捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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いつか晴れた日に #9

『金曜日、秋葉原来れる?』

 

 合宿から帰ってきた希さんのメールには、そんな短い文章が書かれていた。

 さて、どうしたものか……金曜日は来るべき休日の為、英気を、あ、考えてるうちに『行きます』とか返信しちゃってるよ。どうしたんだ、俺。イミワナンナイ。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?いきなりニヤニヤして。なんかキモイよ?」

「小町ちゃん。言葉遣いが乱暴よ。あと別にニヤニヤしてない」

「してたよ。じゃなきゃ言わないもん。どうせ希さんの事考えてたんでしょ」

「いや、休日に思いを馳せていただけだから」

「ウソだー。さっき希さんから、イベントのお誘いのメール来たから、それでニヤニヤしてたんでしょー?」

「……えっ?お前にも来たの?」

「当たり前じゃん。希さんは大事なお義姉ちゃん候補……じゃなくて、お友達だからね」

「…………」

 

 小町ちゃん、本音はもう少し隠そうね。

 まあ、そりゃあ友達だから呼ぶよな。危うく気持ち悪い勘違いをするとこだったわ……。

 

「まあ、それなら一緒に行くか。他は誰に送ったんだろうな」

「多分、結衣さんとかじゃないかな。あ~、楽しみだなぁ♪」

 

 小町の言葉に、それだけは間違いないと頷いておいた。

 

 

 *******

 

 ライブ当日。

 いつかのように、学校帰りにそのまま駅に向かっているのだが、今日は一人ではない。 

 

「ヒッキー、楽しみなのはわかるけど、歩くの早いよ~!」

「確かに……この男にしては、珍しく動きが機敏ね」

 

 今日は総武高校メンバーもいる。小町も既に駅にいるらしい。やはり、知り合いには声をかけていたようだ。

 由比ヶ浜に半ば強引に連れられた雪ノ下ではあるが、その表情はさほど嫌そうではない。さらに……

 

「八幡、μ'sのライブ楽しみだね」

「あ、ああ……」

 

 やばい。スクールアイドルのライブの前に、既に天使降臨してやがる。てか、もう戸塚もライブやりゃあよくね?何ならファンだけでなく、プロデューサーを引き受けるまである。

 

「ど、どうしたの、八幡?そんなじっと見て……」

「え?あ、悪い……てか、少し急ぐか。もう小町が待ってるらしい」

「待てい、八幡よ。我もいることを忘れておらんか?」

「…………」

「何故、知らぬふりをする!?」

「あ、いや、悪い。完全に忘れてたわ」

 

 ライブ会場に着いてもいないのに、こっちはこっちで無駄に賑やかだった。

 

 *******

 

 秋葉原に到着し、UTXの前まで行くと、由比ヶ浜などの初めて見る面子は、驚愕の表情を浮かべていた。

 

「うわあ、すご……これ、校舎なんだよね」

「前、テレビで見た事あるけど、実物はさらにすごいね」

「今からこの中が見れるなんて……あ、お兄ちゃん、希さんに連絡した?」

「一応、メールは送った」

 

 雪ノ下もこの校舎には感心しているのか、興味深げに見上げている。てか、この子なら通ってても全然違和感ないんだが……。

 ちなみに、材木座はUTX近辺から女子の比率が増した事もあり、少し大人しくなってた。わかるわ、その気持ち。

 まあ、女子校に入るのは、かなり遠慮したいところではあるが、まさかここまで来てUターンするわけにもいかない。

 

「……とりあえず中入るか」

「そだね。お兄ちゃん、今から女子校に入るんだから、目つきどうにかならない?」

「いや、今日は大丈夫だろ。皆スクールアイドルの事しか考えてないからな」

「皆、はやくしないと置いてっちゃうよ~!」

「由比ヶ浜……あいつ、初めて来た場所でよくあんな……」

「由比ヶ浜さん、迷子になるからこっちにいらっしゃい」

「なんか子供扱いされてる!?」

 

 *******

 

 本番前、ウチは柄にもなく緊張していた。やっぱり、A-RISEと一緒にライブをやるというのは、かなりプレッシャーがかかる。普段そういうのを感じないウチでもこうだから、一年生はもっと緊張してるかもしれない。

 

「希、どうかしたの?」

「エリチ……いや、なんでもないよ」

「隠さなくてもいいのよ。私もすごく緊張してるから」

「あはは、わかった?」

「ええ。だから、一人にしておけなかったのよ」

 

 いつになく大人びたエリチに、なんだか照れてしまう。この子はたまにこうだからズルい。ポンコツのくせに。

 でも、そこが最高に好き。

 

「……おおきに」

 

 照れ隠しに、少しおちゃらけながらお礼を言ったところで、携帯が震えた。

 何故か、それだけで誰からか確信した。これこそ本当のスピリチュアやね。

 そして、その予感はズバリ当たっていた。さて、どんな内容やろうね?

 

『着きました。応援してます』

 

 ついつい笑ってしまう。

 普段の語彙力からは想像もつかないくらい短い文章。さらに、シンプルといえば聞こえはいいが、もっと何か書くことあるんじゃないかとつっこみたくなるような内容。

 でも、それが何故かすごく嬉しくて……。

 頬が緩むのが、自分でもはっきりわかった。 

 

「もう大丈夫そうね。なんか悔しいけど……よし、気合い入れていくわよ!」

「ふふっ、そうやね」

 

 私は、心の中で捻くれた彼に『ありがとう』を告げ、皆の元へと駆け出した。

 

 

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