正月が過ぎて、冬休みもそろそろ終わろうかという頃、早朝のジョギングから戻ると、まさかの来客がいた。
「やっほ~♪」
「……え?」
希さんが我が家の前でひらひらと手を振っている。
あれ、おかしいな?あと5キロくらいなら余裕で走れそうなんだが……。
少し速度を上げて駆け寄ると、彼女はタオルを手渡してくれた。
「ど、どうも……」
「来ちゃった」
「いや、マジでびっくりしました……」
「ふふっ、君の家族にも新年の挨拶しときたいからね」
「そっすか。じゃあ、その……上がってください」
「うん、お邪魔します」
*******
「あら、希ちゃん。いらっしゃい」
「希さん、明けましておめでとうございま~す!」
「…………」
希さんが入ると、まだ休日の朝だというのに、母ちゃん達は賑やかに希さんを迎えた。
「明けましておめでとうございます。こんな朝早くにすいません」
「いいのよ。希ちゃんはもう家族も同然だから」
「そうですよ~」
二人が歓迎している姿は、息子の彼女と仲が良い素敵な家族感が出ているが、半分くらいは『こいつはここを逃したら今後彼女ができることない』みたいな気持ちが籠っていそうだ。いや、さすがに疑いすぎか。
小町は希さんに抱きつき、その豊満な胸元に顔を埋めていた。おい、うらやましいからやめろ。俺だってまだやってもらったことねえんだよ。
「よしよし、相変わらず小町ちゃんは可愛いね」
「むぅ……この感触を脳裏に焼き付け、是非トレースせねば」
「ちょ、次、私にやらせて」
母ちゃん、何やってんだよ。そんな目をキラキラさせてんの初めて見たんだけど……。
ちなみに親父は、気まずくなったのかリビングのソファーで寝転がり、もう一眠りしようとしていた。まあ、親父が小町達と同じノリになったら、スピリチュアルな力で消し去るけどね!まあ、そんな心配はないだろうけど。とにかく親父はそこで寝て日頃の疲れでも癒してろよ。
「とりあえず、俺はシャワー浴びてくるわ」
*******
身支度を整え、自分の部屋まで行くと、希さんは俺のベッドで眠っていた。
「すぅ……」
「…………」
マジか。いや、別にいいんだけど。可愛いし。あと可愛い。
静かな部屋には、彼女の寝息だけ響いている。
「すぅ……」
「…………」
する必要はないのだが、一応周りに人がいないかを確認してから、至近距離で寝顔を覗き込む。
……あ、やば。可愛い。語彙力崩壊するくらいに。
この時俺は何を考えていたのだろうか。
自然と手が動き、指で彼女の唇を撫でていた。
やわらかな感触が指に吸いつき、いつまでもこうしていたくなる。
止め時がわからなくなり、もうこのまましばらくこうしてようかと思った瞬間、はむっと指をくわえられた。
いつ目を覚ましたのか、最初から寝たふりだったのかはわからないが、得意気な笑みを見せていた。
一体自分の指はどうなってしまうのかと成り行きを見守っていると、指先をチロリと舐められただけで、すぐに解放された。
「眠っている女の子にイタズラしようとするなんて、さすが八幡君やね」
「いや、さすがって……寝たふりしてたんですか?」
「ううん。寝てたよ。でも、唇にいやらしい気配を感じたんよ」
「…………すいません」
「ええよ~。君ならいくらでも。でも……指だけなん?」
「……いや、無理っすね」
寝転がったままの彼女の唇に、強引に自分のを押しつける。
小町のノックで中断されるまで、それは続いた。