D.C.ⅡS.C. 〔1〕   作:消雪

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〔6〕

~学校~

 

 

 

次の日、急に大きな進展となった。

杉並がどこから生徒会からの情報を入手したのか知らないが、既に生徒会が俺と一ツ橋を疑いの目で見られている事を知っていたようだ。

 

そして、今回の事に繋がるか解らないが、ある事実を偶然突き止めたらしい。

予冷がなって、朝礼のせいで中断になったが、1限目をサボって時間を作る事にした。

 

 

~校舎裏~

 

 

 

『俺にまでサボりに付き合わせるとは、この代償は高くつくぞ桜井』

 

『正直悪いな。この埋め合わせは必ずするから』

 

『非公式の方で貢献してもらう事になるぞ?』

 

『……許容範囲内でな』

 

 

 

今日の朝、一ツ橋の顔を拝む前に思い出した。

あの運動会の時、リレーで俺に負けた足の速い男だ。

 

顔なんて意識して見てなかったから、思い出せない訳だ。

 

 

 

『時間も限られているんで、早速本題に入らせてもらうが、何を知った?』

 

 

そういうとスマートフォンを取り出し、ある写真を見せた。

 

俺の知っているスマホより、クオリティが高そうな感じがした。

ラジオに付いている伸縮用のアンテナまで付いている。

 

 

『………』

 

 

 

俺は食い入る様にその写真を見てみる。

桜の木が沢山ある中の地面……。ここは桜公園だ。

 

桜が散っているので、草の上には散った桜の花びらが乗っている。

 

 

『???』

 

 

 

これといった物が見当たらない。この写真が何だというのか。

 

 

『これだけじゃ何にも解らないんだが…』

 

『これが自然の状態だという事だ』

 

 

 

杉並は一旦、スマートフォンを手元に戻すとスワイプした。

そして、再度俺に見せる。

 

 

『………』

 

 

 

今度の写真は、桜公園で男がその場に立っている。

こいつ、一ツ橋なのか。後ろから撮っていた為、誰か解らない。

 

次の写真もあるのかと思い右へスワイプした。

……あれ、何度かスワイプしたが右に動かない。

 

 

 

『趣味が悪いぞ桜内。勝手に俺のアルバムを見るものではない』

 

『なんで、動かないんだ?』

 

『俺の指でしか動かんからな』

 

『高校生のくせに、無駄なハイテクは止めてくれ。次見せてくれよ』

 

 

 

すると杉並はスワイプもせず、次の写真を右へと移動させた。

どうなってるんだ、このスマホは……

 

……一ツ橋だな。今度の写真は前方から撮っている。

 

 

『あいつは足が速いからな、撒くのに苦労したぞ』

 

『顔がバレるのだから、学校で怒られなかったのか?』

 

『その時は覆面してたからな。ゾンビ用のな』

 

『……覆面で人前で走っていない事を祈るよ』

 

 

 

杉並は、もう一つスワイプして写真を見せた。

 

今度も最初に見せた桜公園の地面の様だが、1部分草が無くなっている。

その箇所を拡大して見てみると、草をむしったというか、そこを掘り返したようだ。

 

 

『………』

 

『見つかった財布は、土まみれだったのだろう?』

 

『……ああ』

 

『何か繋がりがあるのではないのか』

 

 

『杉並、これらの写真俺も欲しい。俺のスマホで撮らせてもらうぞ』

 

『ああいいぞ、今日の昼食はお前のおごりでな』

 

『……お前にしては、要望が軽いな』

 

『あまり無茶な事を言ったら、要望に応えてもらえないからな。昼食くらいなら容易かろう。おっと、それと写真は昼食、サボりに付き合った埋め合わせは後日だ』

 

 

『……わかった』

 

 

 

大きな収穫になった。昼食くらい奢ってやろう。

 

後は俺の揺さぶり次第で、一ツ橋の口を開かせる事が出来るかも知れない。

どうしても喋らないなら、これらの写真を生徒会に提出する手もあるだろう。

 

 

 

~昼休み~

 

 

1分でも時間の惜しい俺は、杉並の机に500円玉を置いて我先に教室を出た。

殆ど早歩きだったので、何人かの視線を感じたが構わず無視して足を速める。

 

隣のクラスもちょうど授業が終わったようだ。

だが他人のクラスに入るのは気が引けたので、近くで座っている奴に呼んでもらう事にした。

 

一ツ橋って奴が俺を見ると、やれやれという感じでこっちに足を運ぶ。

特に、変わった様子は見られない。

 

 

『誰?』

 

『隣のクラスの桜内だ』

 

『昼食あるんだけど』

 

 

 

少しでも早く切り上げたい感じで、面倒臭そうに話しかけて来る。

恐らく、こいつとは気が合わないだろう。俺だって一緒に居たくない。

 

 

『少し尋ねたい事があるんだ』

 

『昼食があるから後にしてくれ。じゃあな』

 

 

 

このままだと会話を打ち切られそうなので、予め用意しておいた話題を出す。

 

 

『尋ねたい事というのは、公園で土を掘っていた事だ』

 

『お前、見てたのかよ』

 

『偶然な。先に言っておくが俺は覆面を被った変質者じゃないぞ。で、あれは何をしてた?』

 

『何だっていいだろ!俺に構うな。じゃあな』

 

 

 

大きめな声に、周りにいる奴らは何事かとこっちに向く。

強引に話を中断しにかかるが、ここで話が終わる訳にはいかないので次から次へと話題を出す。

 

 

『職員室で盗難にあった財布、土まみれになってたんだよな』

 

『……何を言いたい?』

 

 

 

相変わらず焦る様子を見せない。

だが、皆の視線を浴びる中で話す事も躊躇われた。

 

このままでは口喧嘩していると、捉えられかねない。

 

 

『場所を変えれるか』

 

『だから昼食があんだよ!』

 

『……だったら話を打ち切りにしようか。俺の代わりに生徒会が聞きに来る事になるだろう。土を掘って何をやっていたか。土まみれの財布に関連があるのか聞かれる事になるけどな』

 

『………』

 

 

何か言い返したいようだが、何も言い返せずにいる。

相変わらず強気で、表情からは不自然な所は見られないが、なぜ土を掘っていたか?その言い分が無さそうだ。

 

いつの間にか、周りはうちのクラスメイトまで見ている。

あまり皆に知られるのも良くないだろう。

 

 

 

『静かに話せる所にしようぜ。話だって早く終わるぞ』

 

『……解ったよ』

 

 

渋々ながら付いて来る一ツ橋をよそに、俺はどうやって白状させるか考えていた。

生徒会に伝える事になる、というのが武器になりそうだが、それでもどの様に話を持っていくか……

 

とにかく、会話させまくっていこう。

 

 

~校舎裏~

 

 

 

『言っとくが昼食はまだだからな』

 

『……俺もまだだ』

 

『じゃあ、さっさと終わらせようぜ』

 

『ズバリ聞くが、お前が先生の財布を盗んだのか』

 

 

『はぁ?お前のやった事だろ』

 

 

そうだ、質問して分かったが、なぜ一ツ橋は生徒会から疑われているのか。

肝心な所がまだ抜けていた。俺はすぐに切り返した。

 

 

『生徒会はお前も疑っているが、何かやったのか?』

 

『何もしてねーよ。適当な事言うな』

 

『……じゃあ、何もしてないのに生徒会が疑っているのか?』

 

『そういう事だよ。ただ、盗まれた時間帯に学校に居てただけだ』

 

 

『………』

 

 

 

少しの間、無言になってしまう。

やはり、白状させる事は出来ない。俺が一方的に会話を続けるにも限度がある。

必死に思考を巡らせるが、これ以上は無理だ。

 

 

 

『お前の話は終わりか。昼食に行かせてほしいんだけどさ』

 

『………』

 

『お前のせいで、時間が大幅に削られたよ。あー、面倒くさかった』

 

『………』

 

 

相手の愚痴すらも思考の為の時間に惜しむ。

最後の切り札にしていた話題にして繋げに繋げれば、あるいは…。

 

 

 

『急に黙り込むなよ』

 

『……いや、悪かった。じゃあ、後は生徒会に話して終わりだから』

 

『はぁ!?』

 

『何だよ』

 

 

 

いきなり大声で俺に食って掛かる。

明らかに感情的になっている。怒っているのか焦っているのか…。

 

 

 

『何でそうなるんだよ!』

 

『生徒会から、今回の件においておかしいと気づいた事があれば、必ず話す様に言われているからな』

 

 

 

本当は、何も言われていないが敢えてそういった事にする。

一ツ橋は、明らかに困惑した様子を見せた。

 

 

『結局、桜公園で土を掘って何やっていたんだ?』

 

『……人違いだろう』

 

『人違い?』

 

『証拠も無いのに、適当な事を言い出すな!なんで俺が桜公園で土なんか掘るんだよ』

 

 

 

今度は、事実を無かった事にしにきたか。

素直に認めようともせず、逃げれるだけ逃げる。間違いなく一番嫌いなタイプだ。

 

俺は無言でスマホを操作し、杉並のスマホからコピーさせてもらった写真を見せた。

 

 

『これ、お前だろ』

 

『何でお前が!お前が覆面していた奴だったのか』

 

『別人だよ。それに今、そんな事は問題じゃないだろ』

 

『……くそ』

 

 

『正直に答えろ。俺は生徒会の人間じゃない。素直に答えれば生徒会にチクらないかもな』

 

『そう言ってチクる気なんだろうが!』

 

『さあな。ただ、何も話さないつもりなら、生徒会がお前を問いただす事になるだろう』

 

『………』

 

 

 

一ツ橋はさっきまでの怒気も無くなり、観念したようだ。

俺より生徒会の方が厄介だと考えたのだろう。生徒会に伝われば最悪、先生にまで伝わる可能性もある。

 

 

『話を戻すが、お前が財布を盗んだのか?』

 

『………』

 

『その黙認はイエスと捉えるぞ。どこで盗ったんだ?』

 

『……保健室だよ。部活で足を痛めてな』

 

 

『そこでその先生と会ったのか?』

 

『寝不足でベッドで寝ていた。上のスーツはイスにおいた状態だった』

 

『……魔が差したわけか?』

 

『そうだよ』

 

 

ようやく観念したか、ここで少し間を置く事にした。

恐らく、一ツ橋が生徒会から疑いの目を向けられたのは、保健室で会っていた事だろう。

 

先生が仮眠を取っていたのなら、尚更の事だ。

無論、俺の行動を知る人間がいないのも仇となっている様だが……

 

そういえば、金は無事だったっけか。

同時に、俺の靴箱に財布を入れられた事も思い出した。

 

 

 

『結局、財布は盗らなかったんだろ?』

 

『は?』

 

『質問の仕方が悪かった。財布の中身を取らなかっただろ?』

 

『あれだけ大騒ぎになるとは思わなかった。警察まで来るから盗むのを止めたんだ。財布を落とした事も両面で考えると思ったが』

 

 

『財布が土まみれになっていたのは?』

 

『うちでは親が勝手に部屋の掃除をするんだよ。かと言って学校に置いても見つかる可能性がある。過敏になって土に埋めたが、意外に人気が多かったのが誤算だった』

 

『ふぅん。で、お前、わざわざ俺の靴箱に入れたのか?俺を犯人に仕立てる為に』

 

『………』

 

 

『理由を聞かせろ。お前のせいで散々な目にあってんだよ』

 

 

 

俺は半ギレで問いただした。

俺だけならまだしも、俺の友人やあの二人にだって大きな心配と不安な思いをさせた。

殴りたい衝動を抑えて、真相を突き止める事のみと考えて堪えた。

 

 

『お前、部活動は何もやっていないだろ?』

 

『それがどうした?』

 

『俺は足の速い人間だと言われていたんだ。だが、部活動をやっていない人間に抜かされて、ボロカスに言われたよ。足を痛めたのもトレーニングのし過ぎだ』

 

『………』

 

 

『おまけにお前はハーレムときている。だからムカついてわざと入れた。お前が財布を隠している様にな』

 

『……そういう事か』

 

 

こいつの気持ちが解らないでもない。

俺がリレーで勝った裏で、こいつはボロカスに叩かれていた訳だ。

 

帰宅部を相手に走りで負けるのは、確かに屈辱かも知れない。

一応俺は走り慣れているが、そんな事はこいつを含め、周りの人間は殆ど知らない事だ。

 

 

『さて……』

 

 

 

杉並のお陰で手がかりを掴む事ができた。

それが無ければ、こいつは絶対に自白するつもりは無かっただろう。

 

最悪、俺は他の生徒から、先生から財布をくすねた人間として見られる事になったはずだ。俺は荒む事になったかも知れない。

それを思えば、こいつを許せないという思いもあるのも事実だが…。

 

 

『俺の話は終わりだ。それで、生徒会に話すのか?』

 

『……考え中だ』

 

『何だよそれ!全部話しただろ!!』

 

『いいから黙ってろ』

 

 

 

現状、俺が生徒会に話せば、財布を盗んだ相手が判明する。

俺の濡れ衣も晴れて、一件落着かも知れない。

 

だがこいつが盗んだと解れば、学校の生徒に知れ渡る事だ。

今までは盗んだ可能性のあるという疑惑だが、これが確定に変わり、生徒からこいつを見る目が一変する。

 

人生も大きく狂うだろう、自業自得かも知れんが……

 

 

雪村の話では、俺のハーレムぶりに男の嫉妬心から、俺を盗人だと過剰に噂されているようだ。

その変な噂の払しょくの為にも、生徒会が『桜井ではない』と本当の事を言うだろう。

 

全部話した事だし、許してやるという気持ちがない訳ではない。、

だがこのままでは、俺と一ツ橋の2人のどちらかが犯人という事になる。

 

良い解釈があったとして、先生が財布を落として紛失したところか。

さて、どうしたものか……

 

 

『黙り込むなよ。生徒会に言うのか』

 

『………』

 

 

 

財布も無事であったし、俺の友人のみ必要があれば真相を話す事にするか。

勿論、その友人には『絶対に真相は誰にも喋るな』と言わないといけないが。

 

 

『ん?』

 

 

 

財布が無事……?何か見落としている気がする。

 

そうだ、ポイントカードの紛失があったはずだ。

教頭先生の話では、大したカードではないらしいが……

 

 

 

『一つ忘れていた。お前、ポイントカードを1枚くすねただろ?』

 

『え、はぁ?』

 

『財布に挟み込んでいたんだ。落ちる物ではないよな』

 

『悪いが知らん』

 

 

『……トボけるな。今、冷静さを取り戻したか知らないが、最初は動揺して答え方が変になったぞ。表情もな』

 

『喉が詰まっただけだ。揚げ足取るなって』

 

『本当に盗んでいないんだな?』

 

『ああ、本当だ』

 

 

『………』

 

 

 

疑ってかかったが、教頭は大したカードではないと言っていた。こだわる必要はないのかも知れない。

 

この事は大した問題ではないと思うが……。妙に引っかかる感じもするのも確かだ。

恐らくだが、くすねていると思う。後々、尾が引かなければいいんだが……

 

 

『ちゃんと反省しろよ』

 

『解ってるって』

 

『大半の事実が判明した事だし、生徒会には黙っておいてやるよ。ただ、身内や友人には話す事になりそうだがな』

 

『だったら意味ねーだろ。そいつらの口から広がるだろうが!』

 

 

『誰にも喋らない様にしておく。皆、いい奴らだから約束は守ってくれるだろう。今回の事で心配されてんだ。他の奴らの心労も考えてやってくれ』

 

『素直に話すんじゃなかったぜ。正直、後悔してる』

 

『これでも好条件なはずだ』

 

『1カ月間、何の音沙汰も無ければ信じてやるよ』

 

 

今回の事に謝りもせず、反省も無し。おまけに好条件なはずなのに不満ときた。

想像以上のクズだな、こいつは。

 

 

 

『話は終わりだ。もう行っていいぜ』

 

『やっとか。もう昼食の時間がねーよ』

 

『愚痴っていないでさっさと行け』

 

『はいはい』

 

 

やっと解放されるとばかりに、教室に戻った。

俺は壁を背にもたれかかり、話の内容を整理していた。

 

 

『ふぅ…』

 

 

 

やはり自分一人の考えより、誰かに話して意見をもらいたい所だ。

早速、喋る事になりそうだ。

 

空きっ腹なのに、思考を働かせすぎだ。

さすがに疲れてきたので、一旦考えるのは止めにして教室に戻る事にした。

 

 




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