捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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Your eyes #9

 朝起きると、昨日見た街の風景が偽物だったのかと思えるくらいの白銀世界。

 外泊という特別な状況も相まって、まるで異世界にいるかのような変な高揚感が湧いていた。

 

「わあ、八幡君こっち来といてよかったねえ」

「そうっすね」

「ふぁああ、まだ眠たいなぁ。昨晩八幡君が寝かせてくれんかったからやろうか」

「……言うと思いました」

「まあ、お約束やからね。夜更かしは今度泊まりに来た時にお預けやね」

「そりゃあ生きる希望が湧いて助かりますね」

「ウチはちょっと早めに出るけど、八幡君はどうする?ライブは午後からやし、もう一眠りしとってもいいけど」

「……あー、じゃあ俺は準備して、神社に行っときます」

「そっかぁ。あ、これ……」

 

 希さんは引き出しから何か取り出し、俺の手に握らせた。何だ?お小遣いか?

 手を開いてみると、そこには……

 

「鍵?」

「そ、鍵やね。まあ細かくいえば合鍵やね」

「…………」

 

 マジか。

 高校生にして女性の部屋の合鍵を渡される日が来るとは……これ結構でかいイベントじゃね?

 

「八幡君、なんか目がいやらしいよ」

「い、いや、そ、そそ、そんなことはないにょろよ!」

「慌てすぎやろ……まあ、いいけど。その……いつ来てもええよ」

「……まあ、その、時間があればいつでも」

 

 それから特に意味のない笑みを交わす。

 このくすぐったい感じは割と嫌いじゃない。

 希さんはくるりと身を翻し、台所へと向かった。 

 

「それじゃあ、朝御飯にしよっか」

「そうですね」

 

 右手に握りしめた鍵の感触は、自分の家のものと大して変わらないはずなのに、まったく違うものに思えた。

 

 *******

 

 朝食を終えてから、希さんはさっき言ったとおりに学校へと向かった。

 彼女の表情は、いつもどおりに見えて、微かに緊張を滲ませている。

 

「じゃあ、また後でね~」

「ええ。足元気をつけて」

「うん。八幡君も来る時気をつけてね」

 

 彼女を見送り、片付けを済ませると、まだ大して時間は経っていないが、出かけるにはちょうどいいくらいにはなっていた。

 

「それじゃあ、俺も行きますかね」

 

 せっかく時間があるのだから、まあ少しくらいは役に立っておこう。

 

 *******

 

 予想外の事態。

 昼頃には止むと言われていた雪は、一向に止む気配はなく、東京の街を白く染め続けていた。

 

「え~!!穂乃果ちゃん達、間に合わないかもしれないのぉー!?」

「ば、ばかっ!縁起でもないこと言うんじゃないわよ!」

「そうよ。そろそろ説明会も終わる頃だし、急げば余裕で間に合うわよ」

「うん、はやく雪止むといいなぁ……」

「……希、どうかした?」

「……ううん。何でもないよ」

 

 仮に雪が止んだとしても、道に雪が積もっていたら走るのは難しいし、何より転ぶ危険がある。もし転んでケガでもしたら……。

 悪い想像が一瞬頭をよぎりかけたが、それを何とか抑え込む。

 大丈夫。きっと大丈夫。カードも良い感じやったし。

 絶対に9人揃って最高のパフォーマンスをすると決めたから。これまで応援してくれた人のために、自分のために、大事な人のために。

 

「あら?ミカさんからだわ」

 

 穂乃果ちゃん達の友達で、何かとμ'sを手伝ってくれているメンバーの1人からの着信に、皆の視線が集まった。

 

「はい、もしもし。…………えっ!?本当に!?……比企谷君が!?」

「え?」

 

 いきなり出てきた彼の名前につい目を見開いてしまう。どういうことなんやろ?

 通話を終えたエリチが、にっこりと笑顔をこちらに向けた。

 

「穂乃果達はもうじき到着するわ。音ノ木坂の皆が雪かきを頑張ってくれたそうよ。なんとその雪かきには比企谷君も参加してくれて、とても活躍したそうよ」

「そうなん?昨日、説明会あるのは話したけど……もう、言ってくれてもええやん?」

 

 とはいえ、何も言わないあたりが八幡君らしいので、まあ良しとしておこう。

 うんうんと頷いていると、エリチが何ともいえない笑みを見せた。

 

「ちなみに、穂乃果達がお礼を言おうと駆け寄った時に転んで、3人が抱きつくような感じになったらしいわよ」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………ふぅーん。さ、エリチ。ウチらも準備始めるよ」

 

 *******

 

「っ!!」

「どうかした、比企谷君?」

「大丈夫、比企谷君?」

「私達がメインのシナリオまだ?比企谷君?」

「あ、ああ、問題ない。てか、最後の質問意味わからん」

 

 今、何か寒気がしたんだが……。

 き、きっと寒さのせいだよね!うん!

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