モンスターハンター 健啖少女とハンターさん   作:ストスト

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健啖少女、食事にありつく。

ギルドに着いたのは、既に日が落ちた頃であった。

 

ルイはザントがクエストをクリア際に

彷徨っていたところを保護したということにして、

ギルドの受付嬢に適当な衣服を選んでもらっていた。

 

「……それでは、彼女をザントさんの家で預かる。

これでいいんですね?」

 

「ああ、そうしてもらえると助かる」

 

ザントはその間にやるべき書類の作成に

勤しんでいた。

と、そこに。

 

「このヒラヒラした布は何だ?

よくもまあ人間はこんなものを

着ていられるものだな」

 

ワンピースを着たルイが近づいてきた。

 

「おい……人前でそういう事言うな。

バレるかもしれないから止めろ」

 

「ふむぅ……だが人間よ。

私は貴様の名前とやらを知らないのだが」

 

この大仰な物言いを後でなんとかしなければ。

そう思いつつも、ザントは自らの名をルイに

明かした。

 

「ザント……か。忘れるかもしれんが、

とりあえず覚えておこう、人間よ」

 

「ザントだって言ったろ」

 

そう言いながら、ザントはルイの頭を撫でた。

さらさらとした手触りがザントの手に伝わる。

 

「だあああ‼︎私の頭に触るな無礼者!」

 

するとルイは、怒ったようにザントの手を払う。

 

「おお、悪い悪い。でもお前の髪、

すごいサラサラしてるんだな」

 

「そ、そうか?ふふ、この私の御髪に触れた事を

光栄に思えよ?」

 

ザントが褒めると一転、嬉しそうな顔で

えっへんと胸を張った。

 

「……さて、と。俺も腹が減ったし、

飯でも食うか」

 

「飯⁉︎」

 

ザントがその話題に触れた途端に、

ルイの瞳がキラキラとしだした。

 

「まさかお前……まだ食べる気か⁉︎」

 

「何か悪いか?腹が減るのは自然な事だろう」

 

「ルイ……お前ここに来るまでに肉どんだけ

食ったと思ってんだ?」

 

ベースキャンプで2本、ギルドに着くまでに

5本、合計7本ものこんがり肉をルイは

平らげている。常人なら普通に満腹でも

いいはずなのに、むしろルイは腹が

空いて仕方ないと言うのだ。

正直ザントはこの旺盛な食欲に舌を巻かざるを

得なかった。

 

「ッ〜……しょうがないな、もう……」

 

ザントはルイにまともに食べさせたら、

自らの財布が軽くなると理解した。

だがしかし、食べさせないのも気が咎める。

ザントは考え抜いた挙句、あるものを

ルイに手渡した。

 

「なんだ、これは?」

 

「モスジャーキーだ。それ食えばしばらくは

腹が持つと思うから」

 

「じゃーきー?」

 

これこそ彼の考え。

ジャーキーならば消化に時間がかかるので

腹が空くまでかなり持つと踏んだのだ。

ルイは干し肉を手に取って見つめていたが、

恐る恐るそれを口に入れた。

 

「なんだ、これは……美味いじゃないか⁉︎」

 

顔を綻ばせながら、次々と干し肉を口に

放り込んでいくルイ。

 

それを見ながら、ザントはそそくさと

自分の料理を頼むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ザントはすぐに自分の考えがどれほど

浅はかであったか思い知る羽目に遭った。

 

「むううう……」

 

頰を膨らませながらザントが食べている

料理をじっと見つめるルイ。

そう、大量のこんがり肉と、

それに腹持ちの良いジャーキーを食べておきながら

彼女の腹はまだ満たされなかったのだ。

 

「うううう……‼︎」

 

心なしか、目頭に涙が見えてきている。

ザントはもう、食べづらい状況であった。

 

「あのなぁ……ええ?」

 

「むうううー‼︎」

 

相手の方が多く食べているはずなのに、

ザントの胸中には何故か罪悪感が去来していた。

こんな心境では食べる気持ちにはなり辛い。

結局、ザントは自分の料理を半分も食べることも

なく、ルイに明け渡すことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザントの食事を奪って、ルイは満足したらしく、

食べ終わるとこくり、こっくりと船を漕ぎ始めた。

それから間もなくして、完全に熟睡した。

 

そしてその結果。

 

「なんで俺がこんなことを……」

 

ザントが彼女を背負って自分の家へと帰る

事に相成った。

 

「むにゅう……もう食べられない」

 

「寝言でも食ってんのかよ……⁉︎」

 

鍛え抜かれている体だから一応は疲れは

しないが、それでもザントの家はまだ程遠い。

それに……

 

「これからこいつの食費もかさむのか……」

 

「むにゅ……ぱく」

 

「俺の耳甘噛みするなよ……全く、

こいつ大仰な物言いのくせに子供みたいだな……」

 

先程のルイの底なしの食欲を思い出しながら、

ため息をついてザントはとぼとぼと

歩いて行くのだった。

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