捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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風をあつめて ♯7

「あ~、美味しかった♪」

「……そうすか」

 

 どうやら気に入って頂けたようだ。まあ、ラーメンは世界一の食べ物だしね!

 東條さんは振り返り、にっこりと笑顔を浮かべた。

 

「じゃあ、ウチはそろそろ行くね。付き合ってくれてありがと♪」

「……まあ、その……スピリチュアルな力なら仕方ないんじゃないですか?」

「ふふっ、そやね。じゃあ、連絡先交換しとこっか?」

「話が繋がっていない気が……」

「君が傘を返そうと思った時に、いつでもウチがおるとは限らんやろ?」

「その時は神社の誰かに……」

「……嫌?」

「…………どうぞ」

 

 実際断る理由もないので、俺は東條さんにスマホを渡した。

 彼女はキョトンとしていたが、やがて俺の意図に気づいて苦笑した。

 

「君は警戒心が強いのか、そうでもないのか、ようわからんね」

「暇つぶし機能以外あまり使わないので、こういう時の使い方がよくわかってないだけです」

「さらっと悲しいこと言うね」

 

 東條さんは軽やかな指さばきで連絡先を交換し、俺にスマホを返した。

 

「はい。後で連絡するから、登録お願い♪」

「……了解」

「それと……」

「は?」

 

 東條さんの手が俺の頭に乗っけられる。

 そのまま、ふわふわした優しい感触が俺の頭をよしよしと撫でた。ひんやりした感触が、まだ4月の頭なのに、やけに気持ちよかった。恥ずかしいけど。

 

「今日は付き合ってくれてありがと♪君は優しいね」

「いや、あの……すげえ恥ずかしいから止めて欲しいんですけど……」

「そんなに恥ずかしがることないやろ?この前もしたんやし」

「いや、そ、それとこれとは話が……」

 

 道行く人の視線がグサグサ突き刺さり、HPがガリガリ削られていく感覚がする。特に男子の視線が痛い。

 

「何だよ、あいつ……あんな美人に……」

「羨ましいぜ、チクショウ」

「けぷこん、けぷこん……あ、あ、あれはもしや、八幡ではあるまいな……」

「ちっ、ボッチの癖に……」

「ザキ」

 

 怨嗟の声が聞こえてきた気が……今、知り合いがいなかったか?あと誰だよ、ボッチって言ったのは。しかも最後に、誰か死の呪文を唱えて行きやがった。

 とはいえ、東條さんの頭の撫で方は絶妙で、なんか疲れが取れるというか、中学時代なら…………いかん。また東條さんのペースだ。

 俺はそっと彼女の手をどけた。その際に掴んだ手首の細さに、妙に胸が高鳴るのを感じながら。

 

「もう、照れ屋やなぁ~」

「い、いや、そっちが大らかと言いましゅか……」

「ふふっ、その噛みっぷりに免じて許してあげる♪ほな、行くね」

「…………」

 

 彼女は意外なくらい颯爽と改札をくぐり、その背は見えなくなった。

 

「……帰るか」 

 

 一人で帰路につくと、頭やら肘やらに残っている彼女の感触が、やたらとむず痒かった。

 

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