本番当日。
俺達はボランティア参加者に用意された席で、ステージを見つめていた。
そんな中、右隣にいる由比ヶ浜はやたらそわそわしている。
「わぁ、なんかこっちが緊張しちゃうなぁ」
「……まあ気持ちはわからんでもない」
さすがに全国大会決勝ともなると、雰囲気が別物である。いや、何で俺が緊張してんだよと思いながらも、これはどうしようもない。開演してくれたらこれも紛れるかもしれんが。
すると、何度かライブで見かけたことのある眼鏡をかけた賑やかなお姉さんが出てきた。
「さあ、会場にお集まり皆さん、盛り上がる準備はできてますかー!?」
その言葉と突き上げた拳に、一気に会場内の空気がヒートアップしていく。
さっきまでの緊張感はどこへやら、由比ヶ浜も盛り上がっていた。さすがリア充。
左隣にいる戸塚もぱちぱちと拍手している。可愛い。
そこからはまるでスイッチが入ったかのように物事が進んでいった。
一組目のグループから会場は派手な盛り上がりを見せ、歌声や声援や演出が混ざりあい、夢の世界にいるような気分になった。
しばらく見届けていると、パフォーマンスの合間に戸塚が肩をつついてきた。
「八幡、μ'sは何番目だっけ?」
「あー……次の次だ」
プログラムを確認しながら、ちょっと驚いてしまう。もうここまで来たのか。
その事に気づくと身体がうずうずしてきた。
「うわあ……あっという間だ」
「そうね。意外と魅入ってしまうものね」
「八幡、いよいよだよ」
「……あ、ああ」
「は、八幡よ……こういう雰囲気、我は苦手なのだが」
「…………おお、珍しく気が合うな」
「……」
そして、また一組パフォーマンスを終え、会場内が拍手の音で満たされる。
いよいよだ。
司会が待ちわびたその名前を呼んだ。
「さあ、続いては音ノ木坂学院からμ'sでーす!!!」
名前が呼ばれるとスポットライトがステージにいる彼女達を照らし出した。
すぐに希さんがどこにいるかはわかった。
その姿に胸が高鳴り、さっきまでの不安みたいなものが吹き飛ぶ。
そして高坂さんが「よろしくお願いします」と言い、全員が頭を下げると、束の間の静寂が訪れた。
数秒してから穏やかなイントロが始まり、色んな音が重なってから、壮大なものに変化していく。
熱い歌声が、熱のこもったダンスが、会場内を包み込んでいくのがわかった。
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奇跡のような時間が終わった後、スクリーンに映し出された彼女達はやりきった笑顔を見せていた。
「「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」
次の瞬間、割れんばかりの歓声があがる。
周りがμ'sファンだからかもしれないが、これまでで一番大きく聞こえた。
俺は豆粒程度の希さんに視線を集中させた。
すると、それは多分ただの偶然だろうが、彼女がはっきりとこちらを見た気がした。
星空の中のようなきらびやかな空間で、一瞬だけ二人きりになった気がした。
一つだけ確かなこと。
この光景を一生忘れない。
それだけを自分の中に誓い、俺は彼女達を讃えた。