捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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君は天然色 #4

 何とかサンオイルを塗り終わり…… 

 

「比企谷君、まだ塗っとらんやろ?」

「…………」

 

 くっ……話数が変わったから、いつの間にか終わってた的な流れになると思っていたんだが……。

 どうやらキチンとやらねばいかんらしい……果たしてメンタルが持つのだろうか?絢瀬さんでだいぶ削られたんだけど。

 いや、腹をくくれ……とりあえず……何も考えるな。

 

「じゃ、じゃあ……塗ります」

「うん、お願い♪」

 

 俺は手にオイルを垂らし、彼女の剥き出しの背中に視線を落とした。

 白い肌は陶器のように滑らかで、その曲線はまるで芸術品のようだ。

 そして、腰はしっかりとくびれているのに、それなりに肉付きはいい。このスタイルが、あの巫女服の下に隠れていたかと思うと、何だか背徳的な気持ちに……おい、考えないと誓ったばかりだろうが。

 ようやく背中に触れると意外なくらいの柔らかさに、鼓動が跳ねた。

 

「ひゃうっ!」

「っ!」

 

 ……びっくりしたぁ。

 意外なくらいかわいらしい声に、逆にこっちが驚いてしまう。い、今の本当にこの人の声か?

 

「あはは、ごめんねぇ。くすぐったくて、つい……」

「わ、わかりました……」

 

 気を取り直して、もう一度背中に手を触れる。

 

「んぁっ……!」

「……あの……わざとやってますか?」

「ち、違うよ~。だから、なるべくはやく終わらしてくれんかなぁ」

「りょ、了解……しました」

 

 まだ来たばかりなのに、ここまで心身を削られるとは……やっぱ常に心身安定しているボッチ最高だな。

 

 *******

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ようやくオイルを塗り終えた俺は、精神力を使い果たしたせいか、砂浜に寝そべっていた。おかしい。定番のラッキースケベなイベントのはずなのに、こんなに疲労感があるなんて……リトさんやっぱパネェな。

 

「ほら、比企谷君も泳がんともったいないよ?」

 

 この疲労感の原因である東條さんは、さっきのあれこれを完全に忘れ去ったように、いつものテンションに戻っていた。やっぱりわざとだったんじゃねえか?この人……。

 

「それとも、今度はウチが比企谷君にサンオイル塗ってあげようか?」

「いや、俺はそういうのいいんで……」

「じゃあ、ウチが泳ぎ教えてあげる♪」

「……普通に泳げるんですが」

「え~、じゃああっちの沖まで競争する?」

「いや、しませんから。アンタめっちゃ体力ありそうだし」

「あははっ、比企谷君はウケるなぁ」

「いや、ウケねえから」

 

 やめて!このやりとりは別のキャラクターとのだから!先回りしないで!

 

 *******

 

 東條さんにからかわれながら、テキトーに波に身を委ねていたら、いつの間にか昼になっていたので、小町と東條さんは昼食を買いに行った。

 ひとまず買っておいた飲み物に口をつけると、絢瀬さんがずいっと身を寄せてきた。近い近い近い!

 

「ふふっ、比企谷君、楽しんでる?」

「……まあ、ぼちぼち」

「それはそうと、比企谷君は希と付き合ってるの?」

「っ!げほっ、げほっ!」

 

 唐突すぎる質問に焦ったせいか、飲み物が気管に入ったようだ。

 

「だ、大丈夫!?ご、ごめんね……」

 

 何回か咳き込んだものの、絢瀬さんに優しく背中をさすられ、何とか早めに立ち直れた。

 

「……ふぅ……だ、大丈夫ですけど、てか、いきなりどうしたんですか?」

「んー、そりゃあ、気になるわ。親友がいつの間にか素敵な男の子とお近づきになってるんだもの」

「はあ……」

 

 何とか平静を保っているが、素敵なという誉め言葉に心がしっかり反応してしまっていた。

 

「それで……質問の答えは……」

「いや、言うまでもなく付き合ってませんよ」

「そっか……なら、えと……り、りり、り、立候補しようかしら……チカ」

「……はい?」

「あわわ……ご、ごめんなさい!今の忘れて!」

 

 絢瀬さんは、走って海の中へと突っ込んでいった。その瞬間の海が割れたような衝撃に、周りの客は恐れ戦いていた。

 

「…………」

 

 どうしてそんな事を聞くのかと悩むほど鈍感ではない。だからこそ、対応に困るのだろう。色々と疑問はあるが、せめて今だけは、この喧騒と波音がかき消してくれたらいいと思った。

 

「お待たせ~」

「焼きそば買ってきたよ~」

 

 急に二人の声が聞こえたので、ビクッと肩を跳ねさせてしまう。何も後ろめたいことなどないのに。

 

「あれ?エリチは?」

「ああ……海に向かって走り出しました」

「な、何で?」

「よくわからないんですが……」

「ふぅ~ん。よくわからないんやね」

 

 東條さんは、前屈みになり、こちらの顔を覗き込んできた。そのせいで豊満な胸がさらに強調されているのは、わざとなんでしょうか。

 

「……ほんとに、わからない?」

「…………」

 

 上目遣いが意味していることは何だろうか?

 彼女の質問への答えはわかっていても、それだけはさっぱりわからなかった。

 からかっているのか、試しているのか。それとも……

 

「あのー、お二人さん?いちおー、小町がいるんだけど、忘れてないですか?」

「……いや、別にそんなんじゃねえよ」

「ふふっ、忘れとらんよ。小町ちゃん♪ エリチ呼んでくるね。そろそろ危険人物扱いされそうやし」

「はいは~い、お願いしま~す」

「すぐ戻ってくるからね。自称鈍感くん♪」

「…………」

 

 東條さんの背中を見ながら、俺は何とも形容しがたいこの気持ちに、どんな名前がつくのだろうかと、つい考えそうになり、慌ててかぶりを振った。

 ……今は考えなくてもいいだろう。

 

「お、お兄ちゃんがあんなやりとりするなんて……はやくお母さんにメールしなきゃ!」

「…………」

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