捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Someday #6

「ふぅ……」

 

 自然と零れる溜め息。最近少し多い気がする。まあ、そんな時期なんやろうね。カードもそんな感じやったし。

 実は昨晩、両親から連絡があった。

 まさか、いきなりあんな……

 

「どうしたの?また溜め息ついて」

「えっ、あ、まあ、あはは……」

「むむっ、今度は恋愛絡みとはまた別のやつね……私でよければ話聞くけど」

 

 やっぱりエリチは鋭いなぁ。ポンコツやけど。

 とはいえ今は言いづらくて、つい作り笑いを浮かべてしまった。

 

「う~ん、まだ大丈夫かな。まあ、そんな大変なやつやないし……」

「そう?ところで、最近進展はあったのかしら?この前もライブが終わった後、夜の街へ消えていったじゃない」

「夜の街へは行っとらんけどね。まあ、その……今みたいなのも悪くないよ?」

「なんだぁ……せっかく妄想ネタを回収しようとしてたのに……」

「エリチ、また色々台無しになっとるよ。はやくヨダレ拭いて」

 

 とりあえず……今色々考えるのはよそう。

 そう決めた私は、エリチに思いつくまま話題をふり、いつものような会話で頭の中を埋めた。

 

 *******

 

 ハロウィンライブや、その後のあれこれの余韻に浸りたいが、なかなかそうはいかないのが現実の厳しいところだ。学生でもこうなのだから、社会人になったら……はあ、働きたくねえな。

 

「ちっす、比企谷君!」

 

 てか、あの人今何してんのかな……って、初恋中の中学生男子か。って、いらん事考えたらトラウマが……。

 

「って、比企谷君、シカトとかひどくね!?」

「……ああ、戸部か。いつからそこにいた?」

「いや、さっきから声かけてたし!この前一緒にハロウィン行った仲じゃん!」

 

 どういう仲だというのだろうか。もしかして俺がリア充になったとでもいうのだろうか。もしくは戸部がボッチの仲間入りを果たしたとか……ボッチの仲間入りとか、これもうわけわかんねぇな。

 

「それで……何か用か?例の依頼なら、この前聞いたとおり、今は無理だろうから諦めろ」

「いや、そうじゃなくって!それも関係あるけど!」

「?」

 

 どういうことかよくわからないので、沈黙で続きを促すと、戸部は急に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「あん時、ごめんっ!」

「は?」

 

 どの時かは何となくわかるが、謝られる理由がからないので、首を傾げるなと、戸部は続けて口を開いた。

 

「いや、ほら……あん時、比企谷君が海老名さん好きって言ったの……あれ、ウソっしょ?なんつーか……周りが気まずくならないようにっていうか……」

「……別にお前の為にやったわけじゃねえよ」

「そうかもしれないけどさ、でも大事なのって、俺が比企谷君に感謝してるって事じゃね?」

「……そういうもんか」

「そーそー!細かい事いいっこなしでしょ~!」

 

 まあ、確かに戸部がそう言うのなら、それを俺が否定する事はできない。

 ……いや、それよりも一つ気になる事がある。

 

「お前……呼び方変わってね?」

「え?あ、気づいた!?実は戸塚君に聞いたんよ!比企谷君、ヒキタニ君じゃなかったんでしょ!?いや~、俺もおかしいと思ってたんだわ~」

 

 最後の方は嘘だろ。お前は絶対にヒキタニだと思ってたはずだ。戸部だし。

 まあ、このしょうもないやりとりでわかったことがある。

 こいつ、まあまあどころか、だいぶいい奴なのではなかろうか。

 一応、戸部と目を合わせると、何故かいきなり肩を組まれた。うん、やっぱりこういうノリは苦手だわ。材木座とは違うベクトルで疲れそうだもん。

 

 *******

 

「希~、そろそろ練習に……って、いないわね。どこ行ったのかしら?トイレ?しょうがないわね。荷物だけでも持って行ってあげますか。よいしょっ、あわわっ!!希のケータイがっ!……ふぅ、傷はついていないようね。よし、しっかり画面も……ん?……これって!!」

 

 *******

 

 今日は戸部がやたら話しかけてくる以外は特に変化のない一日だった。いや、奉仕部の部室に行ってないのは、まあ変化といえば変化か。思えば2年になってから、平日は殆どあの部室に顔を出していた。

 ……明日は顔出すか。まだ勝負の事もあるし。

 そう考えたところで、携帯が震えた。多分着信だな、これは。

 画面を確認すると、確かに当たってはいたが、その相手は予想外だった。

 

「あ、比企谷君!ちょっといい?大変なの!」

「ど、どうかしましたか?」

 

 絢瀬さんの慌てた声に、つい緊張気味になってしまう。どうしたというのだろうか。

 こちらが聞き返そうとすると、絢瀬さんの声が聞こえてくる。

 

「希が……希が両親のところに帰っちゃうの!!何か聞いてない!?」

「…………は?」

 

 あまりに突然すぎる話題に、理解が中々追いつかず、俺は口をポカンと開けたまま、玄関で立ち尽くしていた。

 

 

 

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