「はい、もしもし」
「……おめでとうございます」
「ありがと。これも八幡君のおかげやね」
「いや、それは大げさでしょ。曲とパフォーマンスが良かっただけですよ。てか、これ言わせようとしてます?」
「バレたかぁ。でも、君がいてくれて助かったって心から思ってるよ。雪かきも頑張ってくれたし、しっかり声援もくれたし、手がかじかんで鍵を取り出せない時も合鍵を使ってさっと開けてくれたし、一晩中抱きしめてくれたし……」
「最後に嘘を混ぜてきましたね」
「あらら、ウチは別にいつでもいいのに」
「っ……い、いや、まだ、その……付き合い始めたばかりでそういうことをやるというのは……何と言いますか……」
「ん~?ウチはただ抱きしめてくれるだけでええんやけどな~。八幡君はまだ先のことがしたかったん?」
「…………」
「八幡君のエッチ♪」
「……したいです」
「え?」
「本音を言えば、その……めちゃくちゃしたいです」
「…………ええっ!?」
「次のデートの後、いいですか?」
「え?いや、ちょっ……」
「……何て言い出したらどうしますか?」
「…………あ~~!!八幡君、ひどい!ウチをからかうなんてひどい!」
「何すか、その特大ブーメラン。そういや、年末大丈夫そうですか?」
「うん。八幡君がキリキリ働く準備はちゃんとできてるよ。何なら巫女服も着る?」
「いや、それ誰得なんですか。参拝客ドン引きでしょ」
「そっかぁ。じゃあこのプランは次の機会に……」
「その機会は永遠に来ないと思いますが……」
「ふふっ、じゃあ明日は楽しみにしとくね」
「ええ。それじゃあ」
*******
通話を終えると、急に部屋が静かになった気がした。まあ、当たり前なんやけどね。
……はやく会いたいなあ。
あれ、どうしたんやろ。前まではこんな事なかったのに……。
ああ、ちょっとだけ脆くなったんかな。
「……八幡君、はやく会いたいなあ」
さっきと同じ呟きを今度は口にしてみると、より一層部屋の静けさが増した気がする。
「あらあら、もしかして彼氏と電話?」
「うん」
「へえ、希にもようやく恋人ができたのね。嬉しいわ」
「…………えっ?え~~~~~~~!?お母さん!?」
「そうよ。あなたのお母さん。びっくりした?びっくりした?」
「あ、当たり前やろ!いつからそこにおったん!?」
「『はい、もしもし』の辺りから」
「最初からやん!?」
この母親、相変わらず神出鬼没すぎる。スピリチュアルとかそういうのを通り越して、ただただおっかない。
お母さんは長い髪をかき分けながら、楽しそうにこちらを見ている。
「そっかぁ、希もそういうお年頃かぁ。よきかなよきかな」
「も、もうええやろ?それより何の用なん?」
「親が子供に会うのに理由がいるかしら?年末だから仕事の合間を縫って会いに来ただけよ。そしたら、まさかのビッグニュース。私ったら運がいい。スピリチュアルね。ちなみに明日は何時から来るの?」
「えっ?まさか、会う気なん?」
「まあまあ、悪いようにはしないから。ね?」
*******
普段なら年の暮れは、大掃除も程々にこたつでダラダラしているのだが、まさか秋葉原まで来る日が来ようとは……。
そして、最近彼女の住むマンションまでの道を歩いていると、自宅に帰る時のような安心感がするようになっている。
マンションに到着してから、彼女の部屋の前に行くまで、何度かポケットの中の合鍵を感触を確認した。
……いや、これはさすがに浮かれすぎだな。今日は呼び鈴を押すだけにしとくか。
そう決めて、ゆっくり呼び鈴を押すと、すぐにドアが開いた。
「いらっしゃい、八幡君。待ってたよ♪」
「ど、どうも……」
何故かさっそく違和感。
……何だ?何かおかしい気がする?
確かに同年代の中じゃ飛び抜けて色っぽい人だが、ここまで色っぽかったっけ?顔は変わってないみたいだけど……。
他におかしいところは…………あれ?胸でかくなってね?