モンスターハンター 健啖少女とハンターさん   作:ストスト

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邂逅

とある山の中。

一人のハンターが太刀を背中に携え、

必死の形相で疾駆していた。

 

彼の名はザント。

もう少しで上位のクエスト受注も出来るようになる

下位のハンターだ。

今回、彼はその上位のクエスト受注を許可される

為の昇格クエストをクリアしたばかりなのだが、

そんな彼がなぜ山の中を走っているのか。

 

その理由は、彼の数十m後ろから現れた。

 

「グオオオオオオオオオオオオオッ‼︎」

 

とてつもない咆哮と共に、ザントの後を

追ってくる暗緑色のティラノサウルスのような、

下顎に大量の棘を生やした巨大なモンスター。

≪恐暴竜≫イビルジョー。

それが彼を喰らわんと先程から追って

来ていたのだ。

 

「ハッ、ハァッ‼︎ハッ‼︎」

 

息を切らせながらも決してイビルジョーとの

距離を縮めることはさせないザント。

 

「こ、こんなん聞いてねええええええ‼︎」

 

彼の叫びももっともだろう。

クエストを受注した際には≪狩猟環境安定≫と

太鼓判が押されていたのに、結果としては

このざまである。

だが、今はその事を恨んでいる場合ではない。

 

(とりあえずは、奴を撒く事のみを考えろ‼︎)

 

このまま追いかけっこを続けていれば

いずれ捕まるのは明白。

そうなれば死ぬのは必然的だ。

 

と、彼はポーチの中にひとつだけ入っている

≪こやし玉≫の存在を思い出した。

 

(ッ‼︎そうだ、こやし玉をぶつければ

奴を撒く事が出来るかもしれない‼︎)

 

だがもしも、その一発を外してしまえば

もはや助かる道はない。

なんとしてもイビルジョーにぶつけなければ

ならない。

 

ザントはイビルジョーの近くまで……

だがしかし、その顎門が届かない範囲まで

距離を縮める。

 

「ガアアアッ‼︎」

 

ガチッ、ガチン、ということ音と共に

イビルジョーの顎門が空を噛む。

すぐ背後にイビルジョーがいるという恐怖を

抱きながらも、ザントは冷静にタイミングを

見計らう。

 

「……今だあああああああああッ‼︎」

 

振り返りざま、ザントはイビルジョーに向けて

こやし玉を放つ。

それはものすごい勢いでイビルジョーの口へと

入り込んだ。

 

「ざまーみろっ‼︎暴食でも流石にそれは

くえねーだろ‼︎」

 

「ガアアッアアアアアアアアア⁉︎」

 

口の中に充満する激臭に耐えられないのだろう。

イビルジョーは頭を天高く上げながら

悲鳴を上げた。

 

「よし、後は逃げるだけ……え?」

 

ザントはそのまま逃げようとして……

言葉を失った。

自分の足元に、投げたはずのこやし玉(・・・・・・・・・・)

転がっていたからだ。

不発か?否、だとすればなぜイビルジョーは

あんなにも苦しんでいる?

そうなると結論は一つ。

ザントはこやし玉ではないなにかをイビルジョーの

口に投げ込んだのだ。

 

(じゃあ、俺が投げたのは?)

 

「ゴアアアアアアアアア⁉︎」

 

イビルジョーが悶え苦しむ。

と、その体が光り始めた。

 

「は⁉︎え、ちょっ、何⁉︎」

 

イビルジョーもザントも、この異常事態に

理解が追いつかない。

しかしその間にも光はどんどんと眩く輝き。

ザントの視界を数秒の間、真っ白に焼いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、う……なんなんだ今の光?

目が眩んだぞ」

 

やがて光が消え、焼かれていたザントの

視界もクリアになっていく。

そこにいたのは。

 

 

 

「ッ〜〜〜〜〜〜……」

 

暗緑色の長い髪をした、一糸纏わぬ

裸体の少女が目をごしごしこすりながら

立ち上がる姿だった。

 

「……は?」

 

少女はザントに気付くと、敵意のある

視線をザントへと向けた。

 

「……むう、何故か視線が低いな。

人間、貴様何をした?」

 

姿とは裏腹な大仰な物言いで、少女は

ザントに問うた。

 

「いや、あ、あの……」

 

と、そこで少女も自分の異変に気付いたようで、

慌てるように自分の体を見始めた。

 

ザントは自分の目を疑っていた。

それもそのはず。

イビルジョーが消えたと思ったら、

代わりに容姿端麗な少女が倒れていたのだから。

 

「……へ……ええ⁉︎」

 

やがて、自分の異変を理解した少女が……

恐らく“元”イビルジョーの少女が、

ザントの方へとゆっくり、顔を向けた。

 

「に……人間になってるううううううううう⁉︎」

 

その少女の叫びは、山中に響き渡ったのであった。

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