D.C.ⅡS.C. 〔1〕   作:消雪

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〔4〕

~学校~

 

 

『なるほど、昨日はこれの事だったか…』

 

 

 

俺は小さく呟く。

朝の朝礼が始まると、先生はいきなり昨日の出来事から話をし始めた。どうやら、誰かの財布が盗まれたようだ。

 

長々と感情を吐露した説明を聞くのがうざかったが、自発的に出てきてくれる事を望む、と最後に付け加え教室を後にした。

 

午前中の授業は、自習で消化される事になった。

授業が無くなったのはラッキーだが、素直に喜べない。

 

恐らく、俺はマークされているに違いない。用もなく学校に居てた事実は、疑われるに十分な事だろう。

 

 

~教室~

~昼休み~

 

 

『今日の朝の話はびっくりしたね』

 

 

 

教室で昨日作ったサンドイッチを食べていると、小恋が不意に話しかけてきた。

俺はもう財布の盗難事件に関心は無かった。案外、落ちてたりしているかも知れない。

 

 

 

『ああ。結局、誰の財布が盗まれたんだろうな』

 

『誰かの先生の財布らしいよ』

 

『先生なのか。学生ならともかく、先生だと被害額が凄そうだな』

 

『学生だとせいぜい小銭だもんね』

 

 

『桜井!』

 

 

小話もロクに出来ず、委員長の沢井が話に割って入ってきた。

表情からして相当焦っているようだ。

 

 

 

『どうした?』

 

『すぐに職員室に来てほしいそうよ』

 

『昼食中なのに…』

 

 

『えっ、なんで義之が?』

 

 

委員長と小恋との会話を尻目に、教室を出る。

俺には財布を盗んだ事実はない。

 

事実だけを話せばいい。昨日の自分の全ての行動に財布を取った事実はない。

自分自身に安堵させつつ、職員室に向かった。

 

 

~職員室~

 

 

 

足取りが重く感じながらも職員室に到着したら、何人かの生徒が居てた。

恐らく、俺と同様に無意味に学校に居てたから、その時の事情を詳しく説明させられたのだろう。

 

生徒会らしい人から、しばらく待つ様に指示された。

すぐに職員室から他の生徒が出てきて、自分が入る様に言われた。

 

 

『………』

 

 

 

重苦しいムードだ。

職員室に入ると、生徒会の人がズラっと並び、周りも他の先生が見ている。

 

事の重大さを間接的に伝えているのだろう。

とにかく、すぐにでも職員室を出たいので指定された席に座った。

 

教頭先生が出てきて、自分と対面に座った。

話しやすい考慮なのか、やたらとスマイルをかけてくる。

 

 

『桜内義之君だね。生徒を疑うのは良くない事だが、本当の事を話してね』

 

『はい』

 

『早速、本題に入らせてもらうが、君が盗ったのか?』

 

『は?盗っていません』

 

 

 

あまりにも唐突過ぎる。いきなり、そこまで疑うのも失礼だ。

一体、何を根拠にそこまで突っ込んだ質問されないといけないのか。

 

 

『いきなりそこまで疑う以上、根拠はあるんでしょうね!?』

 

 

 

俺は多少怒気を含めて、怒鳴り気味に声をあげた。

すると、先生は手袋を付けて、そっと財布を机の上においた。

 

 

『……これは?』

 

 

 

よく見ると、その財布は少し土が付いている。

また、土が乾いたのもあり、砂が全体的に付いている。

 

 

『君の靴箱から出てきたんだ。財布が見えない様に靴で隠れる様にね』

 

『……なんだと』

 

 

 

どういう事だ。なぜ、俺の靴箱に盗まれた財布があったんだ。

 

唐突だったが、心を落ち着かせ冷静に思考を働かせた。

先ず、俺は盗っていない。それは絶対だ。財布が歩く訳でもない。

 

誰かが俺の靴箱に置いた事になる。

だが、考えを深める前に先に断言しておかないといけない。

 

 

『身に覚えがありません』

 

『………』

 

 

 

教頭先生は、俺の動揺を観察する様に見てくる。

その観察する様な見方は、あまりに気持ち悪い。

 

 

『なぜ、こんなに土が付いているの?』

 

『俺が知る訳ないでしょう』

 

 

 

こいつは、もう俺が盗んだと確定したのか。

キレそうになる。だが、何とか冷静な状態を保った。

 

 

『お金は、いくら盗られていたんですか?』

 

『……いくらだと思う?』

 

『………』

 

 

頭に血が昇ったのが解る。机を蹴り飛ばしてやろうか。

キレる手前だったが、拳を強く握ったところで自分を抑えた。

 

 

『実は、お金は盗られていなかったんだ』

 

『……え?』

 

 

 

『運転免許証もクレジットカードも無くなっていない。盗難にあった先生の確認では、ポイントカードが一つ無くなっている事を聞いている。ポイントが貯まっていても、大したカードではないらしいが…』

 

『……因みに、その財布は俺の靴で隠れている状態だったんでしょう。どうやって見つけたんです?』

 

『内密に生徒会に頼んだんだよ。生徒が隠せそうな場所…。例えば、生徒の机の中やトイレ。靴箱や靴の中、ゴミ箱の下をね』

 

『………』

 

 

『すると、君の靴箱の中から出てきた訳だ』

 

『……何度も言う事になりますが、俺は盗っていません』

 

『君が100%犯人だとは言っていない。ただ、生徒会から目を付けられブラックリスト載るくらい人物だ。前の運動会で賭け事をやっていた事も解っている』

 

『………』

 

 

『偏見。日頃の行いという奴だよ。疑いが晴れないのは解ってほしい。新しく新事実が出るまではね』

 

『………』

 

 

 

~放課後~

 

 

被害にあった先生の財布の中の貴重品は全て残っていたので、警察までの事態には発展しなかった。

だが、この問題は学校内で解決するまで今後も続くようだ。

 

俺の午後からの全ての授業は削られ、昨日の行動を全て話す事になった。

いくら話しても、運動会を思い返していた時間は、さすがに納得させる事ができなかった。

 

午後からの授業は全て休んだんだ。

恐らく、俺の事は先生を通じてクラスメイトに伝わったはず。

 

その誤解を解く労力を考えると、今から気が滅入ってくる。

 

 

『くっそ』

 

 

勢いに任せて思いっきり壁を蹴った。

バンっという乾いた音が鳴り響き、幾つもの誰かの視線が突き刺さる。

 

 

『………』

 

 

 

先ず、教室に戻って鞄を取りに戻らないと。

 

 

~教室~

 

 

『義之』

 

 

教室に戻ると、小恋が駆け寄ってきた。

その後ろには、花咲に雪村、いつものメンバーがいる。

 

 

 

『一体、どうなってるの!?』

 

『……何から話せばいいのか、俺にも解らない』

 

 

職員室で同じ格好を維持していたので、関節がやけにバキバキと音を立てる。

すぐに雪村も花咲も、俺に駆け寄ってきた。

 

 

 

『大まかな事情は先生から聞いたわ。でも…』

 

『でも?』

 

『クラスメイトは義之君に嫌疑を感じていたわ』

 

『…俺がクラスに残っていた時間を、納得させる説明ができんからね』

 

 

ちょっとクラスに残る事が、こんな仇になるとは。災いは唐突に来るものだ。

俺は本当に何もしていないというのに。

 

 

『男の嫉妬心ね』

 

『嫉妬……?』

 

『あんたはいつも女に囲まれる事が多かったじゃない。だから、余計に叩かれている気がするわ』

 

『因果応報とは種類があるようだな。別に悪気や下心は無かったが…』

 

 

『この二人からは確認しづらいと思うから私から言うわ』

 

『……どうぞ』

 

『盗んでいないよね?』

 

『当たり前だ』

 

 

盗んでいないものは盗んでいないと言う以外にない。

だが、盗む盗んでいない事より、疑いをかけられる事の方がツライ。

 

 

 

『その答えが聞きたかっただけ。安心したわ』

 

『どういう事だよ』

 

『あんたの口から盗んでいないと聞きたかっただけ。それだけ聞きたかったから』

 

 

『私もそれさえ聞く事ができれば、もう十分義之を信用できる!』

 

『……小恋、お前なぁ』

 

 

小恋は目に涙をためるほど安心してるし。

そんなに信用ないのか、俺は……

 

 

 

『実際に何があったか、本人から聞くのが一番説得力を感じるものだから』

 

『………』

 

『だから、悪く受け取っちゃだめだよ』

 

『そういうものなんだな』

 

 

確かに花咲の言う通り、本人からの言葉が一番わかりやすいのだろう。

実際、親友と呼べる人間に嘘はつきにくいものだ。

 

 

 




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