D.C.ⅡS.C. 〔1〕   作:消雪

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〔24〕

~家~

~玄関~

 

 

 

『珍しいですね。どうしたんですか?』

 

『弟君、体、大丈夫?』

 

『大事を取ってもう一日休んでいるだけですから』

 

『そっか』

 

 

 

運動会から2日が経過した。

俺は体調を回復させる為、もう1日休む事にしている。

 

その間にお見舞いと称して、雪月花の騒がしさと来たら……

けど、その反面で助けられもした。

 

小恋は弱り切った俺を見て泣きそうになっていたので、俺は元気なふりをして腕立てやスクワットを始める始末。

俺には雪村や花咲の様な、小恋の「扱い」など出来ず、終始騒がしくしてくれた事に感謝している。

 

騒がしくされて感謝するなど、多分最初で最後だろう。

 

 

今日のメールをチェックすると、音姉から高坂先輩が家に行くと書いてあった。

てっきり放課後かと思ったが、予想に反して12時に来た。

 

この時間は、学校の昼休み時間のはずだ。

先輩は制服を着ているので、学校を休んでいる様にも見えない。

 

 

 

『明日は学校に来れそう?』

 

『はい。そのつもりですよ』

 

『そっか』

 

『………』

 

 

 

いつもの高坂先輩ではなく、何だか歯切れが悪い様に見える。

単に、お見舞いに来ただけではなさそうだ。

 

昼休みに来たのも意外だし、何となく2人で話せる機会を捉えた気がする。

 

 

 

『……弟君、走っていた時の事を覚えてる?』

 

『何メートルの時です?』

 

『……800メートル走の時』

 

『………』

 

 

一番、過酷なあの800メートル走か。思い出しただけでもしんどくなる。

覚えてると言われても、倒れた時の事しか覚えていない。

 

俺もすぐに倒れ込んだ訳だし、そもそも地獄の苦しみだったので記憶も殆ど曖昧だ。

 

 

 

『おそろいで倒れ込んだ事ですか?』

 

『おそろいって……。倒れる前の事』

 

『う~ん』

 

『………』

 

 

 

800メートル走を走っている時の事……

……そういえば俺がゴールする前に、先輩が何かつぶやいていた。

 

確か、「勝たせて」「お願い」と言っていたと思う。これかな……

俺は苦しすぎて幻聴でも聞こえ始めたのだと思っていた。

 

 

 

『勝たせて、お願い、ですか?』

 

『………』

 

『………』

 

『………』

 

 

『高坂先輩?』

 

『……恥ずかしいな。やっぱり聞こえてたかー』

 

 

 

幻聴ではなかったようだ。

今にして思うと、なぜゴールの手前でそんな事を言い出したのか謎ではある。

 

その呟きで、ランナーの俺を止める気でいたのだろうか。

 

 

 

『言い訳だけはさせて』

 

『でも、気に病む事でもないですよ』

 

 

 

何かシリアスな話し合いになりそうだ。

俺に至っては、さっきまで幻聴としか思っていなかったのに……

 

「何も聞こえませんでした」と答えた方が良かったな。

「聞こえてないならいいの、じゃあねー」という展開になっていたかも知れない。

 

 

 

『最後、作戦通りに弟君を抜こうとしたけど抜けなかった。走っている途中にパニックになったの。今までの練習の成果や、試合の成績が否定される気がして。才能も全部……』

 

『………』

 

『自分でもなんであんな事を口走ったのか分からないわ。走るのを止める気はなかったの……』

 

『でも、そんなヤワじゃないでしょ。筋肉もすごいし』

 

 

『解ってるわよ!!うるさいわねー!!』

 

『ご、ごめんなさい』

 

 

 

いきなり怒ったので、一気に目が覚めた。運動会以来の緊張が二日ぶりに来る。

まだボーっとしていて、あまり言葉に注意をしなかったせいか、思った事を自然に口にしていた。

 

筋肉か?筋肉はタブーだったか。

先輩は毎日走っているので、筋肉質と思える体をしていた。

 

しかし、女に筋肉がすごいとか言ってはいけないようだ。男なら褒め言葉なのに。

 

 

 

『その、悪気があったのではなく、トレーニングをすればセットで付いてくるものですから』

 

『………』

 

『えっと、逆に筋肉が無ければトレーニングはしていないという訳で……』

 

『もういいわ、とにかくズルをしようとした訳じゃないから』

 

 

『でも俺は途中で倒れて保健室行きだったから。それを思えばまだまだ先輩には勝てない事ですよ』

 

『それ、陸上部員と全く同じ事を言ってる!そういう励まし方はもう要らない。私は本気で走っていたの』

 

『………』

 

『本気で走って負けた事なの』

 

 

 

……何だか、自信をつぶしてしまったようだ。

しかし、もう終わった事であり、また一から心機一転して頑張るしかない。

 

誰かとの勝負となると、いつかは敗北する事になる。その敗北を活かす事ができるかは本人次第だ。

無敗のままなんて奇跡の出来事であり、漫画の世界に過ぎない。

 

 

 

『一つの経験として受け止めて下さい。負けた方が学べる事が多いというし、負けたからといって実力が落ちる訳ではないんですから』

 

『まぁ、そうだけどね』

 

『もしまた高坂先輩と勝負になっても、もう二度と勝つ事はありませんし』

 

『……どうしてよ?』

 

 

『半年前の元の生活に戻るので、今の様なトレーニングをする事もなくなりますから』

 

『勿体ない!!陸上部に来ない?弟君なら絶対に素質あるよ』

 

『無理です。そこまで考えてないですから』

 

『勿体ない……。今は負けた事より、そっちの方がツラい』

 

 

 

今日の先輩は忙しない。

昼休み休憩もそろそろ終わりなので、会話を中断すると肩を落として学校へと向かった。

 

陸上部とか、性格的に合っていない。

それなら非公式新聞部に出戻りして規則も練習も無く、派手に騒ぐ方が性に合っている。

 

しかし、今ではすっかり静かな場所で過ごす方が好きになってしまった。

 

……俺も昼食にしよう。

長話で全部冷めてしまったから、電子レンジで温めなおさないと。

 

 

 




モチベーションの持ちようが難しく、本来書くはずの部分を削りに削ってます。
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