捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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いつか晴れた日に #8

 わしわしから解放され、ようやく体力が回復し始めたところで、もうだいぶ陽が傾いていることに気づいた。

 希さんも同じことを考えていたのか、すっと立ち上がった。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」

「……送ります」

「うん。それじゃあ、お願いしよっかな」

 

 希さんの言葉に、少しだけ寂しさを覚えたのは、なんだかんだ今日が楽しかったからだろうか。

 半年前は思いもしなかったであろう考えに、人知れず苦笑いをしてしまった。

 

 *******

 

 駅前はいつものような人通りの多さで、色んな人が帰路に着いているのが、何となくわかった。

 希さんは、こちらを振り返ると、いつものからかうような笑みを見せた。

 

「八幡君。ウチが帰るからって、そんな寂しそうな顔せんでもええよ」

「いや、無理っすね。寂しくて堪らんので、帰ったらプリキュアでも観ることにしますよ」

「素直でよろしい♪あ、今度またμ'sが出るイベントあるから、ヒマやったら来てね」

「ええ。ヒマじゃなければ行きませんけど……」

「あらあら、そんなこと言ってたら、ウチの最高の一瞬を見逃しちゃうよ?」

「そりゃあ非常事態ですね。なるべく行けるように最善を尽くしますよ」

「最善って単語が八幡君とミスマッチすぎる件について」

「自覚はあります。おそらく二度と使わないでしょう」

 

 自然と言葉が零れるままに会話をしていると、このまま長い時間過ごしていられそうな気がした。もちろん、そろそろ帰るけど。

 彼女は今度は温かな日だまりのような笑みを見せた。

 

「じゃあ、またね。八幡君。今日は付き合ってくれてありがと」

「いえ、どういたしまして。てか、こちらこそ気遣っていただいて、ありがとうございます」

「ウチはやりたいことやってるだけ~。それじゃっ」

 

 そのまま振り返る事なく改札をすり抜ける彼女の後ろ姿は、ほんの少し大人で、なんとなく可愛らしく、見とれてしまった。

 

 *******

 

「あ、ヒッキー、やっはろー!」

「……おう」

 

 こちらは休み明けで、まだ体に休日の緩さが残っているのだが、由比ヶ浜のほうはそうでもないようだ。朗らかな笑みのまま、俺の背中をはたいてきた。

 

「ほら、もっとシャキッとしなよ!この前デートしたばっかなんでしょ?」

「いや、あれはデートじゃ……てか、なんでお前知ってんの?エスパー?」

「違うし。フツーに見ただけだよ。駅前で」

「…………」

 

 そりゃあまあ、由比ヶ浜も千葉で生活しているわけで。

 別に駅前にいたところで、不思議でもなんでもない。

 

「ちなみに、ゆきのんもいたよ」

「…………そうか」

 

 何と返せばいいかわからないので、とりあえず返事だけしておく事にした。特に何かを疑われているわけでも……

 

「付き合ってるの?」

「いや、違う」

 

 そこは即答しておいた。てか考えたそばからこんな質問が来るとか、こいつやっぱりエスパーなんじゃねえの?俺の周り、超能力者ばっかか。

 

「そっかぁ、付き合ってないんだね」

 

 そう言いながらお団子をくしくしと弄る由比ヶ浜の表情は、なんとも形容しがたいものがあった。

 なので、そこに触れるのはやめておいた。

 

「そろそろ教室行かないと、チャイム鳴るぞ」

「あ、そだね。行こっか」

 

 そのまま教室の前まで並んで歩いたが、かつかつと響く足音は、やけに揃っていて、やたら大きく響いた。

 

 *******

 

 μ'sは曲作りの為、また合宿に行っているらしく、おそらくその間は連絡は来ない。

 ……今さらだが、定期的に電話がかかってくるのが、当たり前になってたんだな。

 そう考えると、俺もこの半年くらいでだいぶ人間強度が下がったのかもしれない。

 

「お兄ちゃん、そういう時は自分から電話すればいいんだよ」

「……何の話だよ」

「今のお兄ちゃんが何考えてるかなんて、顔に書いてあるよ」

「…………そうか?」

 

 あながち否定できない辺りが悔しい。いや、これはそういう気になるではなくて、ただあの人が誰かをからかいすぎて怒らせていないか、とかそういう心配みたいなものだ。一応、バイト先の後輩として……。

 すると、携帯が震え出す。どうやらメールを受信したみたいだ。またどっかからのスパムメールだろうか。

 確認すると、希さんからのメールだった。

 

『そんな寂しそうな顔してどうかしたん?』

 

「…………」

 

 ほんの一瞬ではあるが、マジで焦った。

 実はその辺の中にいるんじゃねえかと思ったぞ。

 スピリチュアルなパワー、恐るべし。

 ……いや、テキトーに送っただけなんだろうけど。

 

 *******

 

「希、どうかしたのですか?」

「なんかニヤニヤして楽しそうだにゃ~」

「ふふっ、な・い・しょ♪」

 

 

 

 

 

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