捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Your eyes #2

「……ちょっといいか?」

「「え?」」

 

 カーテンの隙間から西陽が差し込む放課後の部室。

 それまでの鉛のような沈黙を破り、いきなり声をかけてきた俺に、雪ノ下と由比ヶ浜は驚きを隠すこともなく、ただ視線をこちらに向けている。ついノックもせずに入ったことは後で謝ろう。

 

「次の生徒会選挙の事なんだが……」

「ああ、いろはちゃんの依頼だよね?」

「前も言ったけど、貴方のやり方を認めるわけにはいかないわ」

「まあ待て。それなんだけど、俺が立候補しようと思うんだが……」

「…………え?」

「どういう事かしら?」

「言ったまんまの意味だ。俺が立候補して当選する。それだけだ」

 

 俺の言葉に、二人は顔を見合わせた。多分だが、内心ではかなり驚いていると思う。

 

「一体どういう風の吹きまわしかしら」

「さあな。なんつーか……」

 

 この感覚は何なのだろうか。

 成長とか、そういうかっこいいものとは違う。

 もっと泥臭い何かだと思う。

 俺は自然と思いついた言葉を口にしていた。

 

「あがいてみたくなったんだよ」

 

 二人は、どういう心境かは知らないが、はっとした表情になった。何言ってんだ、こいつみたいな雰囲気になってないことは何となくわかるが……。

 雪ノ下はしばしの間、瞑目して考え込む素振りを見せてから、やがて小さな笑みを見せた。

 

「それで……依頼は何かしら?比企谷君」

 

 さすが察しがはやくて助かる。

 由比ヶ浜もうんうんと勢いよく頷いていた。

 ならば、もう迷うことはない。

 俺は少しだけ背筋をしゃんと伸ばし、口を開いた。

 

「生徒会役員になりたい……協力してくれ」

「それはかなり難易度の高い依頼ね。二重の極みを習得するほうが遥かに簡単そうだわ」

「え、マジで?そんなに?」

 

 雪ノ下から『二重の極み』という似つかわしくない単語を口にするくらいには難しいらしい。

 

「で、でもでも!ほら、何とかなるかもしれないじゃん?えと……同情票とか!」

「それフォローになってないからね。あと、お前よく同情票なんて言葉知ってたな」

「馬鹿にすんなし!!」

 

 気づけばいつもの奉仕部に戻っていた。

 自分から一歩踏み出す勇気をくれた希さんには感謝だな……

 

「あ、そういえば希さんから聞いたよ!ヒッキー達付き合う事になったんだって!」

「へえ……あの人も物好きね。色々と話を聞いてみたくなるわね」

 

 あの人……後で覚えてろよ。いや、そのうちバレそうだからいいんだけどさ。

 

 *******

 

 その日の夜……。

 

「そっかぁ、奉仕部元通りになったんやね。よかったよかった」

「……まあ、その後からかわれまくりました」

「うんうん、いいことやね」

「いいことなんですかね」

「あっ、ごめん!やっぱり君をからかうのはウチやないと、本領発揮せんよね」

「これまでどう本領発揮したのか聞きたいところなんですが……」

「生徒会選挙、いい結果がでるように祈ってるからね」

「カードは何て言ってるんですか?」

「ひ・み・つ♪」

「勿体ぶるということは、まあまあいい結果みたいですね」

「……君、そういうの上手くなったね」

「生憎この読みは一人にしか通用しないんですけどね」

「あらら、それは気をつけんといかんね。ウチの気持ちが筒抜けになったらあかんから」

「もうだいぶ筒抜けになってますよ。つっても人の事は言えませんが……」

「それもそうやね。あ、もうこんな時間やん。じゃあウチはもう寝るね」

「ええ。俺もそうします。それじゃあ」

「うん。おやすみ~」

 

 

 

 

 

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