D.C.ⅡS.C. 〔1〕   作:消雪

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〔11〕

~学校~

~昼休み~

 

 

 

『はぁ、はぁ、はぁ。……トレーニングを続けて早くも1か月か』

 

 

一か月後、今も俺は懸命に走り続けている。

まだまだ体力作りの効果は得られないが、微弱ながら足の筋力が増しているのは解る。

 

授業15分前のアラームが鳴り、走るのを止めてタオルで汗を拭いた。

 

 

 

『はぁ、はぁ、地獄だな』

 

 

……いや、地獄の思いをしているのは一ツ橋かもな。

 

その後、複数の証言をした生徒が、生徒会に呼び出されて徹底的に追及を受け、簡単に嘘の証言だと分かった。

殆ど芋ずるの様に事実が明らかになり、一ツ橋に懇願されてやったと白状したようだ。

 

一ツ橋も、もう逃げようがないが殆ど黙秘権の状態らしい。

財布の盗みも立派な犯罪だ。警官に捕まる事を恐れての事だろうか……

 

 

『……おっといかん。授業だ』

 

 

 

俺は汗まみれになったTシャツを脱ぎ、予備のTシャツ、カッターシャツ、制服を着て授業に戻った。

 

 

 

~学校~

~放課後~

 

 

 

『じゃあなー』

 

 

 

友達に軽く会釈をすると、俺はすぐ教室を出る。

ランニングは腕の振り方も重要であるが、あまり使いすぎるのも良くない。

 

このポイントが良く解らず、早速公園の周りを走る事にした。

何度も走って、腕のベストの振り方を、自分自身で会得するしかない。

 

 

『いてて、なんだ?』

 

 

 

後ろの髪が引っ張られる。慌てて、後頭部に手をやると、誰かに髪の毛を引っ張られている。

後ろを確認すると、小恋が怒っていた。

 

 

『義之!もう、何度も呼んでるでしょ!』

 

『わりぃ、ポイントを復唱してた』

 

『ポイント?』

 

『ランニングのな。足や心肺機能も大事だが、手の振りがおろそかになっているのに気づいたんだ』

 

 

『どうでもいい。ちょっと時間ちょうだい』

 

『何だよ。付き合いが悪いからか?』

 

『それもあるけど、いいから』

 

『………』

 

 

 

ランニングは明るい時間帯に走るのがベストで、夜は足元がよく解らず危なっかしい。

俺はすぐにでもトレーニングを再開したいんだが……

 

階段の踊り場まで来ると、小恋は足を止めた。

人に聞かれそうな場所なので、俺はちょっとした警戒心が出てしまう。

 

 

 

『……最近、義之おかしいよ』

 

『付き合いが悪いからか?』

 

『それもあるけど、いつもカリカリしているし』

 

『う……』

 

 

『走り始めた頃は、昼休みから戻った時、ゼーハーゼーハーしてたし。過呼吸で本気で倒れるのかと思ったよ』

 

『……後ろをチラチラ見てたのは、それが理由か?』

 

『そうだよー』

 

『……そういえばあの時、後ろを見過ぎだって先生に注意されたよな?』

 

 

『義之のせいでしょ!』

 

 

 

どうやら心配かけたようだ。

 

ランニングを終えた後、階段を一気に駆け上るトレーニングもやっていたので、あの過呼吸は多少不自然だったかも知れない。

 

しかも、体が温まっているのに、暖房が入っているので汗が止まらず、何度もタオルを使ったり、手で拭ったりしていた。他の生徒からも、一体何をしていたのか疑問に思われた事だろう。

 

 

 

『義之、なんか変わっちゃったね……』

 

『確かに、ゼーハーゼーハー言ってるしな』

 

『そうじゃなくて。もう、ふざけてるの!?』

 

『冗談だよ。でも変わってはいないよ』

 

 

『絶対に変わった。なんか無口の時が多いもん』

 

『心肺機能を鍛える為、息を止めているんだよ』

 

『義之……』

 

『いてて、痛い、痛いよ』

 

 

割と思いっきり腕をつねってきた。止めてくれないので、俺は慌てて小恋の手をタップする様に手早く叩く。

小恋は力は抜いたが、依然腕をつねったままだ。

 

 

 

『次ふざけると、思いっきりつねるからね』

 

『解ったよ。ちゃんと答えるから』

 

『やっぱりまだ怒ってるの?』

 

『……前回の運動会の件か?怒ってはいないが、あれ以来は微妙な感情が残っている気がする』

 

 

『でもせめて、昼休みの練習くらい見に行ってもいいでしょ!』

 

『……雪村と花咲が練習の邪魔さえしなければな』

 

 

 

少し前の昼休みの時、俺が真剣に走っている時に、雪月花が見に来ただけならまだしも、女同士でワイワイと騒いでいたので、気が立って「うるさい!!」と怒鳴ってやろうと思ったが、あまりに強い言い方になるので、なぜか『うるさい!!です』と変なニュアンスを付けると、大爆笑になった。

 

俺は頭に来たが、怒る気も失せてトレーニングを再開していた。

 

だがトレーニング中、ワイワイ騒がれては気が立って仕方がない。集中できないんだ。

あの後、俺は雪月花の3人に、絶対に見に来るなと釘を刺しておいた。

 

 

 

『あれは杏と茜が……』

 

『いいや、お前も一緒に騒いでいた。それは覚えているぞ』

 

『じゃあ、騒がなければ居てもいいの?』

 

『あのメンツでは、騒がないでジッと見ている方が不可能だと思うぞ。小恋もすぐ乗せられるし』

 

 

『じゃあ、私だけならどう?』

 

『……小恋にしては大胆だな。いいのか?』

 

『大胆って何?』

 

『男がランニングの練習中、女が付きっきりで見ているなんて、傍から見れば恋人同士としか思えないだろ』

 

 

 

……今頃気づいたのか。小恋が顔を赤くして俯いている。

今度は、そんなに近くで見るつもりはない、ずっと見ているつもりでもないと必死に否定する。

 

ランニング中、視線を感じるのもくすぐったい感じもするが、まぁ気にするものでもない。

 

 

 

『でも、私たちだけじゃないよ。義之のランニング』

 

『そうなの。他に誰が見てた?』

 

『由夢ちゃんにそのお姉さんも』

 

『ホントに!?それは気づかなかったな』

 

 

『義之もなるべく接してあげた方がいいと思うの』

 

『………』

 

『私たちもそうだし、あの朝倉さんたちもそうだと思うよ』

 

『………』

 

 

 

単に、トレーニングしているだけには見えないようだ。

 

今まで自堕落しきっている訳でもないのだが、いきなりトレーニングに没頭するというのは、何か理由があるのでは?と思考が働くのかも知れない。

 

……やはり、俺は生徒会を恨んでいるのか?大金を横取りされたショックから抜けていないのか?

 

自問自答したが、原形の無い感情がそのまま心に残っている感覚だ。

 

 

~公園~

 

 

 

『ハッ、ハッ、ハッ』

 

 

のんびり歩いている歩行者を次々に抜かし、公園の道を使って何周も走る。

顔の汗は何度も飛び散り、目に汗が入らない様に、目の周りだけはタオルで拭く。

 

ランニングは天候にも左右されるので、天気予報は絶対にチェックしておく。

雨の中、走って風邪でもひいたら逆効果になってしまう。

 

後、五ヵ月……

トトカルチョのやり方も、今のうちに杉並と話し合っておいた方がいいな。

 

 

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