捻くれた少年と寂しがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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FUTARI #2

「……えーと」

「どうかしたん?」

「いや、その……なんか雰囲気変わりました?」

「そう?成長期やからやない?」

 

 そう言いながら、希さん(?)は自分の胸をわしわしした。

 ……べ、別につい目が吸い寄せられてなんかない。ていうか、今そうなったらやばいと本能が告げている。

 

「なんやなんや、これくらいで照れちゃってもう♪八幡君は可愛いなぁ」

「ぅぷっ!?」

 

 いきなり顔面を胸に押しつけられ、その柔らかさのせいか呼吸困難になる。

 やばいよやばいよやばいよ!普段なら心の中でガッツポーズくらいするのだが、これはやばい気がする。何がやばいって、よく理由もわからないのにやばいとハッキリ思える部分がやばい!

 しかも、気のせいだろうか……どこからか殺気じみたものを感じてしまう。スピリチュアルやね。もう何が何だかわからん。

 

「ん~、そのリアクション……本当に可愛いなぁ」

「え?え?」

 

 希さん(?)が至近距離で、こちらの顔を覗き込んでくる。

 あれ?いや、間違いない!この人は……!

 

「ストーップ!!」

 

 すると、希さん(?)がハリセンで誰かに頭を叩かれる。

 

「いったぁ~い!ちょっと何すんのよ、希~!」

「うるっさい!私の恋人に何しようとしてんの、お母さん!?」

「……やっぱりか」

「え?気づいてたの?」

「まあ、その……途中から雰囲気似てるけど、別人かなと……」

 

 本当はお姉さんだと思っていたのだが、今言うと面倒そうなのでやめておこう。

 希さんのお母さんは、ハリセンの痛みから立ち直ったのか、再度俺の顔を覗き込んできた。ふわりと漂う大人の香りに、何ともいえない気分になっていると、希さんがジトーっとこちらを見ていた。そりゃもう効果音がしそうなくらいに。

 

「ふむふむ、ふむふむ。しかし意外ね。まさか年下と付き合い始めるなんて……ほら、あの子ってああ見えて寂しがりで甘えんぼじゃない?」

「もうっ、余計なこと言わないの!」

 

 再びハリセンでツッコミを入れようとする希さん。

 しかし、その一撃は不敵な笑みと共に、あっさり受け止められた。

 

「甘い。その攻撃はもう見きったわ」

「くっ……!」

「…………」

 

 おーい。もしもーし。来客が置いてきぼりになってるよー。

 とはいえ、このままでは陽が暮れそうな気がしたので、俺は二人の間に割ってはいった。

 

「希さん、今日はバイトもあるので……」

「あ、そうやったね。ていうかごめん。玄関で……じゃあお母さん、続きは後で」

「しょうがないわね。じゃあ、今から用意して出かけるわよ」

「「え?」」

「神社のバイトは夜からでしょ。それまで積もる話でもするわよ」

「もう、強引なんやから。八幡君、大丈夫?」

「俺は大丈夫ですけど、いいんですか?親子水入らずの時間を……」

「もちろん♪君にはたっぷり話を聞かせてもらわなきゃだからね。あ、私の名前は東條いのり。いのりって呼んでもいいわよ」

 

 そう言って、希さんのお母さんはがっしりと腕を組んできた。

 すると、ぎっしりと柔らかな何かが詰まったような感触のものが、肘の辺りに押しつけられる。こ、こういう時は念仏を……宇宙天地與我力量降伏群馬迎来曙光……

 

「あーもうっ!そこはウチのポジション!」

「じゃあ逆で……」

「そっちもダメ!」

「…………」

 

 左右からもう色々とやばい。やばすぎてやばい。

 もう年の暮れだというのに、さらに騒がしくなるとは……。

 どうやら今年は最後まで楽しすぎる一年になるらしい。

 既に確定していた。

 

 

 

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