D.C.ⅡS.C. 〔1〕   作:消雪

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〔2〕

~学校~

 

 

 

『ふーん、トトカルチョは既に終わったのに、まだ熱くなっているのか』

 

『まぁ、、な』

 

 

 

学校の昼休み時間、杉並から早速突っ込まれる。俺は朝から無口で、他のクラスメイト同士の愚痴を盗み聞きしていた。やはり不満は残ってしまう。

 

杉並には感情というものは無いのだろうか。次の日、昨日の不満を感じずにいられる事は中々できない。

 

 

俺以外のクラスメイトもそうだ。

運動部が少なく、人気薄だったうちのクラスが勝った事。

 

あんな奇跡、もう二度と起こせそうにない。死力を尽くして優勝した対価が没収されて、内心何人かのクラスメイトも荒れている事だろう。

 

 

 

『何なら、もう一つクイズ大会を紹介しようか』

 

『もういい、バレるのがオチだ』

 

『次は、お前の好きな3分クッキングでやろうではないか』

 

『俺は3分に料理をこだわらないし、しばらくは賭け事はやらん』

 

 

 

そういう気分ではなくなっている。

優勝したはずなのに、何も得る事が出来なかった。そんな感じになっている。

 

今から考えれば、最初から賭け事もせず、力も入れずにやってれば良かった。

そうすれば、ここまで落ち込む事もなかっただろう。

 

 

『今日はおかんむりだね、義之君』

 

『そうね、あんた朝から頭から湯気がたち昇ってるわよ』

 

 

 

クラスメイトの花咲茜と雪村杏が話に参加してくる。

朝から花咲も不満そうにしていたが、雪村はいつも物静かで全く表情が読めない。

 

 

『もう仕方ないじゃない。賭け金が手元に戻る事はないし、あまりイライラしていても体に悪いだけよ』

 

『………』

 

 

 

雪村の現実的な慰めが、いやに心地良い。

幾ら考えてもイライラしても、どうしようもない。それだけは確かなんだ。

そして、幾らかその不公平な現実を堪える事も、必要な事なのかも知れない。

 

 

『ま、今回はあんたが一番頑張っただけに、感情の制御が難しいとは思うけど』

 

『ん~、でももう忘れようよ義之君。どうしようもない事なんだしさ』

 

『解っている、解っているよ…』

 

 

 

考えてみれば、こいつらだって悔しいんだ。

俺だけがいつまでも無口になっててもしょうがない。

よし、気持ちを切り替えるか。

 

 

『ところで知っているか、桜井よ』

 

『何が?』

 

『高坂は、虫が大の苦手だそうだ。それで丸く収めればいいだろう』

 

『???』

 

 

 

作り物のゴキブリでも使おうって事か。

気持ちを切り替えたばかりだが…、まぁその位の悪戯ならやってみてもいいが。

むしろ、今より溜飲が下がるかも知れん。乗るか!

 

 

『今回は一枚噛むよ、杉並。作り物のゴキブリでも使うか』

 

『また、やる気になっちゃって…』

 

 

茜がため息交じりに言ってくる。

 

 

 

『はぁ、違うな!本物を使うに決まっているだろう』

 

『本物を使う気だったのかよ。本物は俺も苦手なんだが…』

 

『家にゴキブリホイホイを設置しておけば、1週間もかからずに手に入れよう』

 

『それで?』

 

 

『高坂の背中にこっそりテープで張り付ける』

 

『…待て』

 

 

そんな事をすれば、叫ぶを通り越して烈火の如く激怒するだろう。

最悪、俺にも同じクラスメイトにも飛び火するかも知れん。

 

そうなったら生徒会からは、確実にブラックリストに登録されてしまうだろう。

その後、行動の制限を食らうかも知れん。

 

 

 

『そうね、あるいは…』

 

 

 

さっきから考えていた雪村が何か思いついたかの様に口を開いた。

 

 

 

『走りで高坂先輩に勝ってみればどう?』

 

『高坂先輩は陸上部で、学校内では一番早いんだぞ。どうやって勝つんだよ』

 

『男と女では、筋肉の量や体の頑丈さは違うわ。オリンピックでは女が男より早く走る例など存在しないし、走り幅跳びだってそう』

 

『………』

 

 

『昨日の運動会、あんたは俊足で有名な一ツ橋を抜いたんだから。トレーニングをしていないのに、一ツ橋を抜くのは現状でなお、かなり足が速いと思うわ』

 

『けど、それなら杉並に頼…』

 

 

『俺は猛烈に忙しい!!』

 

 

 

すかさず、杉並から大声で制止される。

元々、杉並は根気よくトレーニングする柄ではない。ハイテク技術を頼って、反則退場がオチだろう。

 

だが、俺は雪村の話半分とも聞いていない。

大体、高坂先輩と走りでやり合う事が出来るまで、どの位の月日が掛かるのか。

 

 

 

『因みに雪村、俺はどの位のトレーニングを積む事になるのか?』

 

『最初から本格的なトレーニングは出来ないわ。走りに慣れているとみているけど、短く見積もっても、半年くらいかかるかしら』

 

『………』

 

『いいじゃない。高坂先輩を走りで負かせれば凄い事よ』

 

 

『…俺は冗談で聞いているだけだからな』

 

『あら、私は本気でやってもらおうと話していたのに…』

 

『茜からも何とか言ってやってくれ』

 

 

『う~ん、でも6カ月のトレーニング後の義之君を想像すると何か凄そう』

 

『もういい。他力本願は良くない。やりたきゃご自分でどうぞ!』

 

 

 

半ば会話を途中で退席して、教室を後にした。

半年もかかるとか、到底トレーニングが続きそうにない。

 

何より、相手の得意分野に立つ事自体が割りに合わない気がする。

 

 

『………』

 

 

 

俺が半年トレーニングして負けてしまったら、何の為のトレーニングになるのか。学校において笑い話ランキングに、自分の名前が載る事になる。

 

思い違いと無謀なる挑戦者、桜内義之…。

 

まだ、授業まで時間はある。

外の水場で髪を濡らして、すっきりしていくか。

 

 

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