わかってはいたことだが……めっちゃ居づらい!
女子ばかりの空間に放り込まれ、何だか居たたまれない!だって男の子だもん!
希さんの方に目をやると、何故かやたらニコニコしている。
この表情……笑顔だけど笑顔じゃない。さっきから威圧感すごいし。周りは気づいてないけど。
彼女の謎のテンションに内心不安を覚えていると、誰かに肩を叩かれた。
振り返ると、二年生組の一人・南ことりがいた。特徴的なサイドポニーとふわふわした柔らかい雰囲気。優しい笑顔の組み合わせは、いかにもアイドルっぽいと思えてしまう。
彼女は笑顔のまま、俺と希さんを交互に見て、うんうんと何かに納得したように頷いた。
「希ちゃんのこんな表情初めて見たよ~」
「ん~?」
「…………」
とりあえず頷くだけ頷いておくと、南さんはこちらに笑顔を向けてきた。
「比企谷君って、執事服とか似合いそうだよねぇ~」
「そ、そうか?」
「希ちゃんもすっごくメイド服似合ってたし、二人並べて写真撮りたいな~。比企谷君の分、執事服作るから採寸していい?」
「ああ……」
「えっと、八幡君のサイズは……」
いつの間に移動していたのか、希さんは流れるような動きでメジャーを使い、俺の採寸を済ませた。
「はい、これ返すね」
「え?あ、うん。ありがと♪」
おい、あまりに動作が自然すぎて、南さんはメジャー奪われたこと気づいてなかったぞ……てか、これまさか……いや、それはあの人のキャラじゃない気が……。
すると、今度は一年生組のショートカットが特徴的な星空凛が隣に座ってきた。
「今日はよろしくにゃー!比企谷さんはラーメンが好きなんだよね?凛もだよ!」
「お、おう……」
近い、だから近い
「そうやね。凛ちゃん、ラーメン大好きやもんね。また食べに行こうね」
「にゃ~」
絶妙な撫で加減で、反対側から星空を猫のように宥める希さん。いや、いつそこに移動した?
「…………」
「…………」
「ん?八幡君とにこっちどうしたん?」
「い、いや……」
「べっつにー」
矢澤さんは希さんの異変に何となく気づいているようだが、特にそれを指摘することはなく、こちらに視線を向け
た。おそらく『あんたがどうにかしなさい』という意味だろう。知らんけど。
「あの、比企谷君。ちょっといいですか?」
気まずさみたいなのを誤魔化すように、立ち上がって身体をほぐそうとすると、今度は園田さんが話しかけてきた。
どんな話だろうと身構えると、彼女は「失礼します」と言って、急に俺の腰に手を添えてきた。
「少し猫背気味ですね。せっかくそこそこ身長があるのですから、背筋をしっかり伸ばしたほうがいいですよ」
「……おう。了解」
あ、危ねえ……「ひゃうっ!」とか変な声出しそうになっちまった……いきなり腰がっつり来るから……。
「八幡君は猫飼ってるから、猫っぽくなったんやね~」
「そ、そうなんですか?」
「…………」
さすがにそれは無理があるような……てか、いつから希さんが腰を押してた?入れ替わったの全然気づかなかったわー。
「あ、あの、比企谷さんは……」
「お米好きだよ♪」
「ぴゃうっ!は、はい」
まだモノローグでの紹介すら終わる前に、一年生の一人・小泉花陽の話は遮られた。あのリアクションからして、「米派ですか?パン派ですか?」という質問とかだと思うが……。
「希……?」
「なぁに、真姫ちゃん?」
「いえ、何もないわ。大丈夫……」
一年生組最後の一人・西木野真姫も、希さんのいつもと違う何かに気づきながら、スルーすることにしたようだ。
てか、何だこの状況。空気は悪くないけど、落ち着かないというか……。
すると、ドタバタと足音が近づいてくるのが聞こえた。
おそらく高坂さんが手伝いを終えたのだろう。
すると、ガラッと扉が開き、部屋に駆け込んできた彼女は笑顔で希さんの手を握りしめた。
「それだよ、希ちゃん!」
……いや、何がだよ。