~学校~
~昼休み~
『今回、うちのクラスは大穴という訳にいかない。前回は優勝したのだからな』
『ま、そうなるだろうな』
『もしトトで儲けるとするなら、更に厳しいのが、うちのクラスがまた優勝しないといけない事だ』
『本当にそれだな』
3か月後、トレーニングは順調に行っている。
次の運動会まで、それも3か月後だ。
現状において、一番大敵になるのは足を痛める事だ。休息も大事という事で、今は普段より長く足を休めている。
ここまで来たら、次の運動会も本気でやる。
だが、トトカルチョの方はよく解らないので、早めに杉並と打ち合わせしていた。
『だが、まだ手はある』
『どうするん?』
『ある種目を提案し、得点が高くすればいい。その種目を桜内、お前がやるんだ』
『……その種目が通ったとして、どうやって得点を高くするんだよ』
『駅伝の様な長距離走を提案すればいい。得点を高くせざるを得ないだろう』
『杉並……、それは通るとは思えない。何時間走らせる気だ』
『落ち着け。せいぜい5周だ。提案する価値はあると思うぞ』
『………』
確かに、杉並の言っている事は正しい。
うちのクラスは、運動系の部活をやっている生徒が少ない。
だから、全ての種目が全て均等なスコアになると、部活動をやっている生徒の多いクラスが断然有利になる。
それだけは覆しようがない。
『そっちの方は任せるよ。それと、ついでに提案してほしいものがある』
『ほう、なんだそれは?』
『運動会は学年別だ。全学年の種目を付けて、何とか高坂先輩と勝負したいんだが……』
『桜内、二兎追う者は一兎も得ずというぞ。その勝負は運動会以外でもできるであろう』
『そうだな。まずはトトだな。忘れてくれ』
『ま、面白いものが見れそうだから、一考はしてやろう。ただし、望み薄が前提だ』
~学校~
~放課後~
『………』
俺は靴箱で靴を履き替え、外に出ると意外な物が目に映った。
先生らが駐車場に使っている場所に、パトカーが止まっていた。
『!!!』
俺は戦慄して、すぐに生徒会室に走った。
いや、この場合は職員室の方かも知れない。
すぐにUターンして、職員室へと駆けた。
~職員室~
『先生、パトカーが止まっているが何かあったのですか!』
俺は近くに居た先生に声をかけた。
あまりの剣幕だったせいか、一瞬戸惑った様に見えた。
『今回の盗難の件だ。反省してもらう為に呼んだらしい』
『何だと。で、どこにいる!』
『いや、知らんが……』
『………』
こいつ、とぼけている。
だが、すぐに生徒会室だと直感した。
職員室を尻目に、一気に走って生徒会室へと向かう。
このままでは、一ツ橋に嘘をついた事になる。何とか止めないと。
~生徒会室~
ドアにはカギを掛けられている。室内は静まり返り、人気がない感じがした。
だが、感情が抑えきれず、俺は乱暴にドアをノックした。
『ここを開けてくれ。居るんだろ?』
だが、全く反応がない。
もはや反応は、何があったのかと俺を見ている周りの生徒たちの方だ。
ドアをバンバン鳴らして蹴りまくったが、硬すぎてどうにもならない。
業を煮やして、俺は窓ガラスを殴り割った。
ガラスの割る音と同時に、女子生徒が叫び声をあげる。
殴った右手は、ガラスの破片が刺さり、皮膚は所々破れて血だらけだ。
激痛に堪えながらも、窓ガラスのロックを丁寧に外して窓を開けた。
『………』
最初に目に入ったのは、警察二人が何事かと警棒を構えており、その机をまたいで一ツ橋が座っていた。
その奥の方に、生徒会がズラっと並んでいる。
生徒会が約束を破ったのは一目瞭然だ。
『騙したな!』
俺は逆上して、近くに居た生徒会を両手で突き飛ばすと、イスを持ち上げて周りの物を破壊していた。
警察や生徒会員に取り押さえられ、逆上したせいもあってか、その後の記憶は殆どない。
一つだけ記憶があるとすれば、1週間の停学処分にされた事だ。
~公園~
停学処分後、俺はいつものトレーニングを行っている。課題も教科書をそのまま書き写すという簡単なものだ。
だが、感情のコントロールはまだまだ出来そうにない。
小恋の話によると、一ツ橋も『警察は呼ばないはずだ』とまくし立てたらしい。
生徒会側の言い分は、一ツ橋はいつまでも事実を述べる事をせず、反省も見られないからお灸をすえる意味もあったとの事。
前言として、警官から逮捕ではないと怖がらせない様に明るく言われたそうだ。
だが、生徒会や先生が警察を呼ぶのは、俺と一ツ橋からすれば、話や約束から違えてしまっている。
その後、一ツ橋は不登校になってしまったようだ。
何の前触れもなく、相当驚いたのだろう。
警察を呼ばれたのだから、学校内に深刻性を広めてしまい、一ツ橋にとっては、一層生徒らの視線を強く感じざるを得なくなる。
生徒会の人間全員が口が固い訳でもない。
『これ、内緒な』と最初の決まり文句を言って、いくらでも広がる可能性の方がある。
マヌケな事に今、生徒会では一ツ橋の登校を全力で呼び掛けているようだ。
『……ったく』
俺にとってもトレーニングに集中できるものではなく、何とかコンタクトは取りたい。
俺は一ツ橋に嘘をついた事になるのだから。
だが携帯は、着信拒否にされて電話を繋がらない状態だ。
誰とも関わりたくないのなら、俺もどうする事もできない。