捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

15 / 89
DOWN TOWN #5

 メイド喫茶前に到着すると、既に結構な人だかりができていた。ライブ映像のコメント欄を見た時も思ったが、割と人気があるようだ。

 さて、東條さんはどの辺りにいるのだろうか……。

 少し離れた場所から、そっと人だかりの隙間を見つめていると、背後に人の気配を……

 

「ふぅ~……」

「っ!?」

 

 耳元に生温かいものがかかり、ぞわっと総毛立つ感覚がした。

 

「うん、ええリアクションやね」

「い、いや、何やってんすか。心臓止まるかと思いましたよ……」

 

 振り返ると、小悪魔めいた彼女の笑みがそこにあった。いや、この人は本物の小悪魔じゃなかろうか。

 普段は巫女服を着ている小悪魔は、今日はいつかのようなメイド服姿だった。

 

「…………」

「ふふっ、どうしたん?ぼーっとして」

 

 彼女はぴょんっと跳ねて、俺の前に立った。その際、ある箇所が大きく揺れ、そこだけかなり悪魔的だった。

 そこで再び彼女と目が合う……おかしい。やましいところなど何一つないはずなのに、ギクッとちゃったぞ……。

 彼女は俺の視線を悟っていたのだろうか、東條さんは目を細め、口を開いた。

 

「どこ見とるん?」

「……こ、このライブの成功を夢見ています」

「そっかぁ、このライブの成功の鍵はウチの胸に詰まってるんやねぇ」

「…………」

 

 ……さて、家に帰ったら腕立て伏せをしっかりやりますかね。

 

「お待たせ!」

 

 いきなりの大声に視線を向けると、そこにはさっき遭遇した金髪さんがいた。

 早すぎる再会に驚いていると、東條さんが彼女に声をかけた。

 

「あっ、エリチ。随分早かったやん」

「ええ。全力で走ったから何とか……あ」

 

 彼女と目が合う。

 俺はとりあえず会釈しておいた。

 

「……どうも」

「ふふっ、また会ったわね」

「あら?二人は知り合いなん?」

「いや、その、知り合いといいますか……」

「今さっきそこでぶつかったのよ。うんめぃ……偶然ね」

「…………」

 

 この人、なんか変な言い間違いしなかったか?いや、まあ気のせいか。

 東條さんは、俺と金髪さんを交互に見てから、今度はさっきとは違う質の笑みを浮かべた。ただ、どこがどう違うのかまではよくわからなかった。

 

「そう言う希こそ彼と知り合いなの?」

「うん。ウチと比企谷君は仲良し小好しだもんね~」

「え?あ、その……」

「あれ?仲良し小好しだと思ってたのはウチだけやったんかなぁ?」

 

 くっ!何でいきなりこんなテンションに!あと近い近いいい匂い近い!

 するとエリチと呼ばれた金髪さんは、強引に俺と東條さんの間に割って入ってきた。

 

「ほらほら、そんな絡み方したら彼が困ってるでしょう?」

 

 この人もこの人で近いんだが……そ、そして、いい匂い……。

 

「アンタ達、ライブ前に何やってんのよ」

 

 今度は年下っぽい女子がやってきた。確かこの子は……

 

「にこっち、どうしたん?」

「どうしたん?じゃないわよっ、絵里も忘れ物取ってきたんなら早く着替えないと、そろそろ時間よ」

「あっ、そうだったわ。じゃあ、比企谷君……だったかしら。ライブ楽しんでいってね」

「あ、はい……」

 

 二人はパタパタとメイド喫茶に入っていった。金髪さんが何度か振り返りながらだったのが気になるが……。

 

「さぁて、ウチも戻らんと。比企谷君、熱い声援よろしく」

「……まあ、その……心の中でなら」

「ふふっ、じゃあ行ってくるね」

「……ええ」

 

 そう言って駆け出す彼女のやわらかな微笑みは、やっぱり大人びた年上のもので……。

 何故か頬がじんわり熱くなるのを感じた。

 

「あっ、そうそう、にこっちはあれでもウチやエリチと同い年やからね~」

「……そうですか」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。