D.C.ⅡS.C. 〔1〕   作:消雪

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〔9〕

~公園~

 

 

 

『5時か……、いや17時と言うべきか……』

 

 

杉並と分かれた後、すぐに家に帰る気になれず、こうしてぼんやりとしている。

今行っているランニング、翻弄されっぱなしの財布の盗難事件……

 

一方的な外部からの干渉と言うべきか、正しい判断がまるで出来ていない。

自分の行動を見直す事すらも、正しく見直せているかどうか……

 

……いや違う、決定的に自分を見失い始めたのは、あのトトカルチョの一件だ。

 

 

『………』

 

 

 

それと、一ツ橋がそこまで卑劣な奴だとは思っていなかったんだ……

思っていなかったんだよ。そいつがどんな奴か解っていれば、容赦しなかっただろう。

 

しかし、何を言っても後の祭りだ。

後の……

 

 

『……しかし、浅知恵な事をやるものだ』

 

 

 

杉並の話では、複数の生徒が嘘の証言をしたらしいが、全員一ツ橋の仲のいい奴を選ぶとか、逆に怪しまれるだろう。

 

……一ツ橋の仲のいい奴しか、そんな事やってくれそうにないか。

 

 

 

~帰宅路~

 

 

家路に着く時から、少しだけビクビクしていた。

 

授業を無断欠席して、音姉が激怒させてしまったか気がかりだった。

無論、音姉を怒らせた時は高確率で家の前で待機して網を張っている。

 

 

『………』

 

 

 

俺は家の離れから家が正面に見える様に、角を利用して隠れつつ、家の前に誰も待機していないかチェックした。

 

 

『………』

 

 

 

敵兵二名確認ってか、嗚呼もう……

 

音姉も由夢も、家の前で待っている。表情まで確認できないから、怒っていたか解らないが、逃れようがない事だけは悟った。

こうして居ても仕方がないので、家へと向かう。

 

 

~家~

 

 

 

『弟君、授業をサボってどこへ行ってたの?』

 

『バーガーショップへ』

 

 

 

淡々と喋る様子から、怒っているというか仕方がない様な感じだ。

緊張感が一気に体内で溶けていく。

 

 

『兄さんの奇行、全て話してもらえますか?』

 

『そう一気に質問するな。出来る限り、説明するつもりではいるから』

 

『授業でもないし部活動もやっていない。しかも、制服で走り出すなんて……。財布の盗難事件を追及され過ぎて、本気で気がおかしくなったのかと思いましたよ』

 

『失礼な事を……、気が滅入っているのは事実だがな』

 

 

 

最後の言葉は失言だったのか、二人の表情がにわかに曇った。

生徒会からの追及、先生からの追及、いい加減にこの問題は終わってほしいところだ。

 

 

 

『弟君……』

 

『よし、この話は長くなりそうだ。先にお互いに飯も風呂も済ませてから話そう』

 

『……それも、そうね』

 

『それと由夢』

 

 

『何ですか?』

 

『悪いが、由夢には途中で席を外してもらう事になるかも知れない』

 

『はぁ!?、どういう事ですか!納得のいく説明をして!』

 

『由夢ちゃん、声が大きすぎるよ』

 

 

 

ヤバい、失言だったか……

由夢の表情、目つき。マジで怒ってしまっている。

 

……由夢も俺を心配していたのに、心ない事を言ってしまった。

俺は慌てて訂正した。

 

 

『すまん、やっぱり居てくれて構わない。ただ、感情的に内密でいられるか心配になったんだよ』

 

『それで!?』

 

『お前も俺を心配してくれていたのに、酷い事を言ったと改めて思う。本当に今のはすまなかった』

 

『……ふん、解ればいいんですよ。言葉にはもっと気を付けて下さい』

 

『はい……』

 

 

『じゃ、じゃあ弟君、後でね』

 

『ああ、後で』

 

 

 

この状況を見かねた音姉がタイミングを図って、会話を中断してくれた。

しかし、由夢だけではない。音姉も内密に徹してくれるか解らない。

 

考えれば、俺だって音姉や由夢が俺の様な状況に陥っていて、尚且つ、恩情を仇で返す様な奴がいたら内密に徹する事が出来るか解らない。

 

しかも、今はまだ考えがそこまで整理できていない。

整理する時間もない。

 

 

~家~

~風呂場~

 

 

 

汗臭かったので夕飯より先に、風呂を済ませた。

ジーンズにTシャツに着替えると、冷蔵庫に残っている食材で、夕飯を何にするか考えつつ台所に向かった。

 

 

 

『あれ』

 

 

台所のテーブルには、既にから揚げやサラダ、ご飯が用意されている。

居間には既に音姉も由夢もスタンバイしている。

 

 

 

『兄さん、遅いです』

 

『それ食べたら、こっちに来てね』

 

『……りょうかい』

 

 

早すぎる……、本当に二人共、夕飯も風呂も済ませたのか。

女の風呂って長い時間かかると思うのだが。

 

いやいや、俺の風呂はそんな時間のかかる事はしない。しかも、向こうは一人一人の順番だ。

という事は二人共、風呂も夕食もまだなのでは……

 

 

『………』

 

 

 

夕飯を食べながら、あり得ない二人のスピーディな行動を考えていた。

 

 

~居間~

 

 

 

『兄さん遅いですよ』

 

『食べたばかりだし、ちょっと休憩してから話す?』

 

『………』

 

 

『どうしたの?』

 

『ちょっと動かないで』

 

 

 

二人の?マークを無視して、髪の毛を匂ってみる。

音姉の髪からはシャンプーの匂いが、これでもかという位に香りを発している。

 

 

『由夢も』

 

『一体何なんですか!?』

 

『ほれ、ちょっと動くな』

 

 

 

由夢の髪の毛はまだ乾ききっていない。音姉とは違う、シャンプーの香りがしている。

食事はともかく、風呂は済ませた様だ。

 

 

『変な弟君』

 

『変じゃなく変態でしょ』

 

『違う。俺の入浴など時間がかからないのに、なんで音姉も由夢も俺より早いんだよ?しかも、音姉の次に由夢が入浴するから、絶対に俺より先に待つなんておかしいだろ』

 

 

『今日は、ね』

 

『時間が惜しいから、二人一緒に入浴を済ませたんですよ』

 

『………』

 

 

そこまでして時間を短縮するか。

 

風呂の疑問は解ったとして、夕飯を済ませるのも早すぎる気がする。

いや、夕飯を済ませていないのでは……

 

 

『夕飯は?殆ど食べてないだろ?』

 

『心配しないで。ちゃんと食べたよ。ね、由夢ちゃん?』

 

『……兄さん、どうでもいい質問し過ぎ』

 

 

『幾ら何でも早すぎるだろ!入浴時間だけの事を考えると、夕飯を食べる時間はどこにある?』

 

『服を着替える時でも、入浴時でも口は動かせるでしょ』

 

『兄さんもそれ位しなさいよ』

 

 

『………』

 

 

 

そこまでして時間を短縮するか……

別に夜遅くなっても、家が隣だからそこまで時間に過敏になる必要はない。

 

この場合は、俺への強い心配から来ているのだろうか。

女の本気の行動は、普段ではあり得ない事をするんだな……

 

 

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