捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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ドリーミング・デイ #9

 翌日。

 奉仕部で早めに宿を出て、朝食をとっているのだが、朝から落ち着かない気分だ。

 修学旅行でテンションがおかしなことになっているからだろうか。

 ……いや、違う。俺に限ってそれはありえない。

 女子二人と朝飯を食っているからか。

 ……この二人とは部活で割と一緒にいるからな。

 じゃあ、昨晩戸塚と一緒にお風呂に入れなかったからだろうか。

 ……まだチャンスはある。あとこれはそういうのじゃない。

 だとしたら、奉仕部の依頼の件だろうか。

 ……まあ、こんがらがった内容ではあるが、文化祭の時ほどは疲れてない。

 そうだとしたら、この感覚はなんなんだろう。

 いや、本当はもう気づいている。

 お土産を探している時だけじゃない。

 この慣れない街を歩いている最中、ふと考えてしまうのだ。

 あの人がここにいれば、もっと楽しいんじゃないか、なんて……

 

「ヒッキー、どうかしたの?」

「…………」

「ヒッキーってば!」

「っ!!びっくりしたぁ……どうかしたのか?」

「どうかしたのかじゃないよ~。ほら、はやく食べてお店出ないと二人を見失っちゃうでしょ?」

「……そうだな」

 

 いかん。こんな朝っぱらから何をありえない妄想してんだか……ドルチェ&ガッバーナの香水のせいだろうか?どんな匂いか知らんけど。

 

「何か心配事でもあるの?」

「あー、今のところは特にないな。せいぜい戸部の喋り方がアレなのが問題ってくらいで」

「今さら!?そこはさすがに変えようがないよ!」

「たしかに問題かもしれないけど、普段から一緒にいるなら大丈夫じゃないかしら」

「ああ、だから今テキトーにぼんやり対策を考えてた」

「うわ、なんにも考えてなさそう……だ、大丈夫だよ!……う~ん、多分……」

 

 何、その頼りない声……まあいいか。戸部だし。ダメ元だし。ダメ元すぎて、なんならダメ出ししたいまである。

 それよりも気になるのは葉山の動きだ。ちなみにこれは、海老名さんが喜ぶような意味ではない。

 ……それとなく邪魔をされている気がする。

 とはいえ、その理由やら経緯やらは何となく予想はつく。

 こりゃあまた面倒なことになりそうだ……てか、既になってんだよなぁ。

 すると、ポケットの中で携帯が震えだした。

 確認すると、どうやらメールのようだ。差出人は……まあ二択だな。

 特に意味はないが、あえて画面を見ないようにメールを開き、再び画面に目を落とすと、まず顔を思い浮かべたほうだった。

 

『眠い』

 

「…………」

 

 いや、俺にどうしろと?

 メールを打つ気力があるなら起きようよ……うわ、寝ぼけ眼でメール打ってるとこ想像したら、それはそれで可愛い。それどころじゃないとわかっていても可愛い。

 ……とりあえず、少し気持ちが落ち着いた。

 

「比企谷君。いきなりニヤニヤするのをやめなさい」

 

 *******

 

「…………ふぅ」

 

 あぁ……寝起きの変なテンションで、八幡君に変なメール送っちゃった……。

 最近、気が緩みがちやねぇ。やっぱり、あのハグからやろうか……いやいや、朝っぱらから何を思い出しとるんやろ、ウチは……。

 すると、背後からこちらに向かってくる足音が聞こえた。この音の感じやリズムで、すぐに誰だかわかった。

 

「おはよう。どうしたの、希?昨日とは打ってかわって沈んだ表情ね」

「ん~、昨日夜更かししたんよ~」

 

 嘘は言ってない。実際夜更かししちゃったし。ぼんやりしているうちに、いつの間にかだいぶ深夜になっていた。

 

「夜更かし……いやらしいわね」

「いや、さすがにそれは妄想が過ぎるやろ。エリチにそういう一面があるのは知っとるけど……」

「う、うるさいわね。まあ何もないならいいわ。また占いで不吉な結果でも出たのかと思ったわ」

「ん~、まあカードは悪くないんやけど……」

「?」

 

 私の言葉にエリチは首を傾げたが、私は笑い返すことしかできなかった。

 ただ胸が少しざわつくというだけで、細かいところを言語化できる気がしなかったから。

 小さな溜め息が零れたけれど、それが何を意味するのから自分でもわからなかった。

 

 *******

 

 数時間後……。 

 奉仕部の依頼という はあったものの、それなりに楽しかったせいか、あっという間に時間は過ぎていった。

 現在、俺達は竹林の道にいる。

 そう、戸部はここを告白の場に選んだのだ。由比ヶ浜も「とべっちにしてはナイス……」と呟いていた。

 あとは海老名さんが来るのを待つだけだ。

 

「いよいよだね……」

「ええ。なんかこういう場面は初めてだから、なんか変な感じね」

「あはは……まあ、告白の場面に遭遇するとかまずないし、したとしても、じっくり見たりしないからね」

「…………」

「ヒッキー?」

「比企谷君?」

「…………」

 

 二人から声をかけられているが、今は返事をしている余裕はなかった。

 もう海老名さんの姿が見えている。躊躇などしている余裕はない。

 ここで俺が……俺のような奴がやれることはただ一つ。

 ……まあ、やるしかねえか。

 そして、俺は彼らの元へと飛び出して行った。

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