捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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ドリーミング・デイ #7

『八幡君、目を閉じて?』

「……は?」

『いいから、あとはお姉さんに任せとけばええよ』

「え、いや、だから、その……!」

 

「っ!!」

 

 目を開け、体を起こすと、そこは見慣れた自分の部屋だとすぐにわかった。

 ……なんつー夢見てんだか。欲求不満かよ。

 自分に呆れながら首筋に手を当てると、この前の出来事を思い出してしまう。

 あれが自分の中でどういう意味を持つのか……既にわかりきっている気はするのだが、まだ深く考えられる状況じゃない。

 ……今はただ……とにかく恥ずかしい!!

 何やってんの、俺!?何、その場の勢いだけであんなことしちゃってんの!?中学時代に学んだでしょ!?八幡のバカ!

 ひたすら自己嫌悪に陥りながら、今日は少しぐらい遅刻してもいいや、とだらけた気持ちになっていると、携帯が震えていた。

 こんな朝早くから誰だろうか……などと考えるまでもなかった。

 

「……はい」

「おっは~!!」

「元気いいですね。何かいいことでもあったんですか?」

「ん?いいこと?そうやね~……誰かさんに熱くだきしめられたことかな」

「……すいません。本当に勘弁してください」

「あははっ、これはしばらく使えそうやね。うんうん」

「てか、用事は何なんですか?」

「ん?なんかね、八幡君が遅刻してもいいやって気分になってそうやから、注意しとこうと思って」

「…………」

「え?まさか……本当に当たってたん?」

「い、いや、まさか……」

「まさにスピリチュアルやね。さ、八幡君も起きて準備しよっか」

「はあ……まあ、そうしときます」

「うんうん。今日も八幡君はいい子やね」

「めっちゃ子供扱いされてる気がするんですが……」

「どうやろうね~?あ、用事もう一つあった」

「?」

「君の声が聞きたかっただけ……なんてね」

「っ!」

 

 朝からなんつー爆弾投下してきやがる……いや、悪い気は全然しないからいいんだけどね?

 この後、洗面所で顔を洗っていたら、小町から「朝から何一人でニヤニヤしてんの?怖すぎるんだけど……」などと言われてしまった。

 ……いや、本当にあの攻撃はずるいと思います。

 

 *******

 

「告白!?」

「そうそう、それで手伝って欲しいってワケ」

 

 いきなり場面が変わってすまないが、奉仕部に意外な依頼が来た。

 なんと、クラスメートから告白の手伝いをして欲しいという、明らかに面倒極まりない内容……だが、本人は至って真面目らしい。戸部だから、そう見えづらいが。戸部だし。

 さらに、その依頼を受けるかどうかの判断が、俺に委ねられようとしている。いや、なんでだよ。

 とはいえ、部活の性質上言うことは一つしかないのだが……

 

「まあ、やってみますか……」

 

 その言葉が、色んな物事を大きく変える鍵になるとは、勿論知る由もなく……。

 

 *******

 

 そして、再び俺は希さんと連絡をとっていた。

 

「修学旅行、ええなあ。ウチも京都行きたいなあ♪」

「いや、去年行ったでしょう」

「場所は京都やないし、修学旅行先で八幡君をからかえなかった……」

「そもそも去年は出会ってないでしょう」

「あ、それもそうやね。なんかもっと前から君のこと知ってたみたいやから。不思議やね」

「……そうですか」

 

 口ではそう言ったが、たしかにそのとおりだと思う。

 ぶっちゃけ去年の今頃は、家族以外の誰かとケータイで話をするなんて思ってもみなかった。なんだそれ、哀しすぎる。

 

「……あー、一応土産買ってきますんで、とりあえずバイトの時渡しますよ」

「あら、ありがと。じゃあ、ウチはお礼にハグしてあげよっかな」

「いや、それは遠慮しときます。てか、あんた接触多すぎでしょ。俺の事好きなんですか?」

「……う~ん、どうやろうねぇ?」

「…………」

 

 やっぱり変にからかうのはやめておこう。駆け引きでこの人に勝てる気がしない。

 

「そういや……今度ライブあるって言ってましたね」

「うん。少し先なんやけどね。今度はハロウィンパレードでのライブやから、衣装も面白いもんになるよ」

「面白い……ですか」

「そ、面白いやつ。さらに、八幡君のお土産次第で露出度が上がる仕組みになっております」

「なん……だと……」

 

 なんだ、そのおかしく幸せな仕組み……いや、素晴らしいのかもしれないが、見れるのはいいが、見られるのは……

 

「八幡君?」

「っ……いえ、なんでも……」

 

 今、俺は何を考えていたのだろうと、すぐに反省をする。何を思いあがっているのだろうか。

 気持ち悪い考えを振り払っていると、耳元を彼女のクスクス笑う声がくすぐった。

 

「どうかしましたか?」

「別に~。やっぱり君と話すのは楽しいなぁ、て思っただけ」

「……それならいいですけど」

 

 急に先日の夢を思い出し、胸の中がざわつき始める。

 それを悟られないように、何か話を切り出そうとしたが、上手く言葉が出なかった。

 

「じゃあ、そろそろウチは寝よっかな。じゃあ、八幡君。修学旅行楽しんで来てね~」

「ええ、それじゃあ」

 

 何も悟られなかった事に安堵を覚えた俺は、戸部の依頼と、その後奉仕部を訪れた海老名さんの遠回しな依頼について考えた。

 

 *******

 

「う~ん、なんか隠してる気がする……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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