モンスターハンター 健啖少女とハンターさん   作:ストスト

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健啖少女、ハンターの家にて。

ーーーーーー生きてきた中でも感じた事のない

ぐらいの、柔らかな感触に包まれて私は目覚めた。

 

「……んっ……んう……」

 

薄く目を開けると、そこは四方が木の壁に

囲まれた箱の中だった。

 

ふと、自分の手を見てみる。

昨日まで何も変わらず存在していた私の手は、

今や五本の指を持つ「人間」のそれに

なってしまっていた。

 

「やはり……昨日のことは夢ではなかったか」

 

もしも夢だったなら、それなりに楽しい夢だと

思えたのだけどなあ……。

私はため息をついて、私を包んでいた

柔らかな布を剥いだ。

 

と、ガチャリと音がして、一匹の獣人が

入ってきた。

 

「ニャ、起きてましたかニャ?」

 

アイルーだった。

 

「……ここは?」

 

「旦那様の家ですニャ。昨日、

旦那様が貴女を担いで家に帰って来たんですニャ」

 

「あの男が?」

 

そうですニャ、とアイルーは頷きながら

先程から香ばしい匂いを発している

温かい汁物を私に手渡した。

 

「朝食ですニャ」

 

私は、汁物に鼻を近づけて、すんすんと

嗅いだ。……毒の類は入っていないようだ。

恐る恐るそれを口の中に注ぐ。

刹那、まろやかな味わいと僅かな甘味で

私の口内は満たされた。

……美味しい。しかもとてつもなく。

 

「これは?」

 

「旦那様特製の、ペピポパンプキンのシチュー

ですニャ。もしかして、お気に召さなかった

ですかニャ?」

 

「……いや。この“しちゅー”とかいうもの、

とても美味しいぞ」

 

それを聞いてアイルーはとても喜んだ。

 

「そうですかニャ。旦那様も喜びますニャ」

 

『おーい、アルフ〜。ちょっと野菜の収穫

手伝ってくれないか〜?』

 

そこに、外からあの男の声が聞こえてきた。

私をこんな姿にしてくれた因縁のあの男。

 

「あ、はいですニャ。ルイさん、また何か

あったらボクを読んでくださいニャ」

 

そう言うと、アルフと呼ばれたアイルーは

入り口から出て行った。

 

後には、私と“しちゅー”なる美味な料理が

残された。

何もすることもない私は、その料理を

素早く空にすると、外へと出てみることに

してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んー。やっぱ時間かかるなぁ。

2人だけだと限界があるよな」

 

「ですニャ」

 

私が外へと出ると、二人は畑で色鮮やかな

かぼちゃを収穫していた。

大きさは普通だが、数がとても多く、

二人は汗をかきながら必死に収穫している。

 

「……何をやっているんだ、ザントよ?」

 

「おお、起きたかルイ。今ペピポパンプキンを

収穫してるんだがいかんせん数が多くてな。

少し手伝ってくれないか?」

 

それを聞いて、はっと私は一笑した。

たかだか人間風情が、この私に手伝えと

言っているのだ。笑うしかないだろう。

だが私は誇り高き一族。

その程度の事、私が手伝う訳……。

 

「収穫が終わったら昼飯作ってやるから」

 

「分かった、この私に任せておけ。

ふふ、すぐに終わらせてやる……‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……で、手伝ってしまった。

 

というかあれはザントがずるい。

今日食べたしちゅーとやらも奴が作ったと

アイルーから聞いている。

食べたいと思わない方がおかしいのだ。

私は決してザントに屈した訳じゃない。

奴の料理に屈したのだ!

 

「悪いな、手伝ってもらって。

ほら、お待ちかねのガーグァの唐揚げだ」

 

「ふふん。この私がいた事をもっと

光栄に思うがいいぞ」

 

私がそんな事を思っているとは知らず、

ザントは揚げたての唐揚げを載せた皿を

私の前に出した。

 

私は先程ザントに教えてもらった「ふぉーく」と

いう道具で唐揚げを刺し、口に放り込む。

 

かりっ、という食感と共にジューシーな肉汁が

口に溢れ出す。

……なんだこの肉は。

昨日食べた肉より、遥かに美味しい。

 

「……美味い」

 

「そうか、そりゃ良かった」

 

ニカッ、と笑ったザントの顔を見て、

いままでに感じた事のない気持ちを

私は味わった。

 

「べ、別に貴様を気に入った訳ではないぞ。

この料理を気に入ったというだけだ」

 

「わかってるよ」

 

瞬く間に唐揚げがなくなっていく。

 

「しかしあれだな。凄い食欲だなルイは」

 

失敬な。私から見れば貴様らの方が少食

過ぎるのだ。というか、この姿になってから

食欲はかなり鳴りを潜めている状態だ。

 

「……ふん、なんとでも言え」

 

やがて、料理を食べ終わるとザントは

武器の手入れをし始めた。

 

「そろそろ、こいつも新調しないとな……」

 

ザントがそう言いながら、細かい刃のついた、

……どうやらこの細かい刃が駆動して

相手を斬ると想像できる……太刀をいじっていた。

 

「ルイ、少し悪いが離れてくれ」

 

私がその通りにすると、ザントはその太刀を

起動させた。

唸り声を上げながら回転する刃。

 

「なんだその太刀は」

 

「≪チェーンブレイド改≫。けど結構あちこちに

ガタが来てるな……」

 

ザントは真剣に手入れをしながら、

ぶつぶつと独り言を呟きながら作業に

没頭していた。

 

……暇だ。著しく暇だ。

くああ、と私は欠伸をしながらザントを

見ていた。

 

「……そうだ、ルイ」

 

唐突に、ザントが口を開いた。

 

「お前、ハンターにならないか?」

 

「……あ?」

 

何を馬鹿な事を。私は元モンスターだぞ。

モンスターをハンターにするなんて

どうかしている。

 

「断る。何故私がハンターにならねば

ならぬのだ。大体私は美味い物さえ

食えればそれで」

 

「ハンターになれば、肉わんさか食えるぞ?」

 

「しょうがないな。その話、乗ってやろう」

 

……我ながら恥ずかしい事に、ザントのこの

一言によって私はハンターになる

決意を抱いてしまったのであった。

 

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