兄貴分の機体なのだという緊張感がいいほうに作用した。

 おかげで目を見張るほどの回避速度が明らかになり、模擬戦の砂嵐がどんどんド派手になっていく。地の利を生かし、弾切れを狙い、危なくなれば迷わず撤退して確実に仕留める。

 その三日月を思い起こさせる立ち回りには幹部組も沸き立ち、一発たりとも食らわない姿には年少組たちも大喝采だった。

 これから戦い方を覚える連中に見せてやるべき戦い方だと、オルガは直感したのだ。

 戦場に向かうにあたって最も重要なスキルは引き際の見極めだ。初心者は撤退のタイミングから覚えていかなければやられてしまう。

 

「任されてくれるか」

 

 信頼を寄せるオルガの双眸を真正面から受け止めて、アストンは「はい」と従順に首肯した。

 

 そして鉄華団地球支部は設立の日を迎える。




初出: 02/21/2017 @pixiv

"Let you be a home soon"
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