捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Someday #3

 体の軽さを実感しながら学校に行くと、何だか見慣れているはずの景色がどこか違って感じられた。久しぶりの病欠後のせいだろうか。まあ、そのうち慣れるだろう。いや、慣れるってのもおかしいか。

 そんなしょうもない事を考えながら歩いていると、いつの間にか学校に到着していた。

 とはいえ、安定のボッチ力を発揮している俺は、教室に入っても、特に誰からも声をかけられるでもなく……

 

「あ、八幡!もう大丈夫なの?」

 

 戸塚が小走りに駆け寄ってきたので、頬が緩みそうになったが、なんとかこらえた。おっふ。危うく天使のスマイルで昇天しそうになっちまった。

 

「おう、そもそも昨日にはもうだいぶ回復してたからな」

「そっか。じゃあ何か困った事があったら言ってね。あまり無理しちゃだめだよ」

「……お、おう」

 

 え、何その健気な台詞。いくらでも無理できそうなんですけど!つーか、もっかい休んで、もっかい言われてみたい!

 そんな中、ふと誰かに見られている気がして、チラ見すると、由比ヶ浜と戸部がすぐに顔をそむけた。

 

 *******

 

「ふぅ……」

「あら、どうしたの?昨日からよく溜め息ついてるけど」

「う~ん、自分でもよくわからんねえ。ていうか、そんなに溜め息吐いてた?」

「ええ。でも、よくわからないって、本当かしら?」

「どういう意味?」

 

 エリチはやたらにやにやしながら私の頬をつついてきた。あ、これは少しお姉さんモードやね。

 

「な~に~?」

「ん?いや、希も希で案外素直じゃないのね」

「…………」

「昨日も比企谷君からもらったお守りを休み時間の度に見てたの自分で気づいてないの?」

「え?ウチ、そんなんなってた?」

「ええ。一人でにやにやしてたわ。少しひいたわよ」

「がーん……エリチに引かれるなんて……音ノ木坂で一番イタいエリチに……エリチに……」

「失礼ね!まったく……この前休む時協力してあげたのは誰かしら?」

「うっ……それは確かに感謝してるけど……ていうかエリチ、なんかキャラ変わった?」

「失恋で成長したのかもしれないわね」

「…………」

 

 私はそれに何と答えたらいいのかわからなかった。

 彼女は間違いなく私の背中を押してくれている。

 そして私は間違いなく……

 すると、エリチはうっとりとした表情で窓の外を見ながら呟いた。

 

「私は……愛人で構わないわ」

「エリチ、台無し……」

 

 窓の外の景色はもうだいぶ涼しそうで、あと少しすれば冬になることを告げていた。

 あっ、その前にハロウィンライブがあるんやった。八幡君に教えてあげよ。

 

 *******

 

 さて、どうしたものか……。

 ようやく登校できるようになり、学校生活を無事に終えたのはいいが、まだ希さんに連絡できていない。

 いや、普通に着信ボタンを押して、普通にお礼を言うだけでいいのだが……。

 この前のあれこれが脳裏に焼き付いて離れないせいで、つい躊躇ってしまう。緊張のあまり、みっともない姿を見せてしまいそうで……。

 恥をかくのなんて慣れてるはずなんだが……。

 すると、そんな情けない俺に呆れたように携帯が震えだした。

 しかも、画面にはしっかりと目的の人物の名前が表示されている。

 

「やっほ~。元気?」

「…………はい」

「ど、どうしたん?そんな申し訳なさそうな声出して」

「ああ、いえ。なんつーか、本当ならお礼の電話をこちらからしなけりゃいけなかったんで……」

「あはは、そんな事気にしとったん?ええよ。ウチがやりたくてやっただけやし」

「そういうわけには……」

「大丈夫やって。年末年始、神社で頑張って」

「…………えぇ?あ、いや、わ、わかりました」

「……今、嫌そうな顔せんかった?」

「あー、あれですよ、あれ。まさか、社畜になる前から年末年始働くことになるとは思わなかったんで」

「ふふっ、君らしい理由やね。でも、年末年始にウチの巫女姿を見れるという素晴らしい特典があるよ。それとも、君はもう見飽きた?」

「……ま、まあ、別に暇だからいいですけど」

「素直でよろしい♪あっ、その前に今度ハロウィンパレードでライブやることになったんよ。よかったら観に来て欲しいなぁ」

「……本当に色んなコスプレしてるんですね」 

「いや、巫女服はコスプレで着てるんやないけどね。何なら八幡君もコスプレしてきたらどうかな?」

「もう間に合ってるみたいなんでいいっすよ。たまに小町からゾンビ扱いされますんで」

「ああ、八幡君らしいね」

「俺らしいとは……」

「よかったら小町ちゃん達も連れてきてね~」

「了解……あ、ちょっと、いいですか?」

「?」

「あー……その……この前は本当にありがとうございました……わざわざこっちまで来てもらったり、色々迷惑かけたんで、その……借りは返しておきたいので、飯でも奢らせてくだしゃい……」

「……う~ん、噛んだねぇ」

「…………」

「あははっ、そんなに気にせんでええよ。八幡君が噛むのかわいいし。それじゃあ、楽しみにしてるからね♪八幡君のエスコート……期待しちゃうなぁ」

「……ほどほどにしてくれると助かります。それじゃあ」

「うん、ばいばい」

 

 *******

 

 その数分後、ほっと安堵の息を吐きながら、二人はそれぞれ呟いていた。

 

「よかったぁ……普通に話せた」

 

「よかったぁ……普通に話せた」

 

 そんな小さな呟きが重なったことなど知る由もなく、二人はいつもよりぐっすり眠った。

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