捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Your eyes #8

 本格的に冬に入り、ベストプレイスにも少し居づらくなった今日この頃。俺の周りは珍しく賑やかだ。

 

「そっかぁ。八幡、東條さんと付き合い始めたんだね」

「……ああ。まあ、な」

「っべーわ、比企谷君。スクールアイドルに手を出すとか、マジぱねーわ」

「戸部、言い方。下品極まりないからやめろ」

「うむぅ、しかしあれほどまでの美女が選んだのが……八幡って、それはないでしょう!」

「ああ、おもしろいおもしろい」

 

 賑やかなのは構わないんだが、約二名がアホな事言ってる。しかも一名滑ってる。滑るのは一向に構わないのだが、周りまで恥ずかしい気持ちにさせるのは、最早罪だと思う。

 

「あとやっぱり……八幡が自分からそういうの言ってくれるようになったのが嬉しいな」

「……そうか」

 

 うわ、なんて可愛い顔して笑ってんの、この子。いや、いかん。戸塚は男。戸塚は男。それにそういうこと考えてたら、スピリチュアルな何かで希さんに知られて、お叱りを受けるかもしれん。

 

「八幡、どうかした?」

「いや、何でもない。まあ、色々と警戒していただけだ……」

「そ、それって、何でもなくはないような……」

「ほら、あれじゃね?まだ付き合いたてだから色々あるんじゃね?マリッジブルーとか言うっしょ」

「いや、それ結婚前のやつだから」

「だから八幡って、それは……」

「もう言わせねえよ」

 

 そんなこんなで、寒さを程よく忘れるくらいには賑やかな昼休みとなった。

 

 *******

 

「雪?」

「うん。ニュース見たら、結構積もるらしくて」

「ああ、そういやこっちも深夜から降るって言ってましたね。ライブのほうは大丈夫なんですか?」

「そっちは大丈夫なんやけど……多分電車止まるやろうね」

「ああ……」

 

 確かに予報どおりならば、朝電車に乗る頃にはすっかり積もっているだろうな。

 そんな事を考えていたら、希さんの表情が少し沈んだ気がした。もちろん見えるはずもないのだが、何故かそんな気がした。

 

「まあ、ネットでも観れるからええんやけど」

「……行きますよ」

 

 自然とそう答えていた。

 俺はμ'sの関係者ではないし、この前作詞の手伝いのようなことをしただけだ。

 だが、俺はこのライブを生で見届けなくちゃいけないという変な使命感があった。

 ちょっと前までなら、鼻で笑ってしまうような選択だが、そんなのはもう関係ない。

 

「あー……絶対に、行きます」

「……そっか。じゃあ、楽しみにしてるね」

「ええ。それで、頼みがあるんですが」

「?」

 

 *******

 

「まさか前日から泊まりに来るとはね」

「……これが一番確実かと」

 

 ライブ前日の夜。俺は希さんの家にお邪魔していた

 まあ結局のところ、雪が降る前にこっちに来ておけばいいだけの話なのだ。後の事は後で考えればいい。

 

「てか、すいません。本番前なのに」

「ええよ~。だってこっちのほうが元気になるし……」

「…………」

「いや、無言にならんでよ。恥ずかしいやん?」

「そ、そうっすね。そういや、年末とかどうするんですか?」

「ん?神社でバイトがあるけど……」

「え?マジですか。俺何も聞いてないですけど……」

「八幡君は千葉にいるからやない?あと、ウチがごり押しした特殊なポジションやし」

「ああ、それもそうですね……てか、ごり押しって……」

 

 メイド喫茶といい、この人一体どんなコネクションを……いや、今は考えないでおこう。

 希さんは、こちらを見ながらからかうような声音で話を続けた。

 

「八幡君が年末からこっちでお泊まりでええなら、喜んで一緒に働きたいけど」

「ああ、じゃあそれで……」

「そ、即答やね……ええの?」

「そりゃまあ……一緒にいられるし」

「…………いくらウチが喜ぶこと言っても、今日はやらしいの禁止やよ」

「しませんよ。てか、色々台無し」

「あははっ。あ、一つお願いしていい?」

「いくらでも」

「じゃあ……眠るまで手を繋いでて欲しい、かな」

「…………」

 

 そう言った時の表情は、それはもうどんな天使や女神も敵わないくらい魅力的で……。

 俺に出来るのは、黙って頷くことと、手汗の心配くらいだった。

 

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