捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

54 / 89
Someday #4

 ハロウィンライブ当日。

 秋葉原はまだ朝だというのに、既に仮装した人達で溢れていた。

 そんな中、俺は小町達と一緒に人混みを通り抜けているわけだが……。

 

「っべーわ。ヒキタニ君、ほんとに仮装しなくていいん」

「もう間に合ってるからいいんだよ」

 

 そう。何故か戸部がいる。

 ちなみに戸部はミイラのコスプレをしている。どうでもいいけど。今朝、小町と駅で戸塚達を待っていたら、何故か一緒に来たのだ。理由はわからんけど。

 かといって反対する理由も特にないので、そのまま行動を共にしているわけだが……。

 あと材木座はフランケンシュタインのコスプレをしている。本当にどうでもいいけど。それより……

 

「わあ……八幡、すごいよ、あっちの人達」

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。希さんからメール来たよ。衣装楽しみにしててだって」

 

 見ろよ、この天使二人を。両方魔法使いの格好してるけど、こりゃもう立派な天使だよ。何なら、これが拝めただけでも来た価値があるというものだ。

 そう思いながら戸塚の視線の先を確認すると、何のコスプレかはわからないが、華やかで賑やかな集団がいた。

 

「ほら、才人!こっちこっち!」

「ルイズ、お前まだ来たばっかりなんだから、あんま走り回んなって!迷子になっちまうぞ」

「才人さん、私も構ってください!」

「ここが才人さんのいた世界……」

「すごく高い建物……」

 

 なんだろう、普通のコスプレとはどこか違うというか、まるでファンタジーの世界から飛び出してきたみたいだ。ハーレムだし。

 しかも、その真ん中にいる男子だけ、割と普通な……とにかく不思議な集団だ。

 

 *******

 

 さて、小町ちゃんにメールも送った事だし、あとはしっかりパフォーマンスするだけやね。

 ……普段なら八幡君にメールを送るところやけど、何故か送れなかった。

 自分でもよくわからんけど、余計に気になるからやろうか。

 

「…………」

「希、もしかして緊張してるのですか?」

「え?……そう、見える?」

「にゃ~!凛達がいるから大丈夫にゃ!」

 

 二人から言われたということは、どうやら自分で気づいていなかっただけで、実は緊張していたのだろう。

 ……あぁ、もう!これは間違いなく八幡君のせいやね。

 絶対に後で思いっきりからかわんと。

 私は、また極めて自分勝手な事を決意して、気合いを入れ直した。

 

 *******

 

 特設ステージにμ'sが登場すると、一際大きな歓声が上がり、彼女達の知名度がかなり高くなっていることがわかった。

 それぞれハロウィンらしいカラフルなコスプレに身を包み、観客の目を惹き付け、すぐパフォーマンスに移ると、観客はあっという間に魅了されてしまった。

 

「希さ~ん!」

「ふむう……今回も悪くない」

「わぁ…………」

「ちょっ……ヒキタニ君、俺こういうの初めてなんだけど、なんかやばくね?やばくね?」

「…………」

 

 興奮しながら肩をバシバシ叩いてくる戸部をスルーし、ステージに意識を集中していると、希さんと視線がぶつかる。どこで見るかなんて言ってないので、これもスピリチュアルな力なんだろうか。

 すると、彼女は少しだけ目を伏せてから、またこちらを見て……投げキッスをしてきた。

 ……なんだ、今の撃ち抜かれたような感覚。

 それと、さっき目を伏せた彼女の表情が、どこかいつもと違う気がした。

 

 *******

 

 ライブ終了後、パレードをぼんやり眺めながら、μ'sのパフォーマンスの余韻に浸っていると、肩をつつかれた。

 振り向くと、先程までステージにいた絢瀬さんがそこにいた。

 軽く頭を下げると、何か企みを含んでいそうな笑顔で、こっそり話しかけてくる。もう少しポーカーフェイスとかできないんでしょうか……まあ、わかりやすくていいけど。

 

「比企谷君。ちょっといいかしら」

「はい?」

「希に飲み物届けてもらえない?もう着替えは済んでると思うから」

「……ああ、わかりました」

 

 何を頼まれるかと思えば、そのくらいのパシリなら小町で慣れてるからお安いご用だ。

 近くの建物の一室を借りているらしく、自然と早足になっているせいか、言われた部屋にすぐ辿り着く。

 そして、一呼吸おいてからドアを開けると、そこには……

 

「え?」

「っ……」

 

 まだ着替えてる途中の希さんがいた。

 

「すいませんっ!!」

 

 あまり出さないボリュームで謝りながら、勢いよくドアを閉める。

 すぐに静寂が訪れたが、まだ心臓がばくばく高鳴っていた。

 しばらくすると、「もういいよ」と声がかかり、俺はおそるおそる足を踏み入れた。

 彼女は髪を指先で弄びながら、こちらをジト~っとした目で見た。  

 

「も、もう……ノックくらいしてよ」

「はい。すいませんでした……」

 

 確かに。

 いくら着替えが終わっているからと聞いていても、ノックするのがマナーだった。小町が相手だったら、三日間くらい口を聞いてもらえないだろう。

 首筋に手を当て、もう一度謝罪の言葉を口にしようとすると、彼女は距離を詰め、こちらの顔を覗き込んできた。

 

「ふふっ、じゃあ今度のバイトでお昼ごはん奢りね」

「……はい」

 

 元より拒否権などあるはずもない。

 頷くと、彼女は俺の胸に手を当て、悪戯っぽい笑みを向けてきた。

 

「君になら見られてもええんやけど」

「からかわないでくださいよ」

「それは無理な相談やね」

 

 まあ、そりゃそうだろう。

 飲み物を手渡すと、希さんは「ありがと」と受け取ったが、また伏し目がちになった。

 その表情がどこか切なくて……

 俺は自然と口を開いていた。

 

「あの……あー……この後時間あるなら、どっか行きませんか?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。