「えっ?ラブライブの決勝の会場が幕張に?」
「うん、そうなんよ」
夜に希さんから突然の報告。
確か幕張には国内でもかなり有名なイベント会場があるはずだが、まさかラブライブの会場として使われることになるとは……。
もしかしたらμ'sの知名度は俺が思ってるよりはるかに高いのかもしれない。
「まあ、何つーか……かなり観に行きやすくなりましたね」
「そうそう。それともう一つ面白そうな情報があるんやけど」
「?」
「実は……ボランティアを募集する予定らしいんよ」
「……ほう。社畜の練習ですか。ステージで夢を見せてる裏で社会の現実を教えるとか、かなり充実したイベントになりそうですね」
「うんうん。その感じいいよ。八幡君してる」
「八幡君してるって……いや、言いたいことはわかるんですけどね」
「まあ、君の都合さえよければ考えてみてよ」
「了解しました。前向きに検討しときます」
「おお、本当は即答したいけど、あえて返事を遅らせるという八幡君らしい捻デレやね」
「…………」
恥ずかしいから、思っててもそういうことは言わないでね……。
「と、とりあえず……本番楽しみにしてますので」
「うん。それじゃあ、またね」
「はい。それじゃあ」
*******
「せんぱぁ~い、幕張でボランティアってどういうことですか~」
「……社畜の練習だよ」
「は?どういう意味ですか?」
「そのまんまの意味だよ」
「はあ……って、そういう意味じゃなくて!どうしてあの先輩が自分から幕張のイベントのボランティアをするって言い出したんですか?しかも生徒会まで巻き込んで」
「…………」
「あ、黙った。って、何寝たふりしてるんですかー?」
「あはは……まあ、でもいいじゃん?イベントって、楽しそうだし」
「それもそうね。この男の私利私欲の為に動くのは少し納得いかないけれど」
「私利私欲?それどういう意味ですか?」
「深い意味はないわ」
「はあ……まあ、雪ノ下先輩も納得してるならいいですけど」
「ふふっ、ヒッキーがあんなに前向きに行動するなんて滅多にないもんね。私達も背中押さなきゃ!」
「…………」
なんか照れくさいので、心の中で礼を言うことにした。
……後でマッ缶買ってくるか、4人分。
*******
それから、他に有志のボランティアを募ったり、希さんと毎日連絡を取り合ったり、志望大学を考えたりしているうちに、あっという間に日々は過ぎた。
そして本番二日前……。
「……しかし、見事に見知った顔ばかりだな」
校内でボランティアを募集したところ、テニス部や葉山グループなど、見覚えのある奴らばかりが集まっていた。
「あはは、いいじゃん。緊張しなくて」
「そうね。何かと使いやすいわ」
「私、そういう意味で言ってないよ!?」
「わあ、やっぱり可愛い子多いですね~。せんぱぁい、どの子がタイプですか?」
「はいはい、会場から追い出されたら困るから黙ってようね」
「八幡、μ'sの人達まだいないみたいだね」
「今控え室にいるみたいだぞ」
「けぷこん、けぷこん……」
「材木座、無理して喋ろうとしなくていいぞ。てか、よく来てくれたな……」
「は、八幡……べ、別にあんたのためじゃないんだからね!」
「……本当に喋るな、お前自身のために」
メダパニでもかけられたかのようなテンションの材木座から距離をとると、誰かが目を丸くしてこちらを見ているのに気づいた。
「あれ、比企谷?」
「…………折本?」
「うっそ、まじで比企谷じゃん、総武高校行ったんだ~!」
「あ、ああ、まあな……」
まさかこのタイミングで過去に告白した女子に再会するとは……。
さらに、向こうが俺の事を覚えているとは……。
どうしたものかと思い、首筋に手を当てると、折本は数秒首を傾げてから、何故か一人で頷いた。
「比企谷、なんか変わったね。ウケる」
「いや、ウケねえから」
「あははっ、じゃあ今日はお互い頑張ろーね!」
「……おう」
変わった、か。
そんな些細な一言に充実感みたいなものを感じてしまうあたり、確かに変わったのだろう。
まあそれでも過去の失恋なんていちいち思い出したくないけどな!絶対に気のせいだろうけど、ほんの少し背筋に悪寒がしたし!
*******
「あら、希どうしたの?なんか怖い笑みを浮かべて……」
「何でもないよ~♪」
「あ、はい」