捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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ドリーミング・デイ #4

 どうしてこうなった……。

 そんな呟きが口から漏れてきそうな現状に、思考回路が上手くついていかない。

 だが、そんなことはお構い無しに、時間と物事は進んでいく。

 一方、希さんは「フンス!」と気合いを入れていた。

 

「さあ、八幡君。ウチらも頑張ろうか!」

「いきなりの参加で、よくそんなテンションになれますね」

「まあ、こんな機会滅多にないし?今日のウチは総武高校二年西條望として、八幡君が優勝できるように全力を尽くすよ」

「いや、優勝とか……てか、大丈夫ですか?練習もなしに二人三脚とか……」

「まあ、大丈夫なんやない?ウチら割と一緒におるやん?」

「何の根拠にもなってねえ……てか、めっちゃ楽しそうっすね」

 

 俺の言葉を聞いた彼女は、キョトンとしてから、いつもの悪戯っぽい笑みを見せた。

 

「……君とだから、楽しいんよ」

「…………そうですか」

 

 いや、そういう言い方は反則じゃないんですかね?べ、別に悪くはないんだけどさあ……いや、もう何て言うか、反則すぎて反則というか。

 てか、もう10月なのに暑いな。陽射しのせいで、顔が火照ってやがる。勘弁してくれ。

 

 *******

 

 そうこうしているうちに、すぐに順番が回ってきた。

 普通の徒競走とは違う緊張感に戸惑いながらも、深呼吸して気持ちを整えると、希さんが笑顔を向けてきた。

 

「八幡君、準備はいい?」

「……はい」

 

 この心臓の強さはステージで培われたのだろうか。元々だろうか。やはり心強い。

 そして、平塚先生の合図で、一斉にスタートした。

 自分が思ったよりもずっとスムーズなスタートに驚きながら、順番に足を運ぶと、自然と速度がついてきた。

 

「はっ……はっ……」

「はっ……はっ……」

 

 息もぴったりのようで、急造にしては中々のコンビネーションだと思う。だが、問題が一つ。

 

 …………右下で何かが揺れてる!!

 

 そう。スタートと同時に、視界の右斜め下で、希さんの豊満なアレが激しく揺れ動いている。

 まったく予想できなかったわけではないが、これは想像以上だ……。

 何とか視線を前に、むしろやや上向きに固定しているが、それでもやはり気になってしまう。だって男の子だもん!

 ちなみに、順位のほうは現在8組中3位。この状況を考えれば、中々の位置だろう。

 だが、ハングリー精神豊かな彼女はそう考えてはいないらしく、まだスピードをはやめようとしている。

 これ以上はぶっちゃけこける危険性が高くなるので、遠慮したいところではあるが、彼女に合わせて走らないといけないのも事実。

 さらに向こうへ、プルスウルトラ!的なノリでまた1組追い抜くと、もう1組もすぐ近くにいた。

 小気味良いリズムはテンポを上げ、やがて前には誰もいなくなる。

 あと少し……もう少し……。

 だが、欲をかきすぎたのか、どちらからともなく足がもつれ、紐がほどけた。

 

「あっ!」

「っ!」

 

 踏ん張ろうにも、最早こけるのは避けられないようだ。だが、この人には……

 最近の運動の成果か、ただのまぐれか、何とか彼女の体の下に、自分の体を滑り込ませた。  

 すると、顔面に柔らかな衝撃がきて、後頭部が地面にぶつかった。

 

「ぐっ!」

「だ、大丈夫!?八幡君!」

「……何とか」

「もう……無理しすぎ。あっ、ウチら1位みたいやね」

「そ、そうすか」

 

 希さんに手を引かれ、ゆっくり立ち上がると、赤組が盛り上がっているのが見えた。

 

「あの謎の二人組速かったなー」

「あんな人達居たっけ?」

「まあ、1位だし良くね?」

「あの女の人美人だよねー」

「む、胸……胸……」

「すごかったな……色々と……」

「あの人、どっかで見た事あるような?」

「つーか、あの男羨ましすぎるだろ」

「ちっ!ボッチの癖に!!」

 

 うわあ……1位になっただけでなく、最後にこけたせいで、やたら目立ってしまったようだ。そのせいか、何やら色々言われている。てか何人かムカつく事言ってんな。棒か何かでぶん殴ってやりたいわ。

 ジロリと声のする方を睨んでいると、希さんが肩をつついてきた。

 目を向けると、彼女は何故かしてやったりみたいな笑顔を浮かべている。

 

「君、なんかチラチラこっち見てたよね」

「っ…………」

「さっき、思いきり胸が顔に当たっとったね」

「っ…………」

「八幡君やらしー♪」

「…………」

 

 何も言い返せない。いや、確かに下心みたいなのがゼロだったわけじゃないが。

 すると、彼女はそのぽってりした唇を俺の耳元に近づけ、優しい声音で囁いてきた。

 

「でも、ありがと。かっこよかったよ♪」

「っ!!」

 

 だから反則技止めて欲しいんだが……。

 口元を手で覆い隠すと、希さんはすぐに心配そうな表情になり、俺の服の砂埃を優しくはたいた。

 

「じゃあ、ケガした所を……」

「あ、それは自分でやっとくんで。希さんは早く隠れてくれると助かります……」

「う~ん、そうやね。じゃあ、顔に残った感触はウチからのご褒美って事で♪」

 

 こちらが何か言い返す前に、彼女はペロッと舌を出し、矢澤さんのいる場所へと小走りで行ってしまった。

 ……まあ、とりあえずあの感触は忘れないようにしとこう。ご褒美らしいし。

 

 *******

 

「あ、いた!!ちょっと希!!あんた何ちゃっかり競技に参加してんのよ!!」

「そうよ!なんてうらやま……危ない橋を渡ってるチカァ!」

「でも、1位おめでとうございます!」

「あはは、ごめんねぇ。成り行きで……」

 

 そうは言いながらも、まだウチの胸の中は激しく高鳴っていた。

 今まで気づかんかったけど、八幡君って、意外とおっきな体してるんやねぇ。

 とくん、と高鳴る胸に手を当て、ウチは顔が赤くなってたらどうしようか、なんて考えていた。

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