「あ~、美味しかった♪」
「……そうすか」
どうやら気に入って頂けたようだ。まあ、ラーメンは世界一の食べ物だしね!
東條さんは振り返り、にっこりと笑顔を浮かべた。
「じゃあ、ウチはそろそろ行くね。付き合ってくれてありがと♪」
「……まあ、その……スピリチュアルな力なら仕方ないんじゃないですか?」
「ふふっ、そやね。じゃあ、連絡先交換しとこっか?」
「話が繋がっていない気が……」
「君が傘を返そうと思った時に、いつでもウチがおるとは限らんやろ?」
「その時は神社の誰かに……」
「……嫌?」
「…………どうぞ」
実際断る理由もないので、俺は東條さんにスマホを渡した。
彼女はキョトンとしていたが、やがて俺の意図に気づいて苦笑した。
「君は警戒心が強いのか、そうでもないのか、ようわからんね」
「暇つぶし機能以外あまり使わないので、こういう時の使い方がよくわかってないだけです」
「さらっと悲しいこと言うね」
東條さんは軽やかな指さばきで連絡先を交換し、俺にスマホを返した。
「はい。後で連絡するから、登録お願い♪」
「……了解」
「それと……」
「は?」
東條さんの手が俺の頭に乗っけられる。
そのまま、ふわふわした優しい感触が俺の頭をよしよしと撫でた。ひんやりした感触が、まだ4月の頭なのに、やけに気持ちよかった。恥ずかしいけど。
「今日は付き合ってくれてありがと♪君は優しいね」
「いや、あの……すげえ恥ずかしいから止めて欲しいんですけど……」
「そんなに恥ずかしがることないやろ?この前もしたんやし」
「いや、そ、それとこれとは話が……」
道行く人の視線がグサグサ突き刺さり、HPがガリガリ削られていく感覚がする。特に男子の視線が痛い。
「何だよ、あいつ……あんな美人に……」
「羨ましいぜ、チクショウ」
「けぷこん、けぷこん……あ、あ、あれはもしや、八幡ではあるまいな……」
「ちっ、ボッチの癖に……」
「ザキ」
怨嗟の声が聞こえてきた気が……今、知り合いがいなかったか?あと誰だよ、ボッチって言ったのは。しかも最後に、誰か死の呪文を唱えて行きやがった。
とはいえ、東條さんの頭の撫で方は絶妙で、なんか疲れが取れるというか、中学時代なら…………いかん。また東條さんのペースだ。
俺はそっと彼女の手をどけた。その際に掴んだ手首の細さに、妙に胸が高鳴るのを感じながら。
「もう、照れ屋やなぁ~」
「い、いや、そっちが大らかと言いましゅか……」
「ふふっ、その噛みっぷりに免じて許してあげる♪ほな、行くね」
「…………」
彼女は意外なくらい颯爽と改札をくぐり、その背は見えなくなった。
「……帰るか」
一人で帰路につくと、頭やら肘やらに残っている彼女の感触が、やたらとむず痒かった。